地域おこし協力隊の応募動機について教えて下さい。

現在、私は大学院生であり、修士論文の研究のために佐渡島の潟上集落へ移住しようと考えていました。専門は文化人類学で、調査には年単位の時間が必要だからです。

ちょうどその時期に潟上集落で協力隊の募集が行われていることを知りました。ただ研究をさせてもらうだけでなく、地域に貢献しながら生活できる点に魅力を感じ、応募を決めました。

さらに、協力隊受け入れのために地域の方々が古民家を確保してくださっており、住まいの面でも大変ありがたく感じました。

佐渡市を選んだ理由について教えて下さい。

佐渡島に出会った最初のきっかけは、大学院でのフィールドワークでした。必修科目の一環だったため、当初は自ら希望して訪れたわけではありません。

しかし、地域の方々が主体となって古民家を改装し「子ども未来舎りぜむ（以下、りぜむ）」という場を立ち上げたり、その辺の竹を伐って大型遊具を手づくりしたりする姿に、強い魅力を感じました。

少子高齢化による過疎化が進む中でも、住民同士が協力し合い、行政主導ではなく自ら未来に向き合っているのはなぜなのか――。その理由を知りたいと思い、移住を決意しました。

地域おこし協力隊の仕事内容について教えて下さい。

私の主な活動は、「集落内の高齢者も安心して暮らせる集落づくり」です。
そのため、一人暮らしの方のお宅を訪問し、生活の様子を伺ったり、会話を通じた認知症予防の取り組みを行ったりしています。

また、「りぜむ」は多世代交流拠点として立ち上がった場ですが、現状では子どもたちの利用が中心となっています。
そこで、より地域に開かれた場となるよう、子どもたちと一緒に地域のお宅を回ってパンを販売する取り組みも行っています。

季節の移ろいに合わせて、活動内容も変化します。
春夏には草刈りをしたり、「鬼太鼓」という祭りに参加して太鼓を叩いたり、ホタルの数を数えて記録したりと、季節を感じながら働けるのが新鮮でとても楽しいです。

さらに、月に一度、地域新聞を発行しています。
「地域おこし協力隊って、実際何をしているの？」と聞かれることが多いため、毎月の活動を集落の皆さんにお手紙のような気持ちでお伝えしています。

4月に着任してすぐ、「ご挨拶」をテーマに第一号を発行したところ、「あの新聞を発行している人ね！」と声をかけていただく機会が増え、早く住民の皆さんと打ち解けることができました。発行してよかったと心から思っています。

地域おこし協力隊のやりがいはなんですか？

地域の方々の「やってみたい」という思いを実現できたときに、大きなやりがいを感じます。
例えば、かつて保育士をされていたあるおばあさんのお宅を訪問した際、「いつかりぜむに行ってみたい」とおっしゃっていました。けれども現在は一人暮らしで車の免許もなく、移動手段がないとのことでした。
そこで「私が送迎しますので、一緒に行ってみませんか？」とお誘いし、一緒にりぜむを訪れることにしました。

おばあさんは、集落で大勢の子どもたちが元気に遊んでいる姿や、数年ぶりに再会した地域の人たちとの交流をとても喜ばれ、目元にはうっすらと涙を浮かべていました。帰り際には「本当に今日はありがとうね」と声をかけていただき、地域おこし協力隊という仕事の素晴らしさを改めて実感しました。

また、りぜむと地域の高齢者との接点を増やせたり、草刈りの最中に「がんばってるね」と声をかけていただけたりと、日々の小さな出来事の中でも少しずつやりがいを感じています。

地域おこし協力隊になって想定外だったことを教えて下さい。

この仕事の魅力は、自分の裁量次第でいかようにもできる、その自由度の高さにあると思います。
基本的に、地域から依頼される草刈りなどの仕事以外は、自分の判断で取り組みを決め、時間を管理しなければなりません。

最初のうちは要領がつかめず、無理を重ねて体調を崩してしまったこともありました。自由度の高さに甘えすぎず、かといって無理もしすぎない、そのバランスを取るのは今でも難しいと感じています。

もうひとつ想定外だったのは、体力が必要なことです。佐渡島に移住する前は東京で学生をしており、まったくの運動不足でした。子どもたちと遊ぶのも、草刈りをするのも、長時間の聞き取り調査をするのも、すべて体力を使います。

