<h2>塩尻の食や環境、活動を楽しむ。「スマホを触っている場合じゃない」</h2>―――現在の仕事や、暮らし方を教えてください。仕事は、週３リモートでFinTechサービスのプロダクトマネージャーとして働き、週１で名古屋に出張して商社の組織開発コンサルを担当しています。住まいは、東京と塩尻にありますが、実質的には塩尻がメインです。毎月3週間以上を塩尻の木曽平沢エリアにあるシェアハウスで過ごし、残りの１週間を東京のシェアハウスで過ごしています。塩尻滞在中は<a href="https://www.sunaba.org/" target="_blank" rel="noopener">シビック・イノベーション拠点「スナバ」</a>を利用しています。―――月のほとんどを塩尻で過ごしているんですね。塩尻のどういったところが気に入っていますか？まずは食です。野菜やくだもの、ワインが美味しいんです。野菜はたとえば焼いて塩をかけるなどのシンプルな味付けだけでも充分。料理がもともと好きでしたが、東京では、ついついコンビニや外食に頼っちゃうんですよね。しかし塩尻では自炊が習慣になってきて、意識的に塩尻産の野菜を買うようにしています。あとは景色。今住んでいる山間部の木曽平沢エリアと塩尻駅の間を移動するときは、電車やコミュニティバスを使っていて、窓から見える景色が綺麗なんです。今日もここへ来るまで、山と空をずっと見ていました。ぼーっと自然を眺める時間は、最近すごく大事にしています。「こんなに綺麗なのだから、スマホを触っている場合じゃないな」って思います。<figure class="image"><img src="https://assets.st-note.com/img/1755057975-IkwK0DZc5ngEHSWXJT24t6Aa.png?width=1200" alt="画像"></figure>自然に囲まれた木曽谷の景色―――木曽平沢エリアから移動する時間は40分ほど。強制的に自然を見る時間が生まれていますね。自然に囲まれて、すごく豊かな気持ちになるんです。「すごいところに暮らしているなぁ」と、毎回新鮮さがありますね。まだ東京にも拠点があるからこそ、そのコントラストに驚くのかもしれません。コンクリートジャングルとの違いがはっきり感じられます。―――ちょなんさんは、地域で開催されるイベントに協力して楽しんでいる印象があります。なぜ積極的に協力や参加しているのでしょうか？都会は人が多すぎて、自分が関われるような余白が見えにくく、すでに関わりしろが埋まってしまっているような感覚があるのですが、塩尻市は、関わりしろが無限にあるような感覚があります。塩尻では、人とつながったらつながっただけ、手を挙げれば、いろんなことにどんどん関われる機会が巡ってきます。特に、塩尻のコワーキングスペース「スナバ」では、地域プレーヤーと自然に出会える環境が整っています。そこに集まる地域プレーヤーが企画する事業やイベントに参加することで、地域との関係がどんどん広がっていきました。結果として、比較的早い段階で地域とのつながりができたのは、とてもよかったなと思っています。<figure class="image"><img src="https://assets.st-note.com/img/1755058082-qFCXnOsa8j0EpKfdkQxPRhrb.png?width=1200" alt="画像"></figure>移住者や地域プレーヤーが集まるシビック・イノベーション拠点スナバ<h2>2拠点居住のきっかけから、準備まで</h2>―――塩尻に関わり始めたきっかけを教えてください。「地域の人事部」の活動に興味を持ったことでした。調べているなかで「地域の人事部」として塩尻で活動する<a href="https://meguru-shiojiri.studio.site/" target="_blank" rel="noopener">NPO法人MEGURU</a>が検索上位にあって、そこで初めて塩尻という地域を知りました。その後、オンラインイベントに参加してMEGURUのメンバーとつながり、2024年4月から業務委託でMEGURUの仕事に携わることになりました。仕事内容は地域企業に所属する人事担当者のコミュニティ構築でしたので、私自身が現地参加する必要性があると判断して、東京と塩尻の2地域居住をスタートしました。<figure class="image"><img src="https://assets.st-note.com/img/1755061205-eh0OW5ibDpKjNCMBgoGwrVUA.png?width=1200" alt="画像"></figure>NPO法人MEGURUのメンバーともともと塩尻にかかわる前は、どちらかというと移住をイメージしていたのですが、東京に本業の仕事もあって、いきなり移住するのはハードルが高いと感じたので、2拠点としました。―――生活がガラッと変わる2拠点居住。2拠点居住に迷いはありませんでしたか？もともと、地方に自分の居場所やつながりをつくりたいという思いがありました。