移住者プロフィール
久場勝弘さん
所在地:愛媛県西予市、業種:民宿・アトリエ、家の築年数:100年以上
目次
INDEX
- どのような経緯で空き家に住むことを決意しましたか?
- 空き家を見つけるために利用した手段やサービスについて教えてください。
- 入居前の空き家の状態や実施した修繕、リフォームの内容について教えてください。
- 支援制度を活用した場合は詳細を教えてください。
- 空き家暮らしを始めてからの日常生活の変化や感じたことを教えてください。
- 空き家暮らしで困ったこと、苦労したことについて教えてください。
- 地域の人々との交流や関係性の構築について大切だと感じることを教えてください
- 今後も空き家での生活を続けたいか、その理由について教えてください
- 地域の魅力について教えてください。
- 空き家暮らしを検討中の方に向けてアドバイスやメッセージをお願いします。
どのような経緯で空き家に住むことを決意しましたか?
アフリカ・カメルーンでの滞在経験を通じて、自分のライフスタイルを見直したいと思うようになったことがきっかけです。その時、頭に浮かんだ理想の暮らしは、古民家でハンドメイドのアトリエを開くというものでした。
当時は神戸市に住んでいて、神戸も好きな街でしたが、都市部から離れた場所での生活に挑戦したいという気持ちが芽生えました。そこで、九州を中心に古民家を探し、知り合いのつてを頼って古民家探しの旅をしました。
その中で、友人が住んでいる愛媛県西予市に立ち寄り、空き家を2件紹介してもらいました。1軒目は家賃が安かったものの、住むためには大幅な改修が必要で断念。2軒目は少し家賃が高めでしたが、庭から見える田園風景が美しく、間取りも広々としていて、訪れた瞬間に「ここに住みたい」と思わず口にしてしまったんです。
その後、九州も回りましたが、心に響く物件には出会えず、最終的に西予市の友人のサポートもあり、地域おこし協力隊として今の空き家に住むことができました。
空き家を見つけるために利用した手段やサービスについて教えてください。
基本的には、各市町の空き家バンクを利用して物件を探していました。しかし、良さそうな物件が見つかっても、実際に足を運んで確認するまでの決断には至らないことが多かったです。
当時、空き家に関する知識がほとんどなかったため、今振り返るとインターネットで見つけた物件だけでは上手くいかなかったのではないかと思います。最終的には、空き家を本格的に探し始めた際、各地に住む友人たちに相談し、地元のネットワークを活用して物件を紹介してもらう方法に切り替えました。
入居前の空き家の状態や実施した修繕、リフォームの内容について教えてください。
入居前の空き家は、瓦や内装ともに非常に良い状態でした。前の住民が残していた家具などもある程度搬出されていたため、私の荷物をスムーズに搬入することができました。
入居後の最初の1週間は、徹底的な掃除に費やしました。動物臭やトイレの匂いが気になったので、天井裏やトイレなど、家全体を隅々まで拭き掃除しました。また、温水器が壊れていたため、大家さんに修理してもらうまでの2週間は少し寒い思いをしましたが(笑)、その後は快適に過ごせるようになりました。
入居後は、納屋をハンドメイドのアトリエとして活用し、別宅は古民家民宿に改装しました。改装は基本的に自分たちでできることはすべて行い、原状復帰できるように配慮しながら進めました。躯体(※くたい)には手を加えず、木材を工夫して使い、見た目を整えました。
主な改修内容は次の通りです。
- 天井をスダレ、竹でデコレーション
- 内壁の板張り、棚の製作
- 納屋のカウンター、棚づくり、床張り
- 民宿の畳の表替え、障子のアフリカ布デコレーション
- エアコンの設置
- 照明器具の交換
※「躯体」(くたい)とは、建築物全体を構造的に支える骨組み部分のことで、構造体のことを意味する。
支援制度を活用した場合は詳細を教えてください。
改装については、基本的に実費でしたので、支援制度は使っていません。使わせていただいたのは、地域おこし協力隊の活動経費です。
