移住者プロフィール
大脇 貴志さん
出身地:東京都北区、前住所:埼玉県、現住所:三重県津市、職業:訪問美容室「Ringo」代表
目次
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野球少年を経て、美容師の道へ
1987年に、2人姉弟の弟として、東京都北区に生を受けた大脇貴志さん(以下、貴志さん)。
埼玉県⇨札幌市⇨再び埼玉県と、転勤族だった父に帯同する形で転居を重ねた小学校時代だったという。
体を動かすことが大好きで、野球に夢中だった少年時代を経て、高校卒業後は埼玉県内の理容学校に進学した。
現在は訪問美容師として活動する貴志さんだが、美容師という夢はいつ頃、どのように抱くようになったのだろうか。
「とても自由な校風の高校に通っていたので、ワックスを使ってスタイリングをしたり、髪型で遊ぶ楽しさを知ったのは、その頃でした。
興味はありつつも、その頃はまだ“美容師になりたい”という明確な夢を持っていたというわけではなくて。
高校3年生の夏休みに進路希望を出す必要があったので、『美容専門学校と書いておこうか』くらいの気持ちだったのが、正直なところです(笑)」
と、飾ることのない自然体で当時を振り返った。
遠距離恋愛を経て、結婚!美容師と助産師として多忙極めた埼玉時代
ご友人の紹介で出会った奥様・希美(きみ)さんとは、三重県と埼玉県の遠距離恋愛を1年ほど経て、結婚。お二人には「犬好き」という共通点があり、「いつか飼うなら柴犬」と夢を抱いていたのだそう。
希美さんの故郷である三重県にいずれは戻るという約束のもと、埼玉県で結婚生活をスタートさせた。
トップスタイリストとして、朝から晩までお店に立つ貴志さんと、幼いころからの夢を叶え、看護師、そして助産師として、昼夜問わず新たな命の誕生を支える希美さん。
心血を注げる天職に就けた充足感に満たされる一方、ご夫婦で過ごす時間が取れない寂しさ、そして、多忙ゆえに「柴犬を家族に迎える」というご夫婦共通の願いを叶えられないことの葛藤は、どこかで燻り続けていたという。
家族との時間を大切に。三重移住を機にご夫婦そろって独立!
多忙極める日々からライフスタイルが大きく変化したのは、2017年の夏のこと。
希美さんの故郷・三重県津市への移住を機に、貴志さんは訪問美容サロン「Ringo」を開業し、希美さんも訪問助産師「kimi. (キミドット)」として独立。ご夫婦揃っての新天地での新たなチャレンジが始まった。
現在は「美容師×看護師×助産師」の最強タッグとして、共に仕事をするご夫妻だが、「移住」と「独立」という大きな決断を2つ同時に実行することに、不安や迷いはなかったのだろうか。
「当然ですけど、初めは全く仕事の依頼がこなかったので、もちろん不安はありました。
でも、家族や自分の時間を確保できるような働き方をするために、“三重に移住したら何か新しいことを始めよう”と思っていたので、迷いは全くなかったですね。
埼玉時代は本当にすれ違い生活だったので、土日休みとか、趣味に時間を費やせること自体がとにかく新鮮で、2人ともすごく楽しんでいました(笑)。移住前はあまりできなかった外出や旅行などの時間を取ることができたのも、嬉しかったですね」
「訪問美容」というサービスで、お店に行けない人々を笑顔にしたいー。
津市、鈴鹿市、亀山市、四日市市、松阪市全域に出張してくれる訪問美容室『Ringo』。
自宅から介護施設まで希望場所を指定できるばかりか、ベット上や車椅子に乗ったままの施術など、施術スタイルも希望できる。
オーダーメイドの柔軟なサービスを提供できるのは、10年以上のトップスタイリストとしての実績に加え、NPO法人日本理美容福祉協会認定の福祉理美容師としての認定資格、介護職員初任者研修(旧ヘルパー2級)も取得する貴志さんだからこそ。
美容と介護の両方面からの技術・経験・知識を提供することで、何らかの事情でお店に出向けない方々に、美と笑顔を届けたい。その想いは以前から抱いていたのだとか。
「美容室で勤務していた時に、育児中のお母さんを担当する機会が多くありましたが、お母さんたちの共通の悩みは『なかなか美容室に行けない』ということでした。
美容師としてもっと多くの方を笑顔にすることはできないかと考え、何らかの事情でお店に来られない方たちに向け、介護や福祉の勉強を始めました」
唯一無二の独自のサービスを武器に、これからもたくさんの人を笑顔にしていくことだろう。
運命を変えた柴犬りんご郎君との出会い
三重での暮らしも落ち着いてきた頃、かねてからの夢であった「柴犬との暮らし」をスタートさせたお2人。
鈴鹿市のブリーダーさんのところに、まだ家族が決まっていない柴犬の男の子という情報を入手するやいなや、1時間ほど車を走らせすぐに会いにいった。
「会った瞬間にビビビと来て、すぐに迎えることを決めた」というその子こそ、愛