<h2>「ミツバチ愛」がきっかけで田舎暮らしに出会う</h2>幼少期から漠然と田舎暮らしに興味があった藤田さん。出身の兵庫県伊丹市は、大阪空港があり、飛行機の騒音が激しい地域だったため、静かな場所での暮らしに憧れていた。近畿大学生物理工学部に進学後、米の研究に取り組むなか田植えを体験し、田舎暮らしの一端に触れる機会を得た。大学卒業後は大阪の百貨店に勤務しながら、社会人2年目にNPO法人「梅田ミツバチプロジェクト」にボランティア活動に参加する。「はちみつは花によって味わいが違うんです。お土産でいただいたアカシアのはちみつが衝撃的においしくて、そこからどっぷりとハマっていきました」学生時代は稼いだバイト代のほとんどをはちみつに費やすほどのはちみつ愛好者であった藤田さんは、その情熱が高じて、次第にミツバチへの愛情も芽生えるようになったという。「ミツバチってふわふわしていて本当にかわいいんです。それに、生涯で集めるはちみつがティースプーン1杯分程度なんですよ。それを知ったとき、ものすごく尊い存在に思えて…。お花から蜜を吸う姿や巣箱でちょこちょこ動き回るしぐさも、とても愛らしくて癒されるんです」と目を輝かせます。<figure class="image"><img src="https://warp.city/storage/uploads/posts/2025/01/16/OkbnF1nnXg0YKShVqHeg9/VgL3ftgA-V-QGj_wu740i.webp"></figure>3年間勤めた会社から転職し、2013年から2015年の2年間NPO法人梅田ミツバチプロジェクトに就職。「都会に居ながら『農』に仕事として関われるのは最高！」という思いで、都会の緑化活動の一環として幼稚園児や小学生向けに環境学習を行う活動をしていた。しかし、都会での生活を続ける中で、都会の空気が自分に合わないと感じるようになり、人間らしさを失ってきているという違和感を抱くようになる。「ビルとビルの隙間を縫うように飛び回るミツバチを見て、『本質的ではない気がする』と感じるようになったのです」<h2>出会いのなかで環境を変えたいと思うように</h2>はちみつの魅力を伝える仕事の一環として毎週のようにマルシェに出店し、そこでの出会いが移住のきっかけになった。「当時、地域おこし協力隊の存在を知りませんでした。マルシェで出会った奈良に移住した協力隊の女性とお話したときに、その方がとってもイキイキしていて…いいなぁと。私も田舎で自然を感じられる暮らしを始めたいと思いました」自然と共存し、人間として本質的な生き方を求める気持ちから「ニッポン移住・交流ナビ JOIN」を利用して、関西圏を中心に移住先をリサーチ。地元の友達に気軽に会える距離であることを条件に探す中で、東近江市に出会った。「東近江市は、関西の都市圏へのアクセスが良く、農業に関わるプロジェクトで地域を盛り上げることであれば何を提案してもOKという自由度が魅力的でした」取り組みの自由度だけでなく、「資源循環型の地域づくりを推進する『菜の花エコプロジェクト』が生まれた場所であり、地域ぐるみで自然に配慮しているところも良かった」と振り返る。協力隊への応募時に初めて東近江市を訪れ、「これまでの養蜂の経験を活かして、ニホンミツバチの養蜂体験ができる民泊を運営したい」という想いを伝えた。そして2016年1月から協力隊として東近江市での暮らしが始まり、憧れだった「農」に携わる生活が始まった。<figure class="image"><img src="https://warp.city/storage/uploads/posts/2025/01/16/OkbnF1nnXg0YKShVqHeg9/5lYcNJN6Xi69KgCWQWDLP.webp"></figure><h2>季節の変わり目を感じる田舎暮らし</h2>「都会ではディスプレイやショーウィンドウなど人工的なもので強制的に季節を感じることが多く、少し息苦しさを感じていました。しかし、移住してからは都会では得られなかった日々のゆるやかな季節の移ろいを肌で感じられるようになりました」と穏やかに微笑む藤田さん。移住者も多く、地域外の人に対してもウェルカムな姿勢があると感じた東近江市の暮らしだが、田舎ならではの文化に戸惑うこともあるという。「東近江市は梨やぶどうなど、おいしいフルーツが特産でたくさん獲れるのですが、お裾分けとして1人では食べきれないほどの量をいただくこともあります。地域外の人からは羨ましがられるのですが、あまりにも量が多いと傷んでしまうこともありますし、誰がくださったのかわからないこともあって、どうお返しをしたらいいのか悩んでしまいました」都会では馴染みのなかった習慣に最初は驚いたものの、今ではお返しとして作業を手伝うなど、地域での助け合いもひとつのコミュニケーションだと感じている。<figure class="image"><img src="https://warp.city/storage/uploads/posts/2025/01/16/OkbnF1nnXg0YKShVqHeg9/zOcFFVlXzw0oO9EwXW3ex.webp"></figure><h2>大切なことは「地域に貢献できていること」</h2>地域おこし協力隊として、最初に取り組んだニホンミツバチを体験できる民泊プロジェクトは、思うように進まず、一人で地域おこしに取り組むことの難しさを感じる。その経験をバネに新たに立ち上げたのが、百済寺で仕込まれていた幻の銘酒を復活させる「百済寺樽プロジェクト」であった。百済寺樽のお披露目の場では小椋正清市長から「ミツバチと言っていたのに酒に変わったなぁ！」と笑い話にされるなど、日本酒造りへのシフトチェンジが地域にも大きな成果をもたらした。「手探りでしたが、クラウドファンディングを通じて地域外の方にも支援をいただき、実際に百済寺まで足を運んでもらうことで、百済寺の魅力を伝えることができました」<figure class="image"><img src="https://warp.city/storage/uploads/posts/2025/01/16/OkbnF1nnXg0YKShVqHeg9/e3UyShZ8KMWIV1mHosg_o.webp"></figure>藤田さんをここまで突き動かしたのは、最初の民泊プロジェクトを断念した経験である。「目的はお酒の良さを広めることではなく、百済寺樽をきっかけに東近江市を多くの人に知ってもらうこと。そのために都会の飲食店にも協力してもらい、メニュー化してもらうなど、地域外の方との接点を増やしました」自分のやりたいことばかりではなく、「地域に貢献することが大切」と真剣な眼差しで語った。<h2>地域で大切にしているものをカタチに</h2>「地域おこし協力隊だからこそできることがあり、就任後にすぐに正規の立場として、その地域の伝統や大切にされているものを引き継ぎ、カタチにすることができます」藤田さんは百済寺樽プロジェクトについても、「協力隊だからこそ実現できた」と振り返った。「今では百済寺樽は町のお酒として、地域の行事で振舞われたり、お土産に使われたりしていて『おいしい』と言ってもらえることが本当に嬉しいです」と語り、すっかり地元の名物となっている。現在は、現役の協力隊をサポートする支援団体「一般社団法人しがごとまるごと協力隊ネットワーク」を立ち上げ、協力隊の経験を活かし、地域活性アドバイザーとして活動。地域内・地域外問わず多くの人を巻き込みながら、滋賀の魅力を発信し続けている。藤田さんは「今は地域のことを知ってもらうための準備をしている段階」と語り、その目標は「地域で収益を上げること」だと話す。「社会に貢献できているからこそ稼ぐことができると思っています。どれだけ地域に貢献できているか、常に確認しながら進んでいきたいです」その取り組みとして、田舎に来たいという需要に応えるシェアハウスの運営や、大阪市内でマルシェを開催するなど、地域内外の方をつなげる場を創出している。<figure class="image"><img src="https://warp.city/storage/uploads/posts/2025/01/16/OkbnF1nnXg0YKShVqHeg9/1v3yZyzI-izt3RVUYPJfB.webp"></figure><h2>熱い想いが周囲を巻き込む原動力に</h2>「忙しい中でも、花や植物で季節の移ろいを感じたり、リス、ウサギ、サル、キツネなどの小動物の動きを感じられるようなぼーっとしたり、ゆっくりとした時間を持てるようになった」とにこやかに語る。最後に移住で大切なことを藤田さんに伺った。「協力隊としてはミッションをもっている自治体を選ぶことが重要だと思います。移住自体はタイミングとご縁なので、ビビビッときたらぜひ動いてほしいです。私自身は1泊2日で農家民泊を体験してから移住しましたが、移住前に1度は行って、地域に足を運んで雰囲気を体験してみてほしいです」穏やかな空気感が魅力的な藤田さんのお話には「地域に貢献したい」という熱い想いがあふれ出ている。その情熱と行動力が周囲を巻き込み、東近江市への移住者増加にもつながっている。藤田さんのパワフルな姿勢は、今後も多くの人を触発し、地域に元気を与えていくことだろう。

