移住者プロフィール
竹中 伸明さん
利用した支援制度
地域おこし協力隊
岩手県釜石市の地域おこし協力隊、趣味・特技:レコード・手ぬぐい等のモノの収集・プラモデル・記憶力
目次
INDEX
地域おこし協力隊の応募動機について教えて下さい。
私は大阪府の高槻市出身でラグビーの経験者なのですが、ラグビーワールドカップ2019に釜石鵜住居復興スタジアムで行われたフィジー対ウルグアイの試合をオンデマンドで見ていました。試合自体も面白かったのですが、なにより、子どもたちの歓声がずっと聞こえていたのが印象的でした。
それ以降、震災のことや復興のこと、スタジアムの話をいろんなメディアで見ましたし、ワールドカップ誘致の取組みなどを調べれば調べるほど「これは釜石のスタジアムに行かなきゃない」と思いました。
※「行かなきゃない」は方言で「行かなければならない」という意味
初めて釜石に来たのは、釜石鵜住居復興スタジアムの木製ベンチのペンキ塗りボランティアでした。ボランティア後、帰りに立ち寄った釜石駅に隣接する観光施設シープラザ釜石に立ち寄りました。
当時、釜石で行われたフィジー対ウルグアイ戦には市内の全小中学生が招待されていました。シープラザ釜石には、招待され観戦した市内の全ての子どもたちの感想文集が置かれていて、それを読み始めて、たまらない気持ちになりました。
「見たこともない景色が釜石にあった」「世界がすぐそこにあった」「世界の人を応援した」子ども達のそうした感動が綴られており、あの状況から誘致に取り組んだ大人たちの思いは、次世代に引き継がれる、まさにレガシーだったんです。
そうした釜石のプロセスに憧れ、自分の感動体験が応募につながりました。
「思い」のある方から「思い」のある方へ繋がれていくことはすごい事です。一般の仕事もやりながら、スタジアムのこともやるという状態はすごいなと思います。
スタジアムに関わる人が変わったとしても「思い」が一定に保たれる中間層を作っていきたいなと思っています。
岩手県釜石市を選んだ理由について教えて下さい。
東日本大震災から復興しようというときに「ラグビーワールドカップを誘致しよう」「ラグビーでまちを創っていこう」と決意し実現したことに魅せられたし感動しました。
自分自身、釜石での試合をきっかけにボランティアに来ましたが、その頃というのは体調をドカンと崩していたタイミングでもありました。あの試合に感動と元気をもらったり、あの状況からラグビーワールドカップを誘致した釜石の歩みに勇気をもらっていました。
体調が良くなるにつれ、誰に宛てたらいいか分からないけど、感謝の気持ちを一方的に持つようになっていました。いざ、釜石に来てみて、市役所の職員の方に感謝を言ったらいいのかというと、そうでもなさそうだし、隊員として着任したばかりの頃は市民の方も誰も知らないので、感謝の気持ちを誰に伝えていいか分からない状態でした。
今やっと分かるようになってきましたが、誰も感謝されようと思って頑張った方はいないんです。その方々が見てきた、過ごしてきた釜石をより良い場所にして、次の世代の子どもたちに渡していきたいという思いが行動の原点であり、僕はそこに、自分の感謝の気持ちをぶつけていきたいと思っています。
地域おこし協力隊の仕事内容について教えて下さい。
簡単に言えばラグビーの普及です。釜石にはラグビーのプレー自体を教えることのできる人はたくさんいます。ラグビーのプレー人口を増やすというよりも、ラグビーを見る、支える、もっと広い意味で親しむ人たちを広げる、そういう活動をしています。
具体的には、ラグビーワールドカップ2019™の開催地となった、釜石鵜住居復興スタジアムでのラグビーイベントのお手伝いや地元のラグビーチーム釜石シーウェイブスとの連携のサポートです。(1日に11キロも、スタジアムの周りを歩き回ったこともあります(笑)。)
ラグビーシーズンに入るタイミングで着任したこともあり、1年間あっという間でした。釜石の地元クラブチーム釜石シーウェイブスに帯同させてもらい、岩手県から釜石シーウェイブスが委託を受けるという形で、デイゲーム先で岩手県のPRをする仕事を手伝いました。
結果的に東京に2回、名古屋に1回出向いて、ノベルティ配布等をしました。回数を重ねながら、ブースをどのように設営するか考えたり、大漁旗を飾りフォトスポットを作ったら、たくさん人が来てくれたりしました。ただのお手伝いだけでなく、そういう企画もやらせてもらいました。
フォトスポットはすごい人気があって、たくさんの方に来てもらい100枚以上写真を撮ったのですが、ネットにはなかなか上がってなかったのが残念でした。
今年の3月に釜石で行われた3連戦では、その経験を活かしてSNSへの投稿を条件にしたノベルティプレゼント企画をしました。個人の思い出にしてもらうのはもちろん、釜石のラグビーやスタジアムの認知を広げてもらうことに関与してもらいたいし、試合を見終わってすぐ帰る、みたいなスタジアムではなく、愛着を持ってもらうことにも繋げたいと思ったからです。
スタジアムは当たり前の存在であり、発信されることはそんなに無いと思いますが、春先になったらスタジアムにわっと色が出てきて綺麗だし、小さい花が咲いているなど変化があります。誰が見ているか分からないけど、ラグビーが行われることだけが、あのスタジアムの価値ではないと思っています。
今後は、ラグビーを見に来るだけではない、スタジアムへの関わり、愛着を創っていきたいです。
地域おこし協力隊のやり甲斐はなんですか?
