STEAM教育に力を入れている全国の私立小学校3選!
わが子の“面白い”“知りたい”の「ワクワク」を引き出す教育移住
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子どもにとってより良い教育環境を求め、家族で住む場所を変える「教育移住」。地域や学校により、どのような先進的な教育に力を入れているかはそれぞれ異なります。
今回は、前回教育移住の記事で取り上げた「ICT教育」にも関連がある、「STEAM教育」がテーマです。STEAM教育は科学、技術、工学、モノづくり、芸術、リベラルアーツを横断的に学ぶ、世界で注目を集める教育法です。
この記事ではSTEAM教育の特徴や取り入れるメリット、全国で「STEAM教育」を実施している私立小学校をご紹介します。
STEAM教育とは
「STEAM」とは科学・技術・工学・芸術・数学の5つの英単語の頭文字を組み合わせた造語です。
科学(Science)、技術(Technology)、工学・もの作り(Engineering)、芸術・リベラルアーツ(Arts)、数学(Mathematics)の5つの領域を対象とした「理数教育に創造性教育を加えた分野横断的な学び」を指し、世界的に注目を浴びています。
STEAM教育は従来の知識を教わる”受動的学び(インストラクション型)”ではなく、自ら考え実践し構築する”能動的な学び(コンストラクション型)”を促しています。
STEAM教育では、“面白い”“知りたい”といった子どものワクワク感を学びの原動力としています。子どもは自分の関心のある事柄に対し問いを立て、解決策を考えます。STEAM教育は、分野横断的な学びを通じて、問題解決能力や創造性を育む教育法なのです。
小学校がSTEAM教育に力を入れる背景
少子高齢化で労働人口が減少する日本では、テクノロジーなしに生き延びることが難しくなってきています。現代の子どもたちには、自ら問いを立て、科学技術を駆使して課題を解決する能力が求められるようになるでしょう。
さらにはAIの普及などにより、現在の仕事の半分は20年後に消滅するといわれています。予測不能な時代を生き抜くには、柔軟な発想で変化を乗り切るスキルが不可欠です。
テクノロジーのリテラシーを身に着けるだけでなく、STEAM教育の学びにより自ら考え、行動する力が求められていくといわれています。
STEAM教育に力を入れている全国の私立小学校
続いて、STEAM教育に力を入れている私立小学校をご紹介します。
茨城県水戸市
KOOV(SONYGlobalEducation)プログラミング教育導入実証校。「KOOV」はカラフルなブロックで自由なかたちをつくって動きを与えるキットとアプリで創造力とプログラミング的思考力を育む、SONYのプログラミング学習サービスです。
1年生から6年生までしっかりとプログラミングを学習。コンピュータ室の40台のデスクトップパソコンに加え、最新型iPadを導入しました。iPadは1人1台使え、プログラミングはもちろん、アプリケーションを使った学びが可能です。
また、「算数」「理科」の授業時数を重点的に配置し、自然や科学に親しむ心を育成するとともに、専門性の高い授業を展開しています。「問題解決型」の授業を通して、「論理的思考力」「発想力」を養成します。
3〜6年生は週1回SDGsの授業を実施。SDGsを課題解決型学習の柱としていちはやく取り入れ、子どもたちが解決目標をもって取り組むようにしています。
長野県松本市
才教学園小学校
多数の企業・団体・個人と協働することで、独自のSTEAM教育を展開。教科の枠を超えて従来の学びのあり方を問い直します。これまで独立していた学問分野を結びつけることで、より豊かな想像力を養い、創造的な方法により問題解決を図ります。
座学による知識の習得にとどまらず、習得した知識を実体験と結びつけることで学びを深めます。知識の習得と実体験が、互いに良い影響を及ぼし合う学びの場を作っていきます。
地域社会や企業と交流を持つことで、より開かれた学びの場を作っています。近しい人だけではなく、新たに出会う他者と協働することで、思考・判断・表現を深める対話力を身につけます。