空き家暮らしを始めてからの日常生活の変化や感じたことを教えてください。
空き家や田舎での生活を始めてから、考えることへのストレスが大幅に減ったと感じています。田舎は人もお店も少なく、どこに行くかも自然と限られてくるため、生活がとてもシンプルになりました。
また、家が密集していないので、圧迫感がなく、玄関を出れば広がる美しい景色に癒されます。畑で土に触れ、天候の変化を肌で感じながら、自然と共に暮らしている実感があります。
特に楽しいのは、空き家をDIYや改修している時間です。どうすれば自分の理想の空間に近づけるかを考えながら作業するのが非常に充実しています。周りや他人に影響されることなく、今の自分がやりたいことを自由に実行できている点が、とても心地良いと感じています。
空き家暮らしで困ったこと、苦労したことについて教えてください。
広大な庭や山の管理がとても大変です。今では徐々に慣れてきましたが、カビ問題や虫には悩まされています。とくにアリ、ムカデが厄介です。
さらに、昔の家に関する知識がなかったため、建具や畳を一度外して掃除しようとすると、ぴったりと元に戻せなくなることや、砂壁のメンテナンスや外壁のひび割れの修理方法も分からず、対処に苦労しました。
ただ一番大変だったのは、大家さんとのやり取りだったと思います。賃貸なので、どこまで改修をしていいか、僕のイメージを伝えてもなかなか納得してもらえず、了解を得るのに相当時間が必要でした。
地域の人々との交流や関係性の構築について大切だと感じることを教えてください
大切なのは程良い距離感を保つことだと思います。移住者は外部の人で、地元住民と同じになるには何十年とかかると思います。
田舎の地区はいい意味でみんなが家族で、移住者は仲間になるのが精一杯です。ただ、無理にその家族に入ろうとする意識が必要なのではなく、自分がストレスのない距離感を裏表なく表現し、自然に馴染むことが理想です。
移住者はこの地区の素人であり、分からないことだらけだと思うので、思いっきり頼ったらいいと思います。ただ大切なのは、まず自分がどんな人間かを知ってもらった上で頼ることです。
そして知ってもらうために、挨拶をしたり、散歩や草刈り、農作業などを通じて地域の方とコミュニケーションをとることが大切だと思います。
今後も空き家での生活を続けたいか、その理由について教えてください
できる限りここで生活したいと考えています。なぜなら、私が理想とする生活スタイルがやっと整い、今スタートしたからです。
私が民宿やアトリエを始めたことで、外部の方と地域住民の交流も増えました。それが今後どのように影響していくかを、肌で感じていきたいと思っています。
そして何より、今までに多くの人に助けてもらったので、その方々にお返しをしていきたいです。
自分の事業が、地域が求めていることに役立てているという自負があります。ボランティアでなく商売をする上で、私自身が地域の中で何かの役に立っている実感を得られているので、今後もここで生活をしたいと考えています。
地域の魅力について教えてください。
のどかな町で、人々の暮らしはゆったりとしています。自然豊かで、マンモスや古墳などの観光資源があります。季節ごとにご近所の方から野菜をいただくこともありますし、ツルやホタルも見ることができる環境です。
一方で、お店や病院も近くにあり、想像していたより都市への交通の便も良いです。
伝統技術や生活知識をもった住民が多く、高齢でもとても元気なおじいちゃんやおばあちゃんがいて、負けていられません。
少し閉鎖的な印象もありますが、それが逆にこれからどう変化するのか未知数でワクワクします。
空き家暮らしを検討中の方に向けてアドバイスやメッセージをお願いします。
空き家物件に関しての知識を高め、水回り、屋根、設備、周囲の状況、風通しなどについて調べてください。
そして、契約する前に必ず現地を訪れて現地もしくは近隣で宿泊することが大切です。現地の生活感を感じるのと共に、その物件の背景や状態を聞くことも重要です。
それを踏まえ、全国各地で行われている移住体験や先輩移住者が経営しているお店や宿に行くことをお勧めします。