地域おこし協力隊になる方法。メリット・デメリットを解説!

地域おこし協力隊になる方法。メリット・デメリットを解説!

地方移住の方法の1つとして活用できる「地域おこし協力隊制度」。 具体的な仕事内容や応募方法について解説します。

地域おこし協力隊は、移住先で一定の収入を得ながら、地域協力活動を通じて隊員の定住・定着を図る取り組みです。
地域おこし協力隊に興味がある方向けに、メリット・デメリット、仕事内容などを解説していきます。

任期は最大3年間!地域おこし協力隊とは?

地域おこし協力隊は、都市地域から地方自治体に移住して、地域の魅力のPRや地場産品の開発、農林水産業への従事、地域住民の支援など、その地域に必要な地域協力活動を通じて地域への定住・定着を図る、総務省の取り組みです。

都市地域から、人口減少や過疎高齢化が進む地方部への人の流れを作る趣旨で創設された制度であり、各地方自治体が地域おこし協力隊を任命します。

地域おこし協力隊の任期は1年以上、3年以内で運用されており、令和3年度の隊員数は6,015名、受け入れ自治体数は1,085団体に上ります。

働き方や暮らし方が多様になる現代において、地方で新しいことに挑戦したり、理想とする暮らしを実現したりする手段として注目されています。

 

地域おこし協力隊になる3つのメリット

これから地方で新しい暮らしや挑戦をしてみたいと考えている方の中には、移住後の経済的な不安や、田舎特有の人間関係が心配という人もいるのではないでしょうか。

地域おこし協力隊を活用した移住では、こうした不安が取り除けるようなメリットがありますので、紹介していきます。

  • 収入がある状態で移住できる

    地域おこし協力隊を活用した移住であれば、収入がある状態で移住できます。
    地域おこし協力隊は自治体の運用によって金額は異なりますが、給料や報酬に値する報償費として、最大280万円が用意されています。

    最大3年間の任期中は安定的な収入があるため、農業・漁業などの職業経験を積む期間や、地域資源を活用した商品開発を行うための期間などに活用できます。

    地域おこし協力隊を活用した移住であれば、最大3年間収入を得ながら新しい挑戦に踏み出せることから、移住後に起業を考えている方にはオススメです。

  • 地域の人脈が広がりやすくなる

    移住後に地域の人との人脈を広げやすいのが地域おこし協力隊のメリット
    です。地域おこし協力隊は、業務をサポートしてくれる行政職員や、地域内に人脈がある方からの紹介を通じて、さまざまなコミュニティに触れる機会があるでしょう。

    例えば、
    ・行政職員から地域イベントの担当者を紹介してもらい、一緒にイベントの準備をしたこときっかけに、イベント実行委員のメンバーや出店者とつながりができた
    ・地域おこし協力隊で主催したイベントに興味を持ってくれた方の紹介で、観光協会の担当者とつながれた。

    このように、地域おこし協力隊だからこそ巡り合うチャンスがあります。そういった場面を逃さず、自分から積極的にアプローチしていくことで、地域おこし協力隊でなければ出会えない人とのつながりを持てます。

  • 将来的な起業支援が手厚い

    地域おこし協力隊は任期が最大3年と定められていることもあり、任期終了後に向けた起業支援が手厚いです。
    地域おこし協力隊の募集の中には、地域協力活動をしながら最終的に起業を目指す「起業型地域おこし協力隊」があります。

    起業型地域おこし協力隊では、任期中からその地域での起業に必要な経費(資格の取得や研修の受講)を、活動経費から支出できます。

    また、地域おこし協力隊の任期終了日の1年前から翌年の起業に対しては、起業に関する経費として上限100万円まで利用できる支援があります。具体的には、下記のものが対象になっています。

    ・設備費、備品費、土地・建物賃借費法人登記に要する経費
    ・知的財産登録に要する経費
    ・マーケティングに要する経費
    ・技術指導受け入れに要する経費

    ただし、実際に支援金を利用する際には自治体ごとに申請内容を精査することになるため、補助金申請したものが必ずしも全て認められるわけではありません。

    起業支援補助金のほか、日本政策金融公庫での融資制度にも優遇があります。日本政策金融公庫では、移住創業者向けの融資制度の1つに「地域おこし協力隊」の任期を終了して、活動した地域で創業する方向けに特別利率が設けられています。

地域おこし協力隊のデメリット

たくさんのメリットがある一方で、地域おこし協力隊を目指す上で理解しておかなければならないデメリットもあります。

  • 自治体によって制度運用にムラがある

    地域おこし協力隊は、各地方自治体によって制度運用の仕方にムラがあります。そのため、想定していたよりも協力が得られないことや、活動経費がうまく使えない場合があります。

