移住者プロフィール
伊藤 仁嗣さん
出身地:富山県砺波市、現住所:富山県砺波市、Uターン移住者、株式会社「センティア」代表
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家業を継いだ経緯をお聞かせください
伊藤 仁嗣さん(以下、伊藤):大学進学のために上京し、経済学を学んでいました。大学3年になると、ゼミに所属する必要がありますが、ゼミと就職先は直結しています。結局、大学2年の時には、既に「この先どうするか」を考えねばなりませんでした。
そこで、1年間大学を休学し、実家の農業を手伝うことにしたんです。自分の家が百姓であることは分かっていましたが、それまではあまり「継ぐ」という意識はありませんでした。正直、家業の仕事がどんなものか、知らなかったので、この機会に知ろうと思いました。年間を通して作業に関わり、全体の『経営』という視点からも、家業を捉え直すきっかけになりました。実際に働いてみると、辛いことも、楽しいことも、たくさんあることに気付きました。
どんな仕事でも、良い面と悪い面、両方ある。「大企業で働いても、小さな会社で働いても、結局同じなのではないか」と思ったんです。それならば、自分のバックグラウンドである農業を継いで、その中でいろんな挑戦をしていこうと思いました。
農業を生業とする決断をしてからのことをお聞かせください
伊藤:農家になることを決めてからは、チューリップ修行のためオランダに渡りました。オランダの営業マンが家に来ていたのを、小さい頃から見てきたので、「チューリップ農家になる=オランダに行く」というのは、自分にとっては、ごく当たり前の決断でした。1年間の外国研修が多いそうですが、2年間研修を受けました。1年だけだと、農業の一通りの体験しかできません。
2年目からは、前年と比べながら、自分で考えて動くことができるようになります。何より、受け入れてもらった組織・会社とのつながり以上に、組織外のつながりや、生産者さんとのつながりも、強くなりました。
帰国後、Uターン移住してからのことをお聞かせください
伊藤:帰国後、砺波市に戻り、今まで家族経営だった農業を会社化しました。約2年間は、父の個人事業のままでしたが、2008年の秋に、「センティア」を立ち上げて、自らが代表となりました。従業員も雇い、生産性と効率を上げ、業績を伸ばすことに注力しましたね。
4月には、球根採取用のチューリップを植えます。5月は田植え、6月は球根の掘り取り、7月は球根の出荷、8月は稲の生育を見守り、9月は稲刈りです。10月からは、切り花用チューリップの球根の植え込みを始め、11月から翌年3月までは、切り花の育成と出荷をします。1年を通じて、チューリップと米づくりに没頭しています。チューリップの球根と米を中心にしながらも、最近では冬場がピークの切り花にも力をいれています。
砺波での暮らしについてお聞かせください
伊藤:砺波は、お互いに「適度な距離感を保っている地域」だと思います。家や家族、家業を最優先して、一生懸命働き、蓄えをしてきた人たちが多いように思います。他力本願な人が少ないのかもしれませんね。さらに、家と家が離れていることで、「プライバシーが守られている」のも、この地域の住まいの特徴だと思います。どこかゆったりとした人々が多いのは、この土地の豊かさのおかげかもしれません。
砺波に移住して農業をしたい方へメッセージをお願いします
伊藤:「農業」と一言で言っても、「家業」ですから、家の数だけやり方があります。もし、移住して、農家をやりたいと思っているなら、すでに抱いている「農業」というイメージに縛られすぎない方がいいと思います。家と家の距離がある分、人と人の間にも、独特の距離感があるような気がします。ニュートラルな感覚が大事ですね。昔の米づくりは、地域ぐるみで行っていました。
必要なときに、地域のみんなで作業をしたり、祭りの準備を一緒にしたりしてきたので、何かあるときの「地域のつながり」は本当に頼もしいものです。地域のことを意識しながらも、つかずはなれずの適度な距離感と、ニュートラルな感覚があれば、きっと楽しい散居村暮らしができるのではないでしょうか。