移住者プロフィール
新井清隆さん
利用した支援制度
地域おこし協力隊、町内案内、移住希望者滞在費補助金
岡山県和気町の地域おこし協力隊、趣味・特技:芸術鑑賞・茶道・写真
目次
INDEX
地域おこし協力隊の応募動機について教えて下さい。
都内の広告代理店に勤務していた際、地域振興のプロジェクトに地域ブランディングの分野で携わったことがありました。そこで思ったのは、地方での仕事は何でも揃っている都会とは違い不便さがあるということです。
不便だからこそ創意工夫や発想力が試され、パターン化されてない仕事ができる。それがとても面白く、自分の成長とやり甲斐を感じることができました。その経験と培ったスキルを使って社会貢献ができればと考えていました。
そんな折、岡山県和気町が情報発信をミッションとした地域おこし協力隊の募集をしていることを知人に教えてもらい、自分の得意分野だと思ったので応募をしました。
岡山県和気町(わけちょう)を選んだ理由について教えて下さい。
私はもともと歴史が好きなので、岡山は和気清麻呂(わけのきよまろ)や山田方谷(ほうこく)、犬養毅といった歴史上の偉人がいることは知っていましたが、逆にいうとそれ以外の印象はあまりなく、ほかに岡山といえば「きびだんご」「備前焼」「日本刀」ぐらいの印象でした。
その中でも、和気町はというと特に際立った特徴がなく、情報発信の仕事をする上でこんなに適した場所はないと思いました。
「地域の色付けがされていないということは、それだけ自由度の高い仕事ができるのではないか?」
そう考えると、ワクワクしたというのが和気町に興味を持ったきっかけです。
実際に、初めて和気町を訪れた時に、美しい景色とそこで出会った地元の方にとても魅力を感じました。空が広く風景の中に文字情報が少ないというのも魅力のひとつです。
これらの魅力をたくさんの人に知ってもらい、和気町を好きになってくれる人を増やす仕事がしたいと思いこの町を選びました。
地域おこし協力隊の仕事内容について教えて下さい。
空き家バンクの活用
和気町は移住に力を入れていますが、移住を希望する人が望む住宅が少ないという問題があります。一方町内には、高齢などを理由に家の管理を負担に感じている方も多くいます。
この両者をマッチングさせることができれば、好循環が生まれると思い業務に取り組んでいます。具体的には空き家バンク制度の説明や、空き家の持ち主と不動産業者を引き合わせるなどをしています。
関係人口の創出
地元の方のアイデアを基に私が技術的なサポートを行って、地域ファンクラブである「和気町ファンクラブ」の設立と、マンガ『推しが武道館いってくれたら死ぬ(平尾アウリ/徳間書店)』(以下、『推し武道』)とのコラボレーション企画を立ち上げから行いました。
情報発信
プロモーションでは、首都圏での街頭ビジョンや鉄道広告といったOOHメディア(Out Of House Media)の活用や世界最大規模のポップカルチャーのイベント『コミックマーケット』の企業ブースに出展してのPR活動など、マスメディアに対し積極的な情報発信を行い、企画を始めて9ヶ月でメディア掲載回数が40回を超えるなど、効果的なプロモーションができたと思います。
また、SNSの運用、和気町ファンクラブの会員を対象に公式LINEでのコラムやニュースの配信を行っています。和気町内で行われた『推し武道』の複製原画展や特別展示、『推し武道』コラボの飲食店スタンプラリーなどを、地元商工会や地域の高校、学術機関と連携して行いました。
その結果、3,700人を超える方が実際に和気町に来てくださいました。さらに会場のアンケートでは、来訪者の約20%の方が今回の企画がきっかけで初めて和気町に来たという回答がありました。
そして、和気町ファンクラブにも1,400人を超える方に入会していただきました。和気町に関わる人を今後も増やしていきたいと思います。
地域おこし協力隊のやり甲斐はなんですか?
