移住するきっかけを教えてください。
北野阿貴さん(以下、北野):普通の女子大生だった私が農業に興味を持ったのは、ファームステイで畑を手伝ったのがきっかけです。その面白さにとりつかれましたが、大学の就職先に農業はありませんでした。
「自営しかない」と考えましたが、農業って金銭面の問題だけじゃなくて、農地・納屋を貸してくれる方がいないと始められないんですね。夢を見据えて、10年間は会社員として働き、資金を貯めました。
34歳で農業大学校を卒業し、羽曳野市碓井(うすい)地区の農地を使用させてもらえることになりました。実は、ほかの市も候補に挙がったのですが、「嫁に来たらいいんちゃうの」など、女性の新規就農者の受け入れに理解が乏しかったのです。
前向きに考えてくれたのは、羽曳野市だけでした。そして、市の産業振興課で東さんをご紹介いただきました。
移住後は何の作物を育てているのですか?
北野:羽曳野市が農家にとって魅力的なのは、特産品があることです。私が力を注いでいる「碓井豌豆」は「なにわの伝統野菜」に選ばれていて、農家さんたちが種を受け継いできた大切な作物です。
また、いちじくもありますし、私は育てていませんがぶどう栽培も盛んです。
近くに指導者がいて、面倒を見てくれる。そこから輪が広がり今では多くの方々が惜しまずにノウハウを教えてくれます。
この地で自分が前例となり、後に続く就農者の道を少しでも楽にするのが、街と周りの方々への恩返しだと日々働いています。ゆくゆくは子どもたちにこの楽しさを伝えて、「農業ってかっこいい!」と憧れの職業へと広めていきたいですね。
碓井豌豆は伝統を受け継いだ種や作り方で収穫期が約1ヶ月と短く、食べたことがない人もいます。今後は、加工品としてもっと広める計画を立てています。
敬愛する師匠・東さんからの北野さんへのメッセージ
東さん(以下、東):2015年、市から北野さんを預かってほしいとの要望を受けました。自分は若い人が入ると地域が良くなると思っていますが、先祖代々受け継ぐ農地を安々と貸す人はいないのが現実でした。
なので、ほかの農家さんとの橋渡し役も担っています。北野さんは農業が好きだから覚えるのが早くて、こちらもうれしい!自分に分かることはすべて教えるので、これからも伝統野菜作りを続けてほしいですね。