移住者プロフィール
渡壁 沙織 さん
出身地:山口県山口市、前住所:東京都、現住所:山口県山口市、職業:和菓子職人
目次
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山口に移住したきっかけを教えてください。
渡壁沙織さん(以下、渡壁):山口市秋穂二島出身で、高校までここで育ちました。高校卒業後、東京の菓子専門学校に入学して、和菓子製造を専攻しました。
一人暮らしに憧れがあったのと、中学生の時からその学校に行きたかったので、夢が実現して嬉しかったです。東京はどこへ行っても、駅ごとに街がそれぞれの特色を持っていて、個性があってとっても楽しかったです。
専門学校を卒業後は、老舗の和菓子メーカーに就職しました。渋谷にある店舗で製造や販売を担当していたのですが、そのお店が閉店してしまったんです。
その時に、両親やおじいちゃんおばあちゃんから、寂しいから帰って来て欲しいと言われたんですね。そうは言っても、4年半の東京での暮らしは楽しかったですし、離れてしまうのは寂しい気持ちがありました。
でも、家族や大好きな犬の「ころ」がもう高齢だったこともあり「ころ」に会いたい気持ちも強くて。3人兄弟の真ん中ですから、正直なところ「帰らなくても良いのかな」「でもいつかは帰るのかな」と思ったり。少し悩みました。
現在の状況と移住後の感想を教えてください。
渡壁:帰って来た時には、まさか自分で事業を始めるとは思っていなかったので、和菓子屋さんに就職するつもりで求人情報を見ていました。
その時に、私が和菓子屋さんで働いていたことを知っていた、山口県央商工会の方から、「秋穂饅頭」の製造事業を承継しないかというお話をいただいたんです。就職するつもりでしたから、お菓子を作る加工場を作ったり、それに対する補助金があるなんてことも全く知らなかったのですが、父をはじめ、家族が全面的に支えてくれて、実現に向けて進んでいきました。
「秋穂饅頭」は、地域の皆さんにとても愛されているお菓子ですから、その味や食感を失わないよう、再現するのには苦労しました。もともと「秋穂饅頭」を製造していた田村秋月堂さんが、ご高齢で事業を続けられなくなって、私がその製造事業を引き継ぐことになりましたが、レシピは残っていなかったので、餡もお饅頭の皮も、手探りで作っては試食を繰り返しました。
地域おこし協力隊の西倉さんにも、この時にはとてもお世話になりました。お饅頭に押されている焼き印のコテや、餡を練る機械は田村さんから引き継いだものを使わせていただくことが出来たのも良かったです。
今はおかげさまでたくさんの方に喜んでいただいていて、多い時は一日に2,000個くらい売れる時もあります。ゴールデンウィークに行われる、「秋穂八十八ヶ所お大師参り」のお接待用にもご注文をいただきまして、その時にはもっと数が増えそうで、今からちょっとドキドキしています。
田村秋月堂さんから引き継いだ型が30個あるのですが、それでは足りなくなってきていて、新しく型を注文しているところです。連休に間に合うと良いのですが。
Uターンにあたり不安だったことは?実際はいかがでしたか?
渡壁:地元なので、不安は特にありませんでした。戻って改めて、地域の方との繋がりが深いことに気付きました。
お店を始めたということもあるのでしょうが、私のことを知ってくださっている方がたくさんいらして、「(実家である)山世水産のところの子のお店だから買いに来たよ」と言ってくださる方もいらっしゃいます。
山口の印象と魅力を教えてください。
渡壁:山口には何にもないと地元の人はよく言いますが、良いところもあります。私は都会が好きだったから、正直なところ寂しい気持ちもあります。
でも、やっぱり地元なのでほっとします。お店を始めてからは、ここで頑張りたいという気持ちが強くなりました。
山口を出て戸惑ったことはありましたか?
渡壁:戸惑いではないかもしれませんが、東京の友達の中で山口出身者は私だけだったので、「山口ってどこにあるの?」と聞かれました。あとは方言のことも。”ちゃ”とか”ちょる”とかがかわいいと言ってもらえましたね。
Uターンしてよかったですか?
渡壁:地元にいると、知っている人ばかりに囲まれていたのが、東京では知らない人ばかり。その中で一から人間関係を築いていかなければならないので、自分から行動しないといけません。
どちらかというと内気な性格なので、最初はドキドキしましたが、自分から話しかけて仲良くなって、友達が増えていくのは嬉しかったです。コミュニケーションの取り方を学びました。
帰ってきてからも、東京でできた友達が山口に遊びに来てくれるのが、とても嬉しいです。
今後の展望を教えてください。
渡壁:「秋穂饅頭」がもう少し落ち着いて来たら、自分で考えたお菓子を出していきたいと思っています。西倉さんにも手伝ってもらって、どんな商品が喜ばれるのかを考えているところです。
農家さんもとても積極的で、材料の提案をしてくださるので、みんなで連携して商品を作っていきたいと思っています。
移住を考えている人・移住してきた人にアドバイスをお願いします。
渡壁:市外に進学で出ていった友達は、まだあまり帰って来ていないようです。若い人が少ないので、帰って来ると地域全体で受け入れてくれます。子どもも少ないから、結婚して家族を連れて帰って来て欲しいですね。
起業したから特になのかもしれませんが、商工会や市役所の方々のサポートも感じますし、地域全体で受け入れてくれているのを実感しています。
出典: 先輩移住者の声 渡壁沙織さん