    原因の背景には、自治体側に蓄積している「地域おこし協力隊制度の運用ノウハウ」の有無があげられるでしょう。地域おこし協力隊の運用が長い自治体と、初めて採用して取り組む自治体では、地域おこし協力隊運用のノウハウに差が出ます。

    地域おこし協力隊の運用歴が長い自治体では、これまで地域おこし協力隊業務を通じて関わってきた地域住民や民間企業・その他団体から、活動に対して理解が得られていたり、担当者同士の人脈ができたりしています。
    そのため、着任した協力隊員はその関係性や人脈を活用して活動に入れるため、比較的活動がしやすいと言えるでしょう。

    一方、自治体内に地域おこし協力隊運用の実績や地域からの理解、運用担当者の人脈がない場合には、着任した地域おこし協力隊員が、関係性や人脈を一から築いていく必要があります。地域おこし協力隊の制度運用には、自治体によってムラがあることを理解の上、情報収集をしていくとよいでしょう。

  • 任期終了後の進路が決まっていない

    地域おこし協力隊の任期は最大3年間と定められているため、任期終了後の進路は自分で確保しなければなりません。
    活動中は自治体や関係する団体からの支援が得られやすい一方で、任期終了後を見据えて計画的に準備を進める必要があります。

    活動中には、各自治体や総務省などが主催をしている研修が定期的に開催されています。地域おこし協力隊期間中の時間の使い方や地域との付き合い方を学ぶ「初任者向けの研修」や、地方圏での起業に必要なマーケティング力の向上、事業計画書づくりに向けた「事業化研修」など、さまざまな研修があります。


    こうした研修に参加をしながら、任期終了後の進路を検討していくとよいでしょう。

地域おこし協力隊の仕事内容

全国各地で活動している地域おこし協力隊。その仕事内容は地域によってさまざま。農林水産業、観光や宿泊業、移住定住推進など、活動の幅が広いです。

  • 観光関連のお仕事
    青森県の西目屋村でカヌー・ラフティングツアー会社を営む木立さんは、地域おこし協力隊に着任後、観光を担っている部署に配属されました。村の行事やお祭りなどのイベントに参加したり、観光協会の業務をしたりしながら地域理解を深めたそうです。

  • 農業関連のお仕事
    山形県河北町でラ・フランス農家として活動している中村さんは、地域おこし協力隊を活用して新規就農しました。地域おこし協力隊期間中は、新規就農者への情報発信や農業研修の企画調整などの仕事をされていたそうです。

  • 小売業関連のお仕事
    千葉県から宮崎県小林市に移住して地域商社を営む青野さん。地域おこし協力隊期間中は、農家や飲食店と交渉してイベントを開催し、月1回開催のマルシェの運用を行いました。

上記のように、地域おこし協力隊は各自治体のさまざまな分野で活動しています。また、活動状況やめぐり合わせによっては、任期中に仕事の方向性が変わる場合もあるでしょう。

 

地域おこし協力隊に共通している仕事の特徴

  • さまざまな関係者と出会い、コミュニケーションをとりながら進める仕事
  • 自ら考え、主体的に行動していく仕事
  • PCを使った資料・報告書の作成、プレゼンテーションも行う仕事

移住に伴って環境が変わることで、新しい出会いが増えます。地域住民や関係者とコミュニケーションをとりながらの活動は、必須と言えるでしょう。地域外からの視点を求められる場面も多く、自らの考えを軸に企画を考えたり、主体的に実行したりする姿勢に期待をしている自治体も多いです。

また、イベントの運営、地場産品のPRなどを行う時には、企画書や販促のためのフライヤーなど、資料作成する機会も多くなります。企画で活用する補助金の報告書類や活動経費の申請書類などを記載することもありますので、最低限のパソコンスキルも必要です。

 

任期終了後の動向

総務省の調べによると、地域おこし協力隊の任期終了後の進路は以下の割合となっています。

出典:総務省 地域おこし協力隊令和3年調査結果

起業の内訳を見ると、古民家カフェや農家レストランの開業などの飲食サービス業、ゲストハウスや農家民宿などの宿泊業が多い傾向にあります。

地域の農産物を商品化してカフェを開業したり、空き家をリノベーションしてゲストハウスとしてオープンしたりするなど、協力隊活動中に準備を進めて起業するケースが多いです。

また、就業先の内訳としては、自治体職員や集落支援員などの行政関係に就業する人が大部分を占めています。その他、旅行業や宿泊業を営む観光分野や、農業法人や森林組合などの農林漁業分野に勤める人も多いのが特徴です。

