移住にかかる費用の全体像を段階別に解説!安く済ませるポイントは!?
移住にかかる費用の全体像や段階別解説、助成金活用法など、移住に関する費用や注意点について詳しく解説します。
地方移住を検討している人の大きな悩みの1つは「移住にかかる費用」ではないでしょうか。地方移住では、移住する方の状況や移住先、移住するスタイルなど多くの要素が絡み合っているため、人によって移住にかかる費用が大きく変わります。
今回は地方移住にかかる費用の全体像を段階別に解説し、安く済ませる考え方やポイント、注意点をまとめました。
段階別にかかる移住の費用と種類
人によって移住にかかる費用は大きく変わりますが、段階別にお金がかかるポイントを理解しておけば、より具体的な費用感が見えてきます。ここでは、「移住前」・「移住中(引っ越し)」・「移住後」の3つの段階に分けて解説していきます。
移住前にかかる費用
移住前にかかる費用は、大きく分けると3つあります。
主に移住前の段階では理想の移住先を調べたり、移住先での住まいや仕事探しなどの活動が多くなったりするため、これらの頻度や状況に応じてかかる費用が増減すると言えるでしょう。
移住先を絞るまでの費用
日本国内には1,700を超える市町村があります。*1
その中から理想の暮らしを実現するために、いくつかの移住候補先を検討している方も多いのではないでしょうか。
移住先を絞るまでに、以下のような費用がかかります。
- 現地を訪れるための交通費
- 移住候補先の宿泊滞在費(短期移住・お試し移住)
しっくりくる場所は、足を動かして見つける
佐賀県 / 唐津市
気になる移住先がたくさんある場合や、ご家族での移住を検討している場合は、現地への交通費や宿泊滞在費が膨らむ傾向にあります。1ヶ所の滞在で3万〜5万円かかった場合、複数移住候補先に訪れるとそれだけで10万円以上かかる方もいるでしょう。
まずはインターネットを使って移住先の情報を得ることが多いですが、検討の確度が高い候補先は、実際に足を運んで現地の状況を確認するのが大切です。現地を一度も確認しないで移住するのはリスクが高いので、ある程度は必要経費として割り切るのが現実的と言えるでしょう。
自治体や委託を受けたNPO法人が運営する「お試し移住」向けの住宅を活用すれば、無料で宿泊できたり、中長期の滞在でも割安で滞在できたりします。
自治体が移住先をアテンドするオーダーメイドツアーに参加すると、見たい場所を巡れたり、先輩移住者と話せたりする機会が作れます。現地の移動手段や宿泊先も手配してくれる場合があるので、下調べに活用するのもオススメです。
こうした移住を目的とした活動にかかる費用を補助してくれる自治体もあるので、各自治体の窓口に問い合わせの上、現地を訪れると良いでしょう。
- 奈良県奈良市の移住支援制度
お試し移住支援制度の対象宿泊施設での宿泊1泊あたり2,000円(最大2万円)支給
奈良市の移住支援制度 ワープシティ|地方移住を考える人のお役立ち情報サービス
*1 2023年4月時点(政府統計の総合窓口より )
移住先の仕事を決めるまでの費用
実際に移住をする場合、移住後の生計を立てる仕事も見つけておく必要があります。
移住先の仕事を決めるまでに、以下の費用がかかります。
- 現地での選考や面談、事務手続きに訪れるための交通費
- 職場環境を整えるための設備費
最近の転職面談ではWEB面談が多くなっているので、自宅からでも選考に参加できることが多くなっています。
ただし、最終的な就業の意思確認や事務手続きのために、現地に訪れる必要がある場合もあるでしょう。
また移住先で在宅勤務をする方は、モニターやデスクなどの「働きやすい環境づくり」に設備投資をする方もいます。
こちらも自治体の補助の他、厚生労働省が地方就職を行う方向けに「広域求職活動費」と「移転費」を支給しています。条件を満たせば面接や雇用後の引っ越し費用にかかった費用を支給してくれる場合があります。
厚生労働省:「広域求職活動費」と「移転費」の概要
移住先の家を決めるまでの費用
移住先の住まいを決めるまでには、以下の費用がかかります
- 物件の内見や周辺状況を調べるために現地に訪れる交通費
- 物件の取得費や敷金礼金、前払い家賃
- 個人間で契約を取り交わす場合の契約書作成手数料
地方では人口減少が進み、空き家が増えている状況です。空き家バンクなどで手軽に情報収集できるようになっていますが、空き家期間の長い古民家は状態が悪い物件も多いです。
物件の取得価格が安くても、その後の修繕にお金がかかる場合も多いため、物件の購入を検討されている場合は、必ず現地で確認しましょう。
また、現地で知り合った人からの紹介で物件を購入したり借りたりする場合、不動産会社を仲介しない場合があります。その場合、トラブル防止のために個人間でも契約書を取り交わす方が無難です。