地元の人のアイデアを実現させるための技術的なサポートを行う「縁の下の力持ち」的な働き方にやり甲斐を感じます。地域おこし協力隊になって1年半が過ぎましたが、町民の会話の中にも、『推し武道』という単語が出てくるようになりました。
また、町外の方からも「和気町って推し武道のところだよね」と言われることがあり、確実に私たちが行っていることが町民にも町外の方にも広まっていると思うと嬉しいです。
町内のイベントに和気町ファンクラブのPRブースを出したところ、県内外からたくさんの方が来てくださいました。さらに町民の方からも応援の声をかけていただき勇気づけられています。
たくさんの人がこの企画に関わってくださり応援してくれている。そのことがとても嬉しい反面、責任からプレッシャーも感じています。しかし、イベントなどで和気町に来てくれた方たち、町民の方や企画に携わってくれた方たち、一緒に働いている役場の方たちが喜んでいる姿を見ることが何よりも嬉しく、それがやり甲斐に繋がっていますし、アンケートやイベント会場に設置されたノートのコメントにも励まされています。
私は、民間企業の事業目標は「利益の追求」なのに対し、地域おこし協力隊に求められてる事業目標は「幸福の追求」と考えています。最近盛んに「will-being」という言葉を聞きますが、地域おこし協力隊のミッションには「will-being」の中に示されている「社会的な幸福」、「コミュニティとの幸福」が含まれていると感じています。
地域おこし協力隊になって想定外だったことを教えて下さい。
3年間という期間はとても短く、時間が足りないと感じました。日常業務に加え、自分が行いたいと思うミッション、そして任期終了後に備えるための活動など本当に毎日があっという間に過ぎていきます。
私の場合、「のんびりと田舎暮らし」というのとは縁遠いかも知れませんが、とても充実した日々を過ごすことができています。来た当初は、「よそ者」や「地域おこし協力隊」に対して風当たりが強いのでは?と心配していましたが、地域の方たちや役場の職員の方たちがとても親切で、手厚いサポートをしていただけているのがとても嬉しいです。
欲を言えば、もう少し収入が多ければいいと思います。(笑)
卒隊後のビジョンがある場合は教えて下さい。
和気町は、若者が働きたいと思える就職先が少ないこともあり、若者の町外への流出が社会問題となっています。そこで卒業後は今のミッションでの経験を活かし情報発信や空き家の活用などを行うNPOを立ち上げて、若者が働きたいと思える雇用環境を作ることにより和気町の地域活性化に携わっていきたいと感じています。
情報発信分野だけではなく、シャッター通りになっている商店街の活性化などの取り組みに関われたら嬉しいです。最近、とくに任期終了後の地域おこし協力隊についてネガティブな話題を目にすることもありますが、できれば成功事例のひとつとして和気町が取り上げられるような形で和気町と地域おこし協力隊制度のPRができれば嬉しいです。
和気町の住民と触れ合った際の印象と、エピソードも添えて教えて下さい。
漫画とのコラボについて地元の方に説明を行った際、「夢があっていい」「内容はよく分からないけど、頑張ってるのは伝わるから応援したい」と、後押ししてくれたことが嬉しかったです。
また、『推し武道』コラボのスタンプラリーに参加した飲食店のオーナーが、
「良いことをしてくれた!わざわざ埼玉や東京から来てくれた人がいる」
と、嬉しそうに話しかけてくれたこと、そのスタンプラリーのマップやノベルティのデザインを一緒に行った高校生がその経験をきっかけにデザイン関連の学校に進学を決めたことなど、自分が協力隊の仕事を通じて地域と繋がっていると実感できて嬉しかったです。
和気町の魅力について教えて下さい。(自然やグルメ、オススメスポットなど)
和気町はとても自然豊かで空が広く美しいところです。人工林が少ないため四季折々に山が景色を変える様子がとても賑やかで楽しいです。
盆地のような地形からか、寒暖差が激しいため野菜が美味しく、それを新鮮な状態で手に入れることができます。そして、なにより地元の方たちが温かく迎えてくれる優しい地域というのが最大の魅力だと感じています。
移住を検討している方にメッセージをお願いします。
これは和気町に限らずどこの地域にもいえることですが、事前の下調べはものすごく大切です。田舎での生活は、地域の一員に加わることによって地域に貢献していくという意識が大切です。
その上で地域の人たちと良好な関係を築くために、町内の行事への参加や、地域の清掃など都会の生活に比べて地域との関わりがどうしても濃くなります。自分が考えている生活がその地域とマッチするのかをよく考えた上で移住先を決めることが重要です。
また、都会の生活に比べて不自由なことが多くなります。その不自由さを自分のアイデアや行動で解消していくという一種のゲーム的感覚でいるとより楽しい地方での生活を過ごせると思います。
地域おこし協力隊の詳細についてはコチラ↓
https://warp.city/features/2