これまでもほかの地域で、関係人口プログラムに参加した経験があります。しかし、距離の問題があって、移住や２拠点居住まではなかなか踏み出せていませんでした。塩尻は、新宿から「特急あずさ」で2時間半ほどということもあって、無理なく関われる気がしました。さらに、いろんな地域で関係人口となっている知人がいて、なかでも特に塩尻に多くの時間をかけているのが印象的でした。塩尻には、人を引きつける魅力があるんじゃないかという期待や興味がありました。―――2拠点居住スタートに向けて、どのような準備をしましたか？最初から準備できたわけではなく２拠点生活をしながら暮らしを整えていきました。塩尻に月１週間の滞在を3ヶ月ほど続けた頃、東京の住まいを賃貸物件からシェアハウスに変えました。東京の住まいを毎月3週間使わないことに、もったいなさを感じて東京の暮らしをミニマムにしたのです。あとは2地域居住の経験者2人から「おためしナガノ」の制度をおすすめされて、活用することにしました。「おためしナガノ」は、長野県が提供する2拠点生活の支援プログラムで、交通費やコワーキングスペース利用の費用支援などが7ヶ月間受けられます。▼「おためしナガノ」についての詳細はこちら：<a href="https://otameshinagano.com/" target="_blank" rel="noopener">おためしナガノ長野県に住んで、仕事をしてみませんか。長野県が最大約6か月「おためし」の機会を提供します。otameshinagano.com</a><h2>2拠点居住スタート。「もしかして塩尻を楽しめていないかも？」</h2>―――２拠点生活をスタートさせてから、想定と異なっていたことはありますか？当時は毎月1週間ほど、塩尻駅前に広がる大門エリアのゲストハウス<a href="https://www.instagram.com/en.to_sio/" target="_blank" rel="noopener">「en.to」</a>を利用していました。もともとゲストハウスの生活スタイルに慣れていなかったので、ゲストハウスでの洗濯や料理などの家事に慣れるまで時間がかかりました。<figure class="image"><img src="https://assets.st-note.com/img/1755058860-weVU5fEdBDJxuQ1yI0zCpPam.jpg?width=1200" alt="画像"></figure>大門商店街にある滞在拠点「en.to」たとえば、自炊をしようにも「1週間で食材を使い切れるかな？」と心配になってしまって、外食やコンビニを多く利用することになってしまいました。大門エリアは塩尻駅前の中心市街地に位置していて、徒歩圏内にコンビニやスーパー、飲食店が徒歩圏内にあります。東京にいるときと、あまり生活スタイルを変えずに過ごせてしまい「せっかく塩尻に来ているのに、これでいいのかな……」と悩みました。そこで、「１週間だと暮らしを充実させるための時間が足りない」と考えて、半年後の2024年11月には贄川エリアのシェアハウス「坂勘」に引っ越し、生活をガラッと変えました。―――贄川エリアは、塩尻駅から中央本線の電車で15分ほどの山間地域です。引っ越していかがでしたか？贄川エリアはコンビニやスーパーなどの店舗は徒歩圏内にはないので、自然と自炊生活をスタートさせることができました。その地域らしい買い物や生活の工夫を見られて参考になりましたね。スーパーだけでなくJAなどの直売所で地元野菜を購入できることを教えてもらったり、近所の方からお裾分けをいただいたりして食卓も豊かになりました。地元の野菜のおいしさをたっぷり感じられるので、もっと早く自炊しておけばよかったと後悔したくらいです。<figure class="image"><img src="https://assets.st-note.com/img/1755058441-3wf9qFersN2nlcd7DWgKQRAS.png?width=1200" alt="画像"></figure>シェアハウス「坂勘」の食卓―――利便性でいえば、引っ越す前の大門エリアの方が便利ですよね？利便性の面では東京で充分間に合っていたので、2地域居住をするんだったら、もっと田舎に住んでみてもいいなと思いました。個人的には、いわゆる「便利さ」と「不便さ」のどちらも選択肢として持っておきたかったんです。もともと生活を営むうえで不便さがあっても問題はなかったはずなのに、便利な暮らしに慣れてしまうと、それが当たり前になってしまいます。そうすると少しでも不便な状況に直面したときに、強いストレスを感じてしまいそうな危機感を持っています。その感覚の変化に、自分自身が振り回されないようにしたいという気持ちがありました。身を置いてみると「工夫次第で暮らしがちゃんと回るんだ」という感覚を持てました。冷蔵庫に置いておく食材の量の塩梅もつかめましたし、贄川エリアのだいぶ厳しい冬の環境でも、ヒーターや湯たんぽなどを駆使してなんとか過ごせました。<h2>都会の暮らしを手放してみる。より充実させるために</h2>―――助けられたモノ、人、制度を教えてください。