家賃1カ月分程度の手数料はかかりますが、不動産会社が取り扱っていない物件でも、地元の不動産会社で賃貸借契約書を作成してもらえる場合があります。
移住のために物件を購入したり、賃貸物件を契約したりする場合は、その諸費用を自治体が補助してくれる支援制度もあります。
物件購入や敷金礼金などは金額が大きい場合もあるので、支援制度を利用するのがオススメです。
- 兵庫県洲本市の支援制度
住宅を購入、賃借する移住世帯や新婚世帯に、住宅取得費用や引越費用、自動車購入費用などの新生活に必要な費用の一部を助成します。
新築住宅購入の場合:180万円
中古物件(空き家バンク登録物件)購入の場合:150万円
中古物件(空き家バンク未登録物件)購入の場合:130万円
住宅賃貸借の場合:60万円
洲本市の移住支援制度 ワープシティ|地方移住を考える人のお役立ち情報サービス
移住中にかかる費用
実際に移住する場合、以下の費用がかかります。
- 家財の引っ越し費用
- 車の引っ越し費用
- 引っ越し当日の交通費や宿泊滞在費
引っ越し業者へ委託する場合、時期によって価格の変動が大きくなります。
新学期や新社会人、転職、異動で住まいが変わる3月、4月、9月は引っ越し業者の繁忙期となり、料金が高くなる傾向にあります。
繁忙期を避けた時期に、複数の会社から相見積もりをとって検討することで、引っ越しにかかる費用を抑えられます。その際、引っ越し大手企業だけでなく、中小企業・個人事業者の引っ越し業者まで検討の幅を広げると費用を安く済ませられる可能性が高まります。
また、地方移住に向けて自家用車を購入している場合、車も一緒に引っ越す必要があります。近場であれば自分で運転もできますが、遠方への移動の場合は家財の荷物の搬入に間に合うように移動する必要があるため、無理のない計画が必要です。必要に応じて業者に任せましょう。
自治体によっては、移住に伴って引っ越しにかかった費用を補助してくれる支援制度があるため、事前に移住先の担当窓口に相談をしておきましょう。
- 愛知県東浦町の支援制度
移住支援事業費補助金(単身60万円・世帯100万円):東京23区(在住者又は通勤者)から愛知県内に移住し、対象法人に就業した方の引っ越し費用などの移住に要する経費を補助します。
東浦町の移住支援制度 ワープシティ|地方移住を考える人のお役立ち情報サービス
移住後にかかる費用
移住した後は、慣れない運転や地域の方との交流などが増え、新鮮な日々が待っています。また、新しい暮らしに少しずつ慣れていく中で、日々の支出なども把握できるようになります。
移住後に変化が大きくなりやすい費用や、移住前に把握しにくい費用をまとめました。
- 住まいにかかる費用
地方は都市部に比べて、同じ間取りでも家賃相場が安い傾向にあるため、月々の住まいの固定費が下がる人が多いです。同じ金額でもより広い家に住めるようになるので、ファミリー向けの一戸建て住宅や庭付き物件を借りることもできます。
古民家へ移住を希望する場合は、修繕費に注意が必要です。一見住めそうな古民家でも、水回りや床下の傷みがひどく、修繕にかかる費用が高額になる場合があります。
市街地を離れたエリアなどでは下水道がない場所もあり、トイレを汲み取り式から水洗式に修繕する場合に、合併浄化槽を導入する必要があります。導入する合併浄化槽の規模や委託業者によって変わりますが、導入には200万円~400万円近くかかる場合があるため、取得した物件を修繕する見込みの場合は、トータルコストを意識しておきましょう。
なお、合併浄化槽を導入した場合は、定期点検費用や汚泥の除去・清掃費用がかかり、年間2万円~3万円の維持費がかかります。
- 水道光熱費に関する費用
住まいが大きくなった分、水道光熱費が高くなる場合があります。
古民家は隙間が多く断熱性能も低いため、暖房費などが多くかかります。特に、雪が降る寒冷地ではヒーターに使う灯油代や電気代が月3万円を超えるなど、冬場の光熱費がかさむ場合があります。
寒冷地にある会社では、冬場に暖房費手当などの補助がでる場合もあるため、寒い地方へ移住や転職を考えている人は、勤める会社にあらかじめ確認してみても良いでしょう。
挑戦する余白がある男鹿での暮らし
秋田県 / 男鹿市
- 車にかかる費用
移住して賃貸物件や月極め駐車場の賃借料は下がる一方、「一家に1台」から「1人1台」へと自家用車を持つ台数が増えたり、走行距離が増えたりする分、車の燃料費や維持費が増えます。
車を所有すると以下のような維持費が増えるので、月単位ではなく、通年で支出を把握しておくと良いでしょう。
自動車税:年間に一度支払う税金で、車種や排気量によって金額が異なります。
重量税:車検の際に支払う税金で、車の重量に応じて金額が決まります。
自賠責保険:運転者や第三者に対する損害を補償する保険です。(加入は義務)
任意保険:自賠責保険ではカバーされない損害を補償するための保険です。(加入は任意)