また、人と接する活動が多く、パソコンに向き合うような事務作業がほとんどないのも意外でした。結果的に、仕事をしながら自然に体を動かしているような感覚で、都内で生活していた頃よりも健康的に過ごせていると思います。

卒隊後のビジョンがある場合は教えて下さい。

将来はカフェをやってみたいなと思っています。佐渡島は自然が豊かで、これまで知らなかった食材との出会いがたくさんあります。いつか佐渡の恵みを使って、さまざまな飲み物をつくってみたいとワクワクしています。

一方で、大学院で専攻している文化人類学も大好きです。カフェを営みながら、アカデミアの外でも人類学を続けられたらと思っています。肩書きは「野生の人類学者」と名乗りたいですね。自分がこれからつくる（かもしれない）カフェをフィールドに、地域に与える影響を研究したり、佐渡島の習俗を調査・発表したりすることを想像しています。

カフェのオーナーも、野生の人類学者も、どちらも私の夢です。その両方を叶えられるように、今から少しずつ動き始めています。まもなく、集落でパンづくりが趣味の方と一緒に、ベーカリー＆カフェを間借りで開く予定です。まだコーヒーを淹れる腕前は半人前ですが、夢に向かって少しずつ経験を積んでいきたいと思っています。

佐渡市の住民と触れ合った際の印象と、エピソードも添えて教えて下さい。

地域の方々は優しく、常に気にかけてくださる方が多いです。
例えば、集落の祭りである鬼太鼓は、つい最近まで男性しか参加が認められていませんでした。女性で、しかもよそから来たばかりの自分が本当に練習に参加していいのか、正直気後れしていました。けれども、道場に行くといつも誰かが太鼓を教えてくださり、とてもありがたかったです。

また、集落の方々の行動力にも驚かされます。毎年6月に開催される「ほたる祭り」では、30～40人ほどの住民がボランティアで準備と運営を担っています。多くが70代以上ですが、私よりも体力があり、トランシーバーで連絡を取り合いながら次々と来る車を交通整理する姿は本当に圧巻でした。しかも集落の中心となっているのは80代の方々で、「70代はまだ若者」と言われているほどです。

実際に生活してみて少し意外だったのは、プライベートが適度に確保されていることです。程よい距離感の中で、人のあたたかさを感じながら快適に暮らすことができています。

佐渡市の魅力について教えて下さい。（自然やグルメ、オススメスポットなど）

晴れた夜には星空がとても綺麗で、夏には天の川を肉眼で眺めることができます。
昼間には、海の澄んだ青のグラデーションが広がり、思わず見とれてしまいます。先日海で泳いでいたとき、浅瀬の岩場にタコを見つけ、人生で初めて墨を吐かれるという体験もしました。

また、離島でありながら稲作が盛んなため、平野一面に広がる稲穂の水平線も見事です。その上をトキがすっと飛んでいく光景は、佐渡島ならではの日常の絶景だと思います。
道端にはお茶にできる野草が生えていたり、野イチゴがたわわに実っていたりと、本当に自然に恵まれています。

移住を検討している方にメッセージをお願いします。

移住前は、不安が尽きないものだと思います。
環境に適応できるだろうか、人付き合いはうまくやっていけるだろうか、仕事は大丈夫だろうか――私自身もそうでした。

実際に移住してみると、驚くことは数多くあり、心身ともに「適応した」と言えるまでには少し時間がかかりました。それでも、振り返れば移住してよかったと思っています。

縁あるタイミングというのは、どこからか吹く風のように、自分でコントロールできるものではないように思います。けれども、今こうして心惹かれる土地と出会えたのも、ひとつのご縁。風にのるような気持ちで身を任せてみるのも良いのではないでしょうか。

一番大変なのは、風にのるその瞬間――離陸前後です。でも、飛んでしまえばあとはどうにかなるもの。どこに行っても、必ず誰かが待っていてくれるはずです。

不安なことは安心できるように準備しつつ、同時に「ワクワクする気持ち」をどうか大切にしてほしいと思います。

地域おこし協力隊の詳細についてはコチラ↓
https://warp.city/features/2

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