移住者プロフィール
村岡 健太さん
移住時期
2016年4月
出身地:広島県広島市、前住所:愛知県名古屋市、職業:Wantedly, Inc. / Public Affairs 地方創生責任者
目次
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地方移住検討者の「会社が見つからない問題」
自分にできる仕事は地方にあるのだろうかー。
地方でやりがいのある仕事が見つかるのだろうかー。
地方移住は、住む環境が変わるだけでなく、働く環境も変わる。ビジネスパーソンならば、それがこれからのキャリアにも影響を与えるかもしれないと、心配になる人もいるだろう。
村岡さん自身、名古屋市で働きながら広島への転職を検討していた時に「働ける会社がない(見つからない)」という地方企業の課題を感じたと語る。
名古屋市で働いて2年経った頃、お子様が生まれたことをきっかけに家族で地元広島へ戻ることを考え始めた村岡さん。
「私も妻も広島出身だったので、このまま名古屋市で暮らすこともないなと思ったんですよ」
その後、地元での働き口を探すべくいくつかの人材紹介会社に登録をして、広島の企業を探したそうだ。
しかし、これまで地元企業への就職活動をしたこともなければ、広島に多い製造業の会社でキャリアを歩みたいと思っていたわけでもなかった村岡さん。当時はフルリモートでできる仕事もなく、自分のやりたい仕事ができる会社探しは難航したそうだ。
「当時、転職エージェントの担当者に『村岡さんが働ける会社はないですね』って言われましたね。私のような人材は地方企業からのニーズがないとはっきりと言われてしまって...」
リモートワークが普及する以前の地方転職のハードルの高さを赤裸々に語ってくれた。そんな状況だったが、家族とともに広島への移住を諦めなかった村岡さん。
当時働いていた会社の名古屋支社から広島支社へ、強い異動希望を出したそうだ。
「家族も広島移住を希望していたので、なりふり構わず会社と相談をしてなんとか異動させてもらいました(笑)」
リモートワークが浸透して働き方も柔軟になった今、多様な働き方をはじめ、地方企業への転職や社内異動の申し立てなど、幅広く可能性を模索して移住を検討することが大切なことが分かる。
やりがいを感じた広島の企業と人材をつなぐ仕事
広島の支社でコンサルティングの仕事を進めていた頃、培ってきた人脈を通じて広島県庁への出向のキャリアを歩むことになった村岡さん。当時30代と若くして内閣府のプロフェッショナル人材事業に飛び込んだ。
県庁では、広島の企業の経営者に電話でアポイントメントを取り、経営課題の整理をしながら最適な人材紹介会社へ取り次ぐ仕事をされていたそうだ。
「将来有望な広島の企業に、良い人材を紹介できて、お互いWin-Winの関係で成長していく姿を見ていくのは最高でしたね」
とてもやりがいのある仕事だったと振り返る村岡さん。
また、ウーバーイーツや出前館などと並ぶフードデリバリーサービス「Wolt(ウォルト)」の広島誘致に成功したことも嬉しかったと話してくれた。フィンランド発祥のWoltは、当時日本進出の足がかりとなる場所を探していたそうだ。村岡さんはWoltの担当者に広島の飲食店を紹介して回り、関係を紡ぐ手助けに奔走した。
その後、晴れて広島からフードデリバリーサービス「Wolt」がスタート。広島県庁での経験を経て、地方企業の人材事情について課題感を感じた村岡さんは、その後ウォンテッドリー株式会社へ入社し、人材採用のキャリアへと活躍の場を移したのだ。
現在は地方創生責任者として、地方企業の採用力を向上させるべく奮闘している。
地方企業に伝えたい「採用力」の重要性
広島県庁の出向を通して、“地方企業存続の危機感”を感じたと話す村岡さん。
地方企業には、確かな技術力や地元のニーズに応える営業力のある中小企業がたくさんある。しかし今後も中長期的に成長しつづけるためには「継続的な人材採用」が不可欠だと語る。
「地方に良い企業はたくさんあるのに、『採用力』がない会社がたくさんあります。人事・総務・経理を全て担当者が兼任されていて、人材採用まで手が回っていないケースが多くあるのです。今後地方では『採用力』がある会社が生き残るはずです」