まず、先ほどの「おためしナガノ」です。利用するまでは、交通費を毎月自分の財布から出すとなると、どうしても移動に慎重になってしまうところがありました。しかし「おためしナガノ」で交通費の支援を受けられるようになってからは、そうした心理的な制限がゆるみました。「今月あと何回行き来できるかな？」とか、「今回は日帰りだけど、ちょっと行ってみようかな」みたいな、もっと柔軟な関わり方ができるようになりました。その中で、自分にとって無理なく続けられるペースも少しずつ見えてきました。そして、塩尻のコワーキングスペース「スナバ」ですね。地域のプレーヤーと自然に出会える環境が整っています。―――これから２拠点居住に挑戦してみたい方にアドバイスをお願いいたします。当初は塩尻にいても、やっぱり今までに慣れた東京の暮らし方に引っ張られるところがすごくありました。ついコンビニごはんや外食に手が伸びてしまったのは、東京での暮らしをなかなか手放せなくて、それをそのまま続けてしまっていたからです。その解決策としては、自分にとっての理想の暮らしや心地よさをイメージして、暮らしを見直してみることだと思います。この地域で実際に暮らしている人たちや二拠点生活をしているような先輩たちが、どんな暮らしをしているのか見せてもらうのもいいですし、誰かに問いかけてもらって言語化してみるのもいいと思います。シェアハウスみたいな環境で、いろんな人の暮らし方に触れるのはおすすめですね。そういう場があると、暮らし方や働き方を見られます。自分ひとりで考えていても限界があると思います。―――地域の暮らしへの視野が広がりそうですね。たとえば仕事の場面でも、転職者がもともと有能な人だったとしても、新しい会社でうまく機能できないという話はよくあると思います。前の会社でのやり方をそのまま持ち込んでも、うまくいかない。前のやり方を一度手放して、前のやり方と今のやり方をどう取り持つかが大事ですよね。二地域居住でもそれは同じで、東京での暮らしの常識を手放してみないと、地域を楽しめる暮らし方ができないんだと思います。<h2>仕事と暮らし。時間のバランスを整えていきたい</h2>―――現在は贄川エリアから移動して、木曽平沢エリアに住んでいますね。暮らしはいかがでしょうか？旧楢川村に属していた贄川、木曽平沢、奈良井の地域の人々とつながることで、それらのエリアに愛着が湧きました。地域で取り組まれていることにも関心があって、自分も一緒に関わりたいと思っています。ただ、最近は仕事が結構忙しくて、引っ越し後からなかなか地域の人たちと話す余裕がありませんでした。しかし、そんな中でも平沢の人たちが気にかけてくれて「最近元気ですか？」とか「引っ越してもう随分たちましたね」と、ふとしたときに声をかけてくれて、ありがたいなと思います。―――新たな地域へと移り住み、今では月のうち３週間を塩尻で暮らしていますね。ほぼ移住した状態とも言えそうですが、東京の拠点はなぜ残しているのでしょうか？私は20年以上東京で暮らしてきて、東京の便利さや働きやすさを得てきました。その一方で、人の多さや満員電車が苦手なことから、暮らしにくさも感じてしまっています。人口の一極集中にも違和感を覚えています。しかし、だからといって東京を完全に手放すわけではなくて、むしろ東京で感じる課題や違和感が、今の自分の原動力になっているところもあります。東京を変えようとまでは思ってないのですが、私と同じように東京に対して違和感を持っている友人がいたら、東京だけではない選択肢もあることを伝えていきたい気持ちがあるんです。その気持ちを忘れないように東京にも住みながら、どちらのいいところ、悪いところもしっかり把握したうえで、いつかはその選択肢が広まるようなビジネス展開を考えています。最近はこの感情が薄れていきそうで、もうちょっとマメに東京に行かないといけないと思い直したところです。―――今後の暮らしのビジョンを教えてください。東京と塩尻、それぞれの拠点をもう少し暮らしやすいものに整えていきたいと考えています。もっと心地よく過ごせるように、空間に手を入れていけるような暮らし方も理想ですよね。そして今は、ぶどう畑や野菜畑に関わる機会もあって、そういった時間がすごく自分にとって大事だなと感じているので、もう少しそこに関わる時間を意識的につくっていきたいです。どうしても、仕事など抱えているプロジェクトに時間を割いてしまいがちですが、暮らしとのバランスをうまく取っていきたいですね。<figure class="image"><img src="https://assets.st-note.com/img/1755058667-AgezR56NG0UTqSiXwbWaZl8I.png?width=1200" alt="画像"></figure>塩尻で関わっている<a href="https://www.instagram.com/shiojiri.wine.circle/" target="_blank" rel="noopener">「塩尻ワインサークル・コミュニティヴィンヤード」</a>（ぶどう畑）（取材・構成／竹中　唯）

