移住者プロフィール
伊谷 翼さん
利用した支援制度
地域おこし協力隊
青森県弘前市の地域おこし協力隊、趣味・特技:古流の武術
目次
INDEX
地域おこし協力隊の応募動機について教えて下さい。
私は、地域おこし協力隊の竹細工隊員として活動しています。主に、青森県弘前市の岩木地区愛宕に伝わる竹細工の技術継承と、その魅力を発信することを担当しています。
元々はフラッシュ家具職人として、機械を使ったモノづくりに従事していました。機械を使うことで生産性が上がり、均一で美しい仕上がりを得られる一方で、私は次第に身体を通じた手作業への関心が強くなっていきました。
その中で、竹細工に注目するようになりました。竹細工は、機械を使わずに根気よく手作業で仕上げるモノづくりであり、私が求めていたものにぴったりでした。弘前市の竹細工隊員募集を見かけ、「これだ!」と感じ、すぐに応募を決意しました。
青森県弘前市を選んだ理由について教えて下さい。
青森県弘前市とは、私が趣味で学んでいる古流の武術を通じてご縁がありました。弘前市の小山家に代々伝わる「卜傳流剣術」をはじめ、弘前にゆかりのある武術を、小山隆秀先生にご指導いただくため、2017年頃から毎年ご来阪いただいていました。
さまざまな武術を学ぶ中で、私自身も弘前に関わる武術に特に興味を持ち、もっと近くで深く学べる機会がないかと、心の奥で漠然と考えていました。古流武術は、その土地の文化性や身体性と深く結びついており、同じ流派でも伝わる土地によってその内実が異なります。
武術を学ぶと同時に、土地に根付く舞踊や音楽にも親しんでいる名人や達人が多くいます。その方々が伝える「卜傳流」からは弘前の文化そのものが感じられ、私をさらに惹きつけました。それが、弘前とのご縁を深めた大きな理由です。
地域おこし協力隊の仕事内容について教えて下さい。
愛宕の竹細工は、全国的にも珍しい寒冷地にしか生育しない根曲竹を使って作られます。竹細工は、採取した根曲竹を割り、竹の皮を剥ぎ、その皮の幅と厚みを均一に整えるところから始まります。そして、その皮を用いて丁寧に編み上げ、籠などの製品に仕上げていきます。
私の活動は、この全ての工程において、目利きや技術の継承を行うことです。そのため、先生から教わるだけでなく、自分自身で研鑽や研究を重ねることが、主な仕事となっています。
さらに、多くの方々に愛宕の竹細工に関心を持っていただき、その魅力や歴史を伝えることにも力を入れています。また、現代の生活に調和する新たな使い方を提案し、普段の生活で竹細工を取り入れていただけるよう努めています。
加えて、地域活性化を目指すイベントや行事への参加、取材活動を通じて地域の人々との交流の様子を広く発信し、独立後に必要なスキルの習得にも取り組んでいます。
地域おこし協力隊のやりがいはなんですか?
根曲竹は節が多く、時にはねじれや歪みが生じるため、良質な竹を見つけるのは非常に難しいです。そのため、竹を割ることや皮を剥ぐこと自体が一筋縄ではいきません。
良質な竹が生育する場所を見つけるだけでも時間がかかり、竹を均一に割り、皮を剥ぐ技術を身につけるには、少なくとも二年はかかるといわれています。また、竹を編む際には、網目や形を整えながら作ることが非常に難しく、高度な技術が求められます。
私は、任期中にこれらの技術を習得し、独立できるようにさらに洗練させていきたいと考えています。この挑戦は多くの困難を伴いますが、それこそが私の大きなやり甲斐となっています。
地域おこし協力隊になって想定外だったことを教えて下さい。
特にございません。
卒隊後のビジョンがある場合は教えて下さい。
愛宕を代表するりんご籠をはじめ、愛宕の象徴となるような竹細工を新たに作り、幅広く販売していきたいと考えています。また、手作業だからこそ磨かれる感性を伝えるためのワークショップを開催したり、次世代の育成を目的とした教室を開くことで、竹細工の魅力を広めていきます。そして、最終的にはこの地に定住することが私の第一の目標です。
弘前市の住民と触れ合った際の印象と、エピソードも添えて教えて下さい。
方言が非常に強いことに、初めは驚かされました。竹細工の先生や、弘前市の文化を学んでいる獅子踊りの先生方はご高齢で、まさにネイティブ中のネイティブ。皆さんが話す昔ながらの津軽弁は、ほとんど理解できないことが多いです。
文脈から推測するのも難しく、最初は勘に頼って会話をしていました。重要なポイントを聞き逃しているのではないかと、不安に感じることもあります。
少しずつ慣れてはきたものの、大阪弁とは異なる距離感や会話の間の取り方に、今でも密かに戸惑いを感じることがあります。
弘前市の魅力について教えて下さい。(自然やグルメ、オススメスポットなど)
弘前市では、春には日本一を誇る弘前公園のさくらまつりや、りんごの花が咲き誇り、夏にはねぷた、秋にはお山参詣など、四季折々の行事を楽しみながら季節を感じる生活が送れます。そして、いつでもどこからでも美しい岩木山を眺められることが、何よりの魅力です。
岩木山は、見る場所によって形や風景が異なり、地元の人々は自分の町から眺める岩木山が一番だと誇りに思っています。
また、豊富な温泉が近くにあることも、この地域の大きな魅力です。温泉ごとに湯質や温度が異なり、自分に合うお湯を見つけたり、その日の気分に合わせて温泉を選んだりするのも楽しみの一つです。
多くの温泉が日帰りで利用できるため、こちらの住民は車にシャンプーやタオルなどを詰めた「湯籠」を常備していることが多いです。
移住を検討している方にメッセージをお願いします。
まずはその土地に足を運び、風土を感じたり、地元の人々と触れ合って、自分に合いそうかどうかを探ってみることから始めると良いと思います。各自治体が実施している体験ツアーを利用して現地を訪れるのも一つの方法です。
また、少しでも縁のある人がいると、移住後に助けてもらえることが多いので、趣味などを通じてその土地と繋がりそうな人がいれば、事前に関係を築いておくのも良いかもしれません。
さらに、弘前の「ねぷた」のように、地元の人々と交流する機会が多いかどうかも、移住先を選ぶ際の重要な要素として考えてみると良いでしょう。
地域おこし協力隊の詳細についてはコチラ↓
https://warp.city/features/2