移住者プロフィール
遠藤 麻耶さん
利用した支援制度
地域おこし協力隊
北海道鹿部町の地域おこし協力隊、趣味・特技:二胡・お茶
目次
INDEX
地域おこし協力隊の応募動機について教えて下さい。
私の両親は函館市出身で、幼少期には夏休みなどを函館で過ごしていました。(父の仕事の関係で、私は姉と共に京都と大阪で育ちました。)函館や道南での楽しい思い出が多く、小学生の頃から「大人になったら函館に住みたい」と思うほど、函館が大好きでした。
鹿部町に移住する前は、京都に本店がある雑貨店で約8年間勤務し、2店舗の店長やバイヤーを務めていました。主に日本やヨーロッパのロングライフデザインのプロダクトを取り扱っており、日本各地の伝統工芸品に携わる機会も多くありました。特に、作り手が減少しつつある日本の伝統工芸品を取り扱い、POPUP企画を通じてその素晴らしさや産地の魅力を多くの人に伝える仕事にやりがいを感じていました。
そんな中、父方の祖父が亡くなり函館に帰省した際、かつての楽しい思い出と現在の函館の様子にギャップを感じ、「函館ってこんなに元気がなかったかな?」と疑問を持ち、街の現状を知りたくなりました。
さらに、百貨店で新しい店舗の立ち上げに携わることになり、ようやくオープンの準備が整ったところで「コロナ禍」が始まりました。店のオープンは延期され百貨店を利用するお客様は減少し、外商はストップしました。百貨店での販売に関して、また小売販売の在り方に「もう、いいかな…でもあと1年は様子見てみよう」と思ったのが2019年の春です。
1年後、京都は観光地としての賑わいが落ち着き、本来の静かで魅力的な街に戻っていました。そのタイミングで函館の就職情報を調べ、親戚がいる函館ならすぐに移住できると感じ、「せっかくなら」という思いで道南の地域おこし協力隊を検索しました。
奈良県や青森県で友人が地域おこし協力隊をしていたので、制度や内容には馴染みがありました。地域の現状を理解し、地域の人々と直接関わりながら活動できる3年間を過ごしたいと思い、応募を決意しました。
北海道鹿部町を選んだ理由について教えて下さい。
「道南」「函館から近い町」という条件で地域おこし協力隊を検索したところ、鹿部町が候補に上がりました。鹿部町は間歇泉があることで、姉は知っていましたが、私は幼少期の記憶が曖昧でした。
その時、鹿部町で募集していたのは、産業振興や観光に関わる協力隊でした。しかし、当時の仕事をすぐに退職することが難しかったため、一旦応募を見送り、まずは現地を見てみようと親友を連れて京都から鹿部町を訪れることにしました。
鹿部町に向かう前に、函館市の湯の川にあるお寿司屋さんで大将と仲良くなり、さらに常連客だった南茅部のお寺の住職とも親しくなりました。レンタカーで鹿部町に行く予定でしたが、なんとその住職が大沼、鹿部、南茅部を案内してくれるという奇跡的な旅行となり、鹿部町に降り立つことができました。
その日、鹿部町は台風の影響で海が荒れ、駒ヶ岳も霧に包まれていましたが、逆に自然の力強さを感じ、「ここに住んでみたい」と思いました。
その後、自分の仕事の整理がようやくつき、産業振興の協力隊に応募しようとしましたが、締切ぎりぎりの3月末に応募したところ、すでに他の方で決まってしまったとの連絡がありました。しかし、その後すぐに担当者から「でも!4月から移住担当の協力隊を募集するので、ぜひ遠藤さんに来てほしいです」という連絡があり、これもご縁だと感じ、鹿部町への移住を決めました。
地域おこし協力隊の仕事内容について教えて下さい。
当初、私の主な業務は移住・定住サポートで、大阪や東京で開催される移住イベントへの参加や、移住希望者の窓口対応、定住後のサポートが中心でした。しかし、コロナ禍により状況が一変し、都市部での移住イベントは中止となり、対面での活動が難しくなりました。
そのため、移住相談や「ちょっと暮らし体験」の応募があった際には、役場の担当者と協力して相談対応に努めつつ、まずは町や地域住民、そして道南エリア全体を深く知ることを重視しました。そして情報発信の一環として、鹿部町公式のYouTubeチャンネル「しかべチャンネル」を開設し、動画の企画や編集を手掛けるとともに、移住者向けのパンフレットやチラシなどの制作物などを新しいデザインへ変更しました。また、オンラインでの移住フェアにも参加し、大阪や京都との違いをリアルに伝える活動も行いました。
2年目以降は、鹿部町の協力隊と一緒に動画企画や編集、オンライン移住フェア参加に加えて、他市町の方々との交流や、町民とのイベント企画(茶会や二胡の会)を行いました。また活動外では、函館市の金森ホールで、私の二胡の師匠と函館のアーティストや道南で活動している焼き菓子店や珈琲屋、燻製屋、パン屋と一緒に音楽と食のイベントを開催しました。
コロナ禍が終わってからは、外に出ての移住フェアの参加や、ダイワハウスの管理地である鹿部リゾート地区でのマルシェイベント、日本航空の客室乗務員さんとの動画制作をしました。活動外では、二胡イベントのフライヤー制作や、函館市で作陶をしている親友の作家とともに、京都でのPOPUP企画を手掛けています。この企画には森町の焼き菓子店や函館の珈琲屋も参加しており、地域の魅力を広く発信する取り組みを続けています。
地域おこし協力隊のやり甲斐はなんですか?