人材採用がうまくいっていない企業でも『見る目がある人なら、うちの会社に募集を出さなくても来てくれるからいいんだ』と、人材採用に向けて行動を起こさない企業もあるのだとか。
「優秀な人材を採用したいはずなのに、中小企業の多くは広島に転職を考える人を獲得する『情報発信』を全然していないという課題があります」
村岡さんの語る「採用力」とは、自社の魅力をしっかりと転職検討者に届ける発信力や共感を得る力だそうだ。
地方転職検討者の「会社が見つからない問題」が、地方企業の人材採用のスタンスとつながっていることが村岡さんのお話から伺えた。
「都会」と「人」に興味があった学生時代
会社を支える「人」の採用に責任を持ち、それを生業としている村岡さん。
会社や事業に対する深い理解が求められ、一方では、目の前にいる「人」の相談にのるなど、人の心に寄りそう仕事である。
鋭い観察力や洞察力を持ち、相手の求めているものを与えたりする“気配り”に長けているからこそ務まる業務なのだろう。取材中、終始軽快な言葉のキャッチボールで話が弾み、愛嬌のある笑顔と人懐っこい人柄からは、良い意味で「人たらし」の印象を受けた。
そんな村岡さんは、幼い頃から“人”に興味を持っており、人と話すことが好きだったのだそう。一方で、小学校低学年の頃は「自分の感情をどう表現したらいいか分からない」こともあったのだとか。
「好きな女の子の筆箱を隠して、嫌われるようなこともありましたね(笑)」
いろいろな失敗を重ねながらも、途中から気持ちの伝え方が上手になってきたことで、より人と会話することが好きになっていったそうだ。
学生時代は広島の中高一貫の男子校で学生生活を送り、大学進学を機に地元広島を離れたという。
「当時は都会に出たいという気持ちが強かったです。進学先として広島大学も考えましたが、かなり田舎にキャンパスがあったので...。都会に行きたくて大阪の大学へ進学しました」
大阪大学では、基礎工学部を経て生命機能研究科に進み「脳科学」について研究したのだそう。
「僕は人間が好きだったので、ヒト=脳だと考えて、大学院まで勉強していました」
学生時代から”人に対する関心度”が高い村岡さんだからこそ、現在の人材事業も積極的にお仕事ができているのだろう。
「モノよりヒトが好き」専門商社での仕事で気付けた人や地域への興味
大学卒業後に専門商社へ入社した村岡さんは、商品開発の部署に配属された。しかしながら、自身の興味関心とは違う分野の仕事であることに違和感を感じる日々を送っていたという。
そんな現状を打開すべく、当時会社で募集されていた中国への駐在プログラムに志願。半年間の海外生活で価値観が大きく変わったと話す。
「海外に半年間駐在してみて感じたのは、”安全・安心の大切さ”です。
海外なので食べるものは安全なのか?近づいてくる人は怪しい人ではないか?など、とにかく気を遣う時間も多かったですね。アテンドしてくれた人と一緒にお腹も壊しました(笑)」
身をもって日本と海外との違いを感じる体験を経て、改めて日本の素晴らしさを感じたそうだ。中国での仕事を経験した今、できるだけ日本に居たいと話す。
「世間的には『グローバル』に目を向けた方が良いような話があると思いますけど、海外で半年間過ごしてみて、逆に『ローカル(日本)』を強く意識するようになりました」
一方で、自身のキャリアについても向き合うようになったという。
「“モノ”に向き合うより、“人”と接する仕事の方がやっぱり楽しいなと思いました。有形商品を取り扱う会社で営業をしていると、結局”モノ”のスペックや値引きの競争になりがちで、自分の付加価値が出せないなと感じるようになりました」
現在は地方企業の人材支援をしている村岡さんだが、この海外経験があったからこそ、ローカル(日本や地方)企業に寄り添う気持ちが強くなった。
そして、小さい頃から人への関心が高かった村岡さんは、「モノの価値に左右される仕事よりも、自分の付加価値が出せるような仕事がしたい」と感じたことが、現在の仕事に結びついたのだろう。
地方転職での会社選びのコツ