プレゼンテーションによる解決策の提示、具体的な物や作品の制作、地域貢献活動、啓蒙活動など学校内外で多くの表現活動を行い、子どもたちのアウトプットする力を育みます。
京都府京都市
探究的な見方・考え方を働かせ、横断的・総合的な学習を行うことを通して、よりよく課題を解決し、自己の生き方を考えていくための資質・能力を育成することを目指しています。
計画性やチームワークのほか、ICTデバイスやプログラミングを活用するスキルをSTEAM教育で育みます。
学年ごとのミッションに1年間をかけて挑み、学年の終わりにみんなの前で集大成を発表する、探究型授業を実施。
ICT・プログラミングのスキルや課題解決の手法だけでなく、リーダーシップや協働性といった非認知能力も伸ばします。
私立小学校がSTEAM教育に取り組む理由とメリット
全国の私立小学校がSTEAM教育に取り組む背景として、経済産業省が教育開殻の一環として提言する「学びのSTEAM化」があげられます。
学びのSTEAM化は“ワクワク感をベースにした探究型の学び”を目指しており、全国の学校や教育サービス業の関係者と「未来の教室」実証事業を進めています。
これまでは知識のインプットに重点をおく学習でした。しかし自分の知識が社会でどう役に立つのかが分からなければ興味はわかず、大人になってから能動的に考えることがうまくできません。
このため、STEAM教育では「インプット=知る」と「アウトプット=創る」を循環させて学びます。
好奇心(ワクワク)を推進力に課題を見つけて学び、学んだ知識が現実にどう生きるかを実感することで学ぶ意欲が沸き上がるのです。STEAM教育で取り扱う問題に正答はありません。このため、ひとりで正解を探すのではなく、さまざまな価値観の人と触れあい、意見を出し合いながら答えを探すプロセスを重視します。
STEAM教育の課題と今後の展望
このようにSTEAM教育には素晴らしい可能性がありますが、導入されて間もないため、課題も残っているのが事実。
1つめは、ICT活用の遅れです。残念ですが、日本のICT教育は他国と比べ後れを取っています。ICT活用にはタブレットやスマートフォンなどの端末や、安定した高速通信を実現できるインターネット環境が必要です。
2つめは、理数に対する生徒の苦手意識です。日本の小中学生は、国際平均と比べ理数に対する苦手意識が高い傾向にあります。STEAM教育は数学・化学・技術・工学など理数に関するものが多いため、理数教育に対する子どもの苦手意識の克服が必要とされています。
3つめは、指導できる教員の不足です。STEAM教育を横断して教えるには高いスキルが要求されますが、歴史の浅いこの分野に長けている教員は多くありません。多忙な教員がさらに新しいスキルを求められているのが現状のため、教員のトレーニングやサポートが急務といえます。
今後は、さまざまな課題に取り組みながら、より充実したSTEAM教育を実現していくことが求められます。
STEAM教育は科目に限らず、課外旅行や部活動でも活用できます。今後はデジタル化によって捻出された時間を情報収集や分析ツール活用に使い、さまざまなプロジェクト型学習を推進することが望まれます。
また、STEAM教育は産業界との連携も進められています。企業と学校が連携し、実際の現場での活動やプロジェクトを通じて学ぶことで、将来の職業についての理解や実践的なスキルを身につけることができるようになります。
政府が「GIGAスクール構想」で、学校のICT環境整備と児童生徒ひとり1台端末を定めたことにより、ICTの活用も今後ますます進むでしょう。オンライン学習やデジタルツールの活用により、より効果的な学びが可能となります。
少しずつではありますが、着実にSTEAM教育は全国に広がりつつあります。
私立小学校だけでなく、「県をあげて」STEAM教育に取り組む姿勢を出している自治体もあり、近年、STEAM教育を取り入れている公立小学校も全国的に増えています。自治体が主催となったSTEAM教育をテーマにしたイベントやコンテストも増えています。
教育移住には、さまざまな目的がありますが、もし、今とは違う環境でわが子の可能性を伸ばしたい、とお考えの方がいらしたら、STEAMを実施している学校への教育移住を検討してみるのも、一つの選択肢かもしれません。