今までの仕事や趣味などで身に付いたスキルを使って、新しいことに挑戦し地域貢献できることです。これまで接することがなかった役場の方々や、水産加工会社の方々など知らない世界を知ることは嬉しく、人との新しい出会いはやりがいを感じます。
地域おこし協力隊になって想定外だったことを教えて下さい。
特に無いです。
卒隊後のビジョンがある場合は教えて下さい。
合致する空き家が見つかれば、鹿部町に定住する方はもちろん、町外の方も楽しめる茶屋兼雑貨店を開きたいと考えています。夜は軽く飲める場所としても活用し、移住を検討している方には移住相談を、町に暮らす方には物件情報を提供できる、気軽に立ち寄れるお店を目指します。
「鹿部らしくない」スタイルも、移住者だからこそ提案できるものであり、町に少しのスパイスを加える存在になれたらと思っています。しかし、それだけでは生活が成り立たないのが現実なので、函館でも働きつつ、時には京都に戻るなど、自分に無理のない暮らし方を模索しています。
鹿部町の住民と触れ合った際の印象と、裏付けるエピソードについて教えて下さい。
道南の血が流れているからか、難しいと言われる「浜言葉」も自然と理解でき、町の皆さんは優しく親しみやすい印象を受けています。そして、女性たちは本当に強いです!
私の祖母や母、叔母も皆強く、道南の女性はたくましいと感じて育ってきたので、町のお母さんたちと話すとまるで家族と話しているような安心感があります。海産物の調理方法なども教えていただいています。
鹿部町には不動産会社がないため、空き家の状況を把握するのは難しいのですが、相談すると親戚を通じて情報を集めてくださり、親身になって助けてくれる方が多いです。
また、鹿部町にはダイワハウス工業が管理するロイヤルシティ鹿部リゾート(暮らす森の森林住宅地区)があり、本州から移住してきた多くの方々が、定年後のセカンドライフを楽しんでいます。私も一緒に餅つきや味噌作りをしながら、人生の先輩たちからさまざまなことを教わっています。
鹿部町の魅力について教えて下さい。(自然やグルメ、オススメスポットなど)
春夏秋冬を通じて、駒ヶ岳や海の美しい景色を楽しむことができます。特に新鮮な海産物は絶品で、移住直後にはその新鮮さと生命力の強さに驚き、少しお腹を壊してしまったほどです。
鹿部町の特徴の一つである約10分間隔で噴き上がる間歇泉は珍しく、地面から立ち上るもわもわとした湯気も見どころです。また、夏は涼しく、冬は雪が少なく過ごしやすい地域です。
「暮らす森」の森林住宅地区では、作家さんのアトリエや他拠点生活の一部として活用されており、そうした方々との交流がとても楽しいです。
移住を検討している方にメッセージをお願いします。
正直なところ、私は深く考えずに「行ったらなんとかなるだろう」という気持ちで移住しましたが、地方で暮らすことには当然デメリットもあります。
鹿部町の場合、駒ヶ岳は活火山であり、噴火のリスクがゼロではないうえ、津波の危険区域も存在します。また、交通手段が限られているため、以前のようにすぐに欲しいものが手に入らないこともあります。大きな病院が近くにないことや、ヒグマの出没情報があることも気になります。
それでも、大阪や京都での暮らしと比べて、現在の暮らしには多くのメリットがあります。交通手段が限られていても、車での移動が主なので、満員電車やそのストレスから解放されました。欲しいものがすぐに手に入らなくても、オンラインショップで購入することで無駄な出費が減りました。
活火山である駒ヶ岳の近くで暮らすことに不安を感じるかもしれませんが、日本に住んでいる以上、自然災害のリスクは避けられないものです。ポジティブに考えれば、良い面も多く、変えられないことは受け入れるしかありません。
自分が「豊かさ」を感じられる場所に移住することが一番大切です。鹿部町は人々も温かく、気候も暮らしやすい町です。漁業が盛んな町なので、野菜や酪農製品は少ないですが、新鮮な野菜などは車で約30分圏内の隣町で手に入ります。さらに、函館空港まで車で約50分なので、東京や大阪へのアクセスも良好です。
鹿部町を拠点にして、道南エリアを存分に楽しむことができます。まずは、ぜひ鹿部町に足を運んでみてください。「ちょっと暮らし体験」もおすすめです。
地域おこし協力隊の詳細についてはコチラ↓
https://warp.city/features/2