〜人材に興味がある会社を見抜く方法〜
地方企業の人材採用の仕事をする村岡さんに、移住に伴って転職を検討されている方に向けて「地方転職での会社選びのコツ」を教えてもらった。
「転職活動を通じて、『その会社が人に興味があるのか』を見極めることが大切です。
“自社のビジョンや成長戦略を語れるかどうか”がポイントです。意外と語れない経営者・採用担当者も多いんですよね。
そういう会社は自社の人材に対してもそれらを語ることがなく、トップダウンで社内の風通しが良くないことも多いので、お互い良いマッチングにならないことが多いです」
会社のトップ層が企業の理念を社員に浸透させるには、社員への働きかけが必須である。自分の活躍の場を開拓するには、会社の重要な経営資源である「ヒト」に重きをおいているか、その企業のスタンスをしっかりと見極めるべきだろう。
また、地方ならではの注意点もあるそうだ。
「地方企業にはオーナー企業も多いので、上位の役職で採用された人材は、経営層とそりが合わなくなった場合に閉塞感を感じることがあります」
創業者やその家族が経営層に多く在籍しているのがオーナー企業の特徴だ。
会社の方針や事業戦略を話し合う場では、オーナー側の意見が色濃く反映することも多いのだろう。
そういったリスクを避けるためには、“その会社が理念を発信した上で人材を採用しているか、理念を基に事業経営を行っているか”を確認することが重要だそうだ。
「条件面だけで会社を選ばないことですね。そういう会社は採用においても人材側の条件やスペックしか見ていないことも多いので...。入社後に期待通りの成果が早期に出せなかった場合、働きづらくなってしまうこともあります」
地方企業への転職時は、会社側の人材への関心度を見極める力が大切なのだろう。
応募企業や求人の理解が深まる「カジュアル面談」
地方でやりがいのある仕事や活躍できる企業を探すには、“カジュアル”に話をすることが重要だと語る村岡さん。
企業の担当者と形式的で本音と建前を使い分けるような面接では、人を大事にした会社を見分けることは難しいそうだ。では、どのように地方企業を見極めていけば良いのだろうか。そして良い人材マッチングをするためには、どう進めていけばよいのだろうか。
「Wantedlyでは『カジュアル面談』の場を提供し、採用に繋げていくプラットフォームなので、ぜひ活用してほしいですね」
カジュアル面談とは、転職希望者と企業が気軽にお互いのことを知れる場であり、親交を深めてお互いを知ることを目的とするため、通常の採用面接よりもリラックスした雰囲気のなかで行われる。
このカジュアル面談を通して、企業のスタンスや人への関心を知りながら、お互い良いマッチングとなりそうかを検討すると良いだろう。
カジュアル面談を通して活躍できる企業を探せるWantedlyのサービスはこちら。
地方で働く価値とは?都会にない経験値とチャンスの多さ
「地方は活躍の場が少ないと思われるかもしれないですけど、逆に地方の方がチャンスが広がっている。人材が溢れている都市よりも間違いなく目立ちます。
そして大きな仕事や首都圏では滅多に訪れないチャンスが回ってきて、抜擢されやすいんですよ」
前職で名古屋支社から広島支社へ籍を移し、その後広島県庁へのプロフェッショナル人材事業のポストに抜擢された村岡さん。
地方の中小企業やスタートアップで働くことは『言葉の通じる海外駐在のようだ』と語る。いろいろと整っていないことも多いので、良い意味で何でもやる必要がある。
活躍の場がそこにあり、ゼロから物事を立ち上げる力やマネジメント力が養われ、結果的に重宝される人材になれる。
「そういう場所では”やり甲斐”を感じられます」
その力強い言葉は、ご自身の実体験から出てくるまっすぐな言葉であり、「地方でも魅力的なキャリアを積み上げられる可能性」を語る上で説得力がある。
- 会社で裁量の大きい仕事を任せてもらえない
- 挑戦してみたい仕事のポストが空かない
- もっと幅広く経験が積める仕事がしてみたい
このようなモヤモヤを抱えている方や、今後社会から求められる人材になるためにはどうすれば良いか悩んでいる方の背中を優しく押すだろう。