地域おこし協力隊期間中は、自治体職員と関わりながらの仕事が多くなります。地域協力活動や自治体の業務にも精通して隊員のノウハウが蓄積すると、任期終了後も職員として地域に残って欲しいといった期待の声も多くなるため、採用試験を経て自治体職員になるケースも多いです。

 

おためし・インターン形式の協力隊体験も可能

各地方自治体で運用方法が異なる地域おこし協力隊の活動は非常に幅広く、捉えにくい側面があるでしょう。より具体的に地域おこし協力隊を理解するために、活用できる取り組みを紹介します。

おためし地域おこし協力隊

おためし地域おこし協力隊とは、地域おこし協力隊として活動する前に、2泊3日などの一定の期間、地域協力活動を体験する取り組みです。具体的な活動は、以下のような内容です。

  • 行政職員や着任する地域関係者などとの顔合わせ
  • 活動の場となる地域や施設の案内
  • 実際の地域協力活動の体験

地域おこし協力隊は、原則「都市地域から条件不利地地域への移住」が必要ですが、おためし地域おこし協力隊にはこの移住要件がありません。

地域おこし協力隊インターン

地域おこし協力隊インターンは、おためし地域おこし協力隊よりも長い2週間〜3カ月の間、地域おこし協力隊と同様の地域協力活動を体験する取り組みです。おためし地域おこし協力隊と同様、移住要件はありません。

インターン期間中は、1日あたり1万2千円の報償費が支給される自治体が多く、活動期間中の宿泊滞在費や交通費として利用できます。

「おためし地域おこし協力隊」や「地域おこし協力隊インターン」を活用することで、その地域で地域おこし協力隊活動をしていくイメージを確かめられるでしょう。

 

地域おこし協力隊になる方法

これから地域おこし協力隊になるためには、何からはじめたらよいのでしょうか。ここでは、地域おこし協力隊になるための方法を5STEPで解説していきます。

STEP1 地域を選ぶ

地域おこし協力隊として着任したい地域を選びましょう。
地域おこし協力隊の募集がどの地域ででているかは、一般社団法人移住・交流推進機構(以下、JOIN)のサイトから検索できます。詳細検索画面では、以下の検索条件から絞り込めます。

  • 募集カテゴリー(協力隊・インターン・おためし)
  • 活動カテゴリー(農林水産業・観光・地域づくり・空き家など)
  • 地域(都道府県別など)
  • 必要資格免許(普通自動車免許の有無)
  • 活動支援制度(報酬月額、活動日数、支援内容別)
  • フリーワード検索

    ※JOINのサイトに掲載していない自治体もありますので、移住したい地域が決まっている場合は、自治体のHPもチェックしておくとよいでしょう。

STEP2 募集に応募する

気になる地域の募集が見つかったら、募集要項を確認して応募書類を準備しましょう。

エントリーするためには「履歴書」や「志望理由書」など、各自治体が用意するフォーマットの書類を作成する場合が多いです。

STEP3 面接

書類選考を経て、面接に進みます。オンライン面接の場合が多いため、パソコンやWebカメラを用意しておくのが望ましいでしょう。面接は自治体職員のほか、協力隊活動の内容によっては地域住民や関係団体の担当者も同席の上、質問される場合があります。

STEP4 着任準備

採用決定後は、自治体職員と連絡をとりながら協力隊活動をはじめる準備を進めていきます。

移住後の住居は、自治体側が地域内の物件を手配してくれている場合もあれば、自分で賃貸物件などを見つけて契約を依頼する場合などがありますので、担当者に確認しながら進めましょう。

また、現在の仕事を退職して地域おこし協力隊になる場合、退職日の調整や業務の引き継ぎに要する期間の関係で、自治体側が予定している日に着任するのが間に合わない場合があるかもしれません。

そのような場合、自治体によっては着任日を調整してくれるケースもあるため、担当者に確認してみてもよいでしょう。

STEP5 活動開始

住居の手配や引っ越しなどが完了したら、地域おこし協力隊の活動がはじまります。

最初は、活動内容のオリエンテーションや地域住民との交流会など通じて、地域の状況や今後の活動環境を確かめるところからスタートします。具体的な活動に入る前に、活動経費の使い方や活動に必要な物資について担当者と話し合っておくと、スムーズに活動を進められるでしょう。

 

まとめ

地方移住の手段の1つとして活用できる「地域おこし協力隊」についてご紹介しました。
総務省では「令和8年までに地域おこし協力隊を10,000人に増やす」方針を発表しているため、今後は地域おこし協力隊の募集が増えるチャンスと言えるでしょう。

移住に興味がある方は、地域おこし協力隊の経験談を参考にしながら、情報収集を進めてみてください。

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