一緒に活動している市の職員の方から「なかなか手の届いていなかった所に手が届いて、イベントが円滑になった」や「SNSの発信ができるようになった」と言ってもらえるようになりました。そしてやっぱり、スタジアムに来た方が良かったと言っていただけることがやり甲斐です。
スタジアムに足を運べない方でも、何らかの関心を持ってもらうことが嬉しいです。3月に高校生の試合があり、情報発信の一環でキックオフの映像を撮影しSNSに上げました。そうしたら保護者の方から反応があり、たまたまその方のお子さんが蹴っていたんです。「見れて嬉しいです」と言っていただけました。
今回初めてスタジアムに来ましたという方、台風で中止になった2019年の10月13日のラグビーワールドカップの釜石での試合のチケットを持った方など、もちろん試合を見ていただくというのが一番ではあるけれど、オンデマンドで見れる時代にわざわざ遠方から釜石に、そしてこのスタジアムに来てくださる方は、やっぱり特別な思いを持っているなと思います。
もともとスタジアムができるまでに多くの人の思いがありました。その思いが積み重なりながら、このスタジアムが存在していると改めて思っています。
釜石のスタジアムに行きたい、関わりたいというのが、この協力隊に応募した動機でもありました。正直なところ、実際関わることができると思っていなかったのですが、スタッフやその他多くの方に助けられたり、助けたりしながら、ここまでこれました。もっともっといろんな方にスタジアムに来ていただきたいと思っています。
地域おこし協力隊になって想定外だったことを教えて下さい。
ラグビー観戦をするお客様を増やす方法はもっとあると思いますし、働きかけ方があるなと思っています。運営体制の中でなかなか人の手が回っていなかったり、もう少しうまくできることがある印象は持っていますが、それの良し悪しを判断できる蓄積が自分の中にまだありません。
シーウェイブス発足の時に発行していた広報紙を読んだり、そういう蓄積や共通言語をもっともっと持っていきたいなと思っています。想定外ということはなく、自分の関わりしろがいっぱいあるなと思っています。
卒隊後のビジョンがある場合は教えて下さい。
引き続き残りたいな~とは思っています。
ありがたいことに、任期後も継続して関わってくれますか?とお声掛けいただいたりしています。
何か法人を立ててやっていく、ファンドレイザーの資格への挑戦、まだまだこれからだけど恒常的な活動をできるようにしていきたいなと思っています。2年目が大きい勝負で、今後どんな立場でどんな関わり方をしていくのかも含めて考えながら活動していきたいです。
釜石市の住民と触れ合った際の印象と、裏付けるエピソードについて教えて下さい。
休みの日に車の掃除をしていたら、隣の駐車スペースを使っている老夫婦の方にいつも声をかけてもらっています。私は移住後、3月11日を被災地で過ごすのは初めてでそわそわしていました。
それをそのご主人にお伝えしたら、当時の話を話してくれました。ふと話のはずみでドライブに誘われて、一緒に釜石の近隣の沿岸市町村を回ったりしました。釜石は本当にあったかい人が多いなと思います。
また釜石に住み始め、飲みの場や食事に声かけられたりと誘われるのは嬉しいのですが、自分から発信するのがなかなか苦手だったりします。今後「自分でこの指とまれ」をやったときに、とまってもらえる指にならなきゃなと思っています。
釜石市の魅力について教えて下さい。(自然やグルメ、オススメスポットなど)
着任したのが11月で、季節柄もあり町の色味が無くなっていくタイミングだったので、3月、4月の緑の青さ、海の青さが際立ちます。すごく色が出て綺麗だと感じます。
活動の中で通る道がある程度限定されていて、行ってないエリアや通ったことのない道がたくさんあるので通ってみたいし、釜石市の歴史を勉強してみたいと思います。
また、これから海の幸が美味しくなる時期ですのですごく楽しみです。美味しいと聞いていた大和鮨さんはとっても美味しかった…。
そして、釜石ラーメン。スタンプラリーは全店舗まわりました。井桁弘恵さん主演の釜石ラーメン物語のロケ地の三重食堂が一番美味しかったです。
私は結構海藻が好きで、2月はワカメをたくさんいただき、一度も買わずにすみました。ワカメごはんにしゃぶしゃぶ、本当に美味しかったです。
移住を検討している方にメッセージをお願いします。
みんな人それぞれだと思いますが、僕の場合はやりたいことが釜石でしかできないという感じでした。変な話「あかんかったら、違う場所で頑張ろう!」とも思っています。
地域おこし協力隊に応募した時は、他の企業の採用面接も受かっていました。「人生一回きりだからやりたいコトをやったほうがいいよ」という兄の言葉で釜石へ来ることを選びました。
やってみたいということがあったり、この人と一緒に動きたいという気持ち等があれば、ぜひやってみてほしいと思います。