ワープシティ公式

“ワープシティ地方移住体験談”では、地方移住を検討している方に向けて、先輩移住者から移住に至った経緯や体験談、移住先の仕事内容や生活などの生の声をお届けしています。
 
第92回目の先輩移住者は、兵庫県伊丹市出身の藤田彩夏（ふじた・あやか）さんです。

大学進学をきっかけに和歌山に移住。大学では稲を研究し、かねてより興味のあった「農」と関わる暮らしに憧れるようになりました。大学卒業後は大阪の百貨店に勤務し、その後はちみつ好きが高じてミツバチと自然を守るNPOに所属。3年間都会でOLとして暮らし、2016年から3年間滋賀県東近江市で地域おこし協力隊として活動しました。現在は、一般社団法人しがごとまるごと協力隊ネットワーク代表理事として滋賀県全体をさらにおもしろくするために活動するほか、合同会社グリーンラボラトリー代表としてマルシェの企画運営なども行っています。

藤田さんが東近江市でのチャレンジと挫折の先に気づいた大切なことについてお伺いしました。


東近江市

滋賀県

出身地：兵庫県伊丹市、職業：一般社団法人しがごとまるごと協力隊ネットワーク 代表理事、合同会社グリーンラボラトリー代表

藤田　彩夏

ミツバチを愛する都会のOLが田舎に移住。熱意と行動力で周囲を巻き込み地域を活性化

近畿地方

東近江市（ひがしおうみし）は、滋賀県の東部にある市である。愛知川に沿って三重県との県境である鈴鹿山脈から、琵琶湖岸まで東西に長い市域を持つ。市名は旧国名（近江国）に由来する。

庁舎住所	〒527-8527 滋賀県東近江市八日市緑町10番5号
人口	113,642人 (2021年)
出生数	852人 (2020年)
学校数	幼稚園: 5 (2020年) 小学校: 22 (2020年) 中学校: 10 (2020年) 高校: 4 (2020年)
医療施設数	病院: 7 (2018年) 一般診療所: 74 (2018年)

東近江市

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