塩尻市

もともと東京に住んでいた長南雅也さんは、2024年4月から毎月塩尻に１週間滞在する2拠点居住をスタートさせました。

その後、塩尻市での暮らし方を見直して、拠点を中心市街地の大門エリアのゲストハウス　→山間地域の贄川エリアのシェアハウス　→木曽平沢エリアのシェアハウスへと移しています。現在は毎月3週間を塩尻、残りの１週間を東京で過ごす生活をしています。

塩尻で感じる暮らしの魅力や、２拠点居住を続ける理由、２拠点居住をスタートする際の心がけ、利用した制度や施設などを伺いました。

長野県

茨城県育ち、長野県塩尻市と東京都府中市で二拠点生活中。
塩尻で越境研修コーディネーター、フルリモートでFinTechサービスのプロダクトマネージャー、組織開発コンサルタント。塩尻での新規事業を検討中。マイパーパスは「もっと人間らしく生きる」

長南　雅也

東京と塩尻市の２拠点居住。暮らしをもっと楽しむために、便利な塩尻駅前→山間部へ　拠点を移した理由

<h2>行くだけでリフレッシュできた、塩尻のおためし期間</h2>―――現在の暮らし方を教えてください。現在の拠点は、塩尻市と東京。基本はは2週間ずつです。仕事は基本的にはリモートなので、対面の仕事があるときは東京へ向かいます。東京の夏は暑いので塩尻には長めに滞在し、反対に、冬は寒いので東京に3週間、塩尻に１週間です。最近は少し東京での仕事が多く塩尻滞在が1週間ほどになっているので、もう少し滞在したいなと思っています。塩尻の拠点は、購入した戸建て住宅です。寒がりなので、断熱性の高さにはこだわりました。<figure class="image"><img src="https://assets.st-note.com/img/1758008529-5hSKJ0j9LHxlsMVRfGC4d2y3.jpg?width=1200" alt="画像"></figure>冬は寒いながらもみんなでスキーへ―――塩尻との関係が始まったきっかけについて、教えてください。塩尻に関心を持ったのは2021年。<a href="https://otameshinagano.com/" target="_blank" rel="noopener">『おためしナガノ』</a>に応募するタイミングでした。『おためしナガノ』とは、長野県内のコワーキングスペースを利用して、長野県を「仕事場」とすることをお試しできる制度です。IT関連事業者を対象に、コワーキングスペース利用料や交通費、宿泊費などの一部補助があります。もともとコロナ禍を期に「暮らしを見直したい」という気持ちが生まれ、最初に利用したのが長野県安曇野にあるシェアハウスでした。「塩尻市にはおもしろいコワーキング兼コミュニティスペースの<a href="https://www.sunaba.org/" target="_blank" rel="noopener">『スナバ』</a>があって面白い人が結構集まっているよ」と教えてもらったことから、「仕事場」の希望市町村を塩尻市にして、おためしナガノに申し込みました。塩尻を選んだ理由として、「特急あずさ」の存在も大きかったかもしれません。JR塩尻駅は、新宿駅からあずさで2時間半。降車してから乗り換えなしで到着できる立地もちょうど良かったんです。6ヶ月間のおためしナガノの終了がせまる頃は「東京に戻ろう」ではなく「どうやったらもう少し塩尻にいられるのだろう」と考えるようになりました。<figure class="image"><img src="https://assets.st-note.com/img/1758008622-3mJvNiVOW09jreMwBnZYau65.jpg?width=1200" alt="画像"></figure><figure class="image"><img src="https://assets.st-note.com/img/1758008634-OhgrRWLMvkYdXcHJZUKlB4ut.jpg?width=1200" alt="画像"></figure>2拠点生活の出発点になった安曇野のシェアハウスからの風景<h2>家購入を後押ししたのは、塩尻の暮らしの豊かさ</h2>―――おためしナガノの終了後も、2拠点居住を続けようと思えたのは、なぜでしょうか？塩尻に行くと、環境をガラッと変えられたのが魅力的でした。