車検費用:法定点検を行う車検にかかる費用で、普通自動車の場合は2年ごと、軽自動車の場合は3年ごとに行われます。
燃料費:ガソリンや電気など燃料にかかる費用で、車種などによって燃費が異なります。
タイヤ交換費用:タイヤの摩耗や季節に応じたタイヤ交換(スタッドレスタイヤなど)にかかる費用です。
整備・修理費用:定期的なオイル交換やフィルター交換、ブレーキパッド交換などの整備です。
また、移住後に新たに自動車の免許を取得する場合は、自動車教習所の費用も20万円~30万円程度かかります。
地域によっては、自家用車がないと不便な場合があります。必要に応じて免許の取得や自家用車の購入が必要になるでしょう。
自動車購入や免許取得にかかる費用を補助してくれる自治体もありますので、こちらも移住前に支援制度がないか確認しておくと良いでしょう。
- 北海道大空町の支援制度
自動車取得助成金:転入時において普通自動車等を保有していない世帯で、転入時から1年以内に町内の自動車販売業者から自動車を購入した方に助成金を交付(上限10万円)
普通自動車運転免許取得助成金:普通自動車運転免許を持っていない転入者の方で、転入時から1年以内に町内の自動車学校で普通自動車運転免許を取得した方に助成金を交付(上限10万円)
大空町の移住支援制度 ワープシティ|地方移住を考える人のお役立ち情報サービス
- 町内会に関する費用
地方では、住民が共同で運営する自治会や町内会に支払う費用があります。町内会費は、地域や集落によって変わりますが、月額数百円〜2,000円、もしくは年額数千円〜20,000円程度です。
集められた町内会費は、地域の清掃活動や防災活動、行事などの費用に充てられています。
移住前には把握しにくい費用の1つですが、以下の方法で調べることができます。
・町内会のWEBサイトで調べる
・町内会の代表に問い合わせて聞く
・地区の民生委員に問い合わせて聞く
町内会がWEBサイトを運営している場合は、要綱や申込書フォーマットの中に町内会費の金額が記載されていることがあります。
また、各自治体には町内会に関する窓口があります。自治体の窓口に相談し、住む予定の住所から該当する町内会を特定して、代表者や民生委員へ確認することで町内会費の金額を知ることができます。
挑戦する余白がある男鹿での暮らし
秋田県 / 男鹿市
移住にかかる費用を安く抑える補助金活用のコツと注意点
移住するまでにかかる諸費用を安く抑えるためには、自治体の助成金を積極的に利用すると良いでしょう。
地方自治体では、移住者が現地の確認や求職活動、物件購入などを補助するさまざまな支援制度を用意しています。
地方自治体の補助金を活用するためのコツとして、3つのポイントと注意点をまとめました。
- 移住相談セミナーなどに参加して情報収集する
地方自治体が開催する移住相談セミナーでは、支援制度について紹介されていることが多いので、積極的に参加して情報を収集しましょう。
セミナー後に個別相談の時間が設けられている場合もあるので、そこで自身の状況と使えそうな補助制度について質疑もできます。
- 補助金が使えるか事前に担当者と確認する
補助金を利用する場合は、細かい条件が設けられているので、自身の状況や補助対象となる費用の詳細を確認しておくことが大切です。
例えば、引っ越し費用の補助においては「専門業者に委託した場合に限る」「専門業者の請求書を提出すること」などが記載されていることがあります。
そのため、自分で引っ越しをした場合のトラックのレンタカー代などは補助の対象外になるなど、正しく条件を把握しておかなければ補助金が利用できません。
自治体の担当者と移住の活動にかかる諸費用の詳細を共有して、事前に確認しておくと安心です。
- 相談と移住が年度をまたぐ場合は注意
地方自治体は、年度単位で移住支援施策を実施していることが多いです。そのため年度が変わると移住支援制度のメニューや金額が変わる場合があります。
移住相談時に使おうと思っていた支援制度が、年度が変わってなくなってしまう場合もありますので、移住相談窓口の担当者に状況を確認しながら移住計画を立てるのが大切です。
自治体の担当者と情報共有を継続的にしておけば、年度が変わる前でも(次年度の施策が固まっている)年度末付近に、見込みの支援制度の内容を教えてくれる場合がありますので、移住の計画が立てやすくなります。
田舎暮らしはやっぱりいいな。自然豊かな豊田市の暮らし
愛知県 / 豊田市
まずは移住にかかる費用を把握しよう
地方移住では生活環境がガラリと変わるため、家や自動車の購入、引っ越し費用などの大きな支出も見込まれます。
移住するまでにどんなポイントでお金がかかるのかを把握して、自治体の補助をうまく活用しながら進めていくと費用が抑えられます。
そのために、移住候補先の自治体の移住相談セミナーに参加したり、相談窓口へ問い合わせるところから始めてみてください。