電車から降りた途端に、空気は美味しくて、星はきれい。ブドウ畑が広がり、その向こうには北アルプスが見えます。それだけでリフレッシュできました。スナバで多くの友達もできて、人とのつながりが生まれたのも大きいですね。帰る度に友人たちと遊んでます。ほかにも地元企業の案件を任せてもらえたので、人とのつながりを超えた仕事のつながりも地域で持てたのが良かったと思います。<figure class="image"><img src="https://assets.st-note.com/img/1758008700-V9ze1EJ84jk2CwyguNXrLMmo.jpg?width=1200" alt="画像"></figure>地元のブドウとワインとお肉で友達とホームパーティー――おためしナガノを終えたあと、塩尻に滞在するために何か準備をしましたか？おためしナガノでは、塩尻の滞在には賃貸マンションを契約していました。しかし、もう少し地方暮らしを満喫できる一軒家がいいなと思い、次なる塩尻の拠点を探しました。条件として挙げたのは「寒い塩尻でも室内は暖かい、断熱性が高い家」。そして先述した通り「あずさから乗り換える必要のない、塩尻駅近くの立地」。しかし、思った通りの賃貸住宅は見つかりませんでした。一方で分かってきたのが、東京と比べて家の値段がものすごく安いことです。東京で払っている毎月の賃料より、はるかに安い返済額でも家を買えることに気づいて、建売住宅を購入することにしました。―――住宅購入を決意するほど、塩尻の暮らしに魅力を感じられたのでしょうか？食べ物の豊かさを知ってしまったことと一緒に楽しんでくれる友人の存在が大きいと思います。食べ物がとても美味しいんです。野菜や果物の味が、東京で食べていたものとは全然違います。たとえばキュウリやトマトは味が濃くて100円でも豊かさを感じます。それを使って生み出されるローカルな飲食店も、おいしいところばかり。ふらっと入れるのに本格的な味を楽しめる、そしてその美味しさを友人たちと共有しながら、お店の方からお話しも聞いたりして満喫できる。その時点でも幸せなのですが、果物の美味しさはさらに格別です。私はブドウが大好きなので、JA（農業協同組合）の直売所は最高ですね。見たことがないブドウがたくさん並んでいるんです。まだ東京では入手が難しい品種や、新しい品種もあるので、食べ比べが楽しいです。お気に入りは「クインニーナ」。赤色の大粒のブドウで、果肉はしっかり、糖度は高くて酸味はおだやかな味わいです。東京にいたときには知りませんでした。<figure class="image"><img src="https://assets.st-note.com/img/1758008783-AxndubWmTJsEiDXgRN0rpfoe.jpg" alt="画像"></figure>ブドウも梨も味が濃くてとっても美味しい―――ブドウが並んでいるJA（農業協同組合）の直売所を知れて良かったですね。住んでいる人が知っている、普段の生活を豊かにできるような情報は、最初に知っておけるといいですね。「JAの直売所に果物がたくさん並んでいる」や、「あのお肉屋さんが美味しい」「あの店は、地元のワインが充実している」だとか。観光客とはニーズが違うので、表面的には出てきません。地域の方に聞いたり、自分で開拓したりして、積極的に情報収集しています。―――塩尻滞在を楽しんでいるようですが、反対に、大変だと思うことはありますか？家を長く空けてしまうことへの不安です。特に冬は、浴槽に水を張ってから家を空けないと凍ってしまいますし、雪が降れば雪かきができなくなりますね。あとは寒すぎて、車のバッテリーが上がってしまったことがありました。<h2>2拠点を続けるためには？　地域で仕事を得ることでコストを補う</h2>―――差し支えのない範囲で、前後のライフコストの変化を教えていただけますか？最初に決めたことが「支出と収入のバランスが崩れたら撤退する」ということ。2拠点生活によって、出費はどうしても増えますので、塩尻の生活する分を、副業で補おうと思いました。結果的に収支バランスは大きくは変わっていません。2拠点生活で増えたコストの分、収入を増やしていきました。副業では、キャリアコンサルタントの資格を生かした仕事を依頼いただくことが多く、「地域の事業者の皆さんに今までのスキル・経験を還元する」がテーマです。 メインクライアントのひとつは<a href="https://www.shiojiri.or.jp/" target="_blank" rel="noopener">塩尻商工会議所</a>。商工会議所に相談のあった企業へ「人と組織の課題解決」の専門家として派遣されています。もうひとつは塩尻振興公社によって運営されている<a href="https://kado.shiojiri.com/" target="_blank" rel="noopener">「KADO」</a>。リーダー層への伴走支援（コーチングのようなイメージ）や日常の業務での困りごとのご相談など様々なジャンルのお話しをさせてもらっています。―――仕事やスナバで、さまざまな企業や人と関わっていますね。地域の見え方は広がりましたか？地域イベントを企画している友人も多いので、通常の参加者以上に興味を持てるので嬉しいですね。たとえば秋に開催される<a href="https://localnightpicnic.com/" target="_blank" rel="noopener">ローカルナイトピクニック</a>は、今年も楽しみです。一方で、地域のリアルを肌で感じられるようになりました。東京では見えなかった東京一極集中、働き手の減少、地方の人口減少、収入格差など。解像度がとても上がって、課題について自分ごととして捉えるようにもなりました。<figure class="image"><img src="https://assets.st-note.com/img/1758008852-zQyosjU6XYT7DntpCmEwikLe.jpg" alt="画像"></figure>ローカルナイトピクニックでは友人の出店をお手伝い<h2>良いとこ取りの2拠点生活。自分のやりたいことに素直な生活</h2>―――2拠点生活の良さを、改めて教えてください。2拠点生活は、東京と塩尻の良いとこ取りだと思います。夏は塩尻の涼しい場所で過ごし、寒い時期は東京で。塩尻では癒されて、東京では刺激を得られるという。暮らしの理想が叶えられていると思います。自分の「したい」「やりたい」に素直な生活ですね。東京だけではどうしても叶えきれないものがあります。自然の豊かさも、人との関わりも、塩尻だからこそ叶うものがあります。<figure class="image"><img src="https://assets.st-note.com/img/1758008929-X1oYPDAuUwEZkvb8jWI90ql6.jpg" alt="画像"></figure>秋の霧訪山の山頂からの風景―――2拠点居住が向いているのは、どのような人だと思いますか？&nbsp;移動を楽しめる人ですね。移動する時間も無駄だと思わずに、移動が楽しいと思える人。それがないと２拠点居住をし続けるは難しいと思います。私はあずさからの車窓がどんどん変わっていくのを楽しめていますし、心地よい睡眠時間として過ごしています。あとは興味や関心に突き進むエネルギーが高い、かつ飽き性なひと。1ヶ所では満たしきれない、いろんな興味や関心を持ち続けて、好奇心のままに突き進める人です。―――塩尻の2拠点居住を希望する方に、アドバイスはありますか？1週間でも生活してみることをおすすめします。それぞれの人が思い描く2拠点生活や、田舎暮らしの理想があると思うのですが、そこと居住先の地域が一致しているのか、異なるのか、理解するのが大事だと思います。塩尻は畑が広がる地域もある一方で、塩尻駅前のお店が多い地域もあります。畑や田んぼに囲まれたような田舎暮らしのイメージが強いとギャップがあると思います。あとは交通費や居住費などがどのくらいかかるのか、シミュレーションしてみるといいと思います。続けていくことを想定すると、結構なコストがかかるのが分かります。―――今後のビジョンを教えてください。今は仕事の関係で、塩尻の滞在日が少なくなっています。忙しい時期が過ぎたら、やっぱり東京と塩尻の2週間ごとの2拠点生活に戻したいですね。あとは、長いスパンで考えると、もう少し田舎のほうで拠点が欲しいと思います。交通の便が悪くても住環境が良いところ。畑や、山の景色がリビングから見えるところをイメージしています。今後も2拠点居住をやめる予定はありません。仕事のバランスを見ながら、東京と塩尻の2拠点を続けていくのが理想のスタイルです。（取材・構成／竹中　唯）

もともと東京に住んでいた北山乃理子さんは、2021年から塩尻と東京の2拠点居住をスタートさせました。仕事のベースを東京におきながら、月の半分を塩尻市で過ごすのが、定番の滞在スタイル。2022年には、塩尻市に戸建て住宅も購入しました。

「塩尻ではリフレッシュと避暑を目的に滞在し、東京では刺激と仕事を得る。自分のやりたいことに素直な暮らしを叶えられていると思います。」と北山さん。

塩尻で感じる暮らしの魅力や、ライフコストの変化、２拠点居住をスタートする際の心がけなどを伺いました。

大阪府生まれ。LiMiNALコンサルティング会社　代表取締役社長。キャリアコンサルタント。事業会社とコンサルティングファームで事業開発から人材育成まで幅広い経験を積む。
好きなものは、ブドウ。趣味は、自然の中でゆっくりした時間を過ごすこと。

塩尻市

塩尻市の移住体験談一覧：2件

東京と塩尻市の２拠点居住。暮らしをもっと楽しむために、便利な塩尻駅前→山間部へ　拠点を移した理由

2拠点の良いとこ取り。家を購入してまで2拠点居住を続けようと思えた、塩尻の暮らし

東京と塩尻市の２拠点居住。暮らしをもっと楽しむために、便利な塩尻駅前→山間部へ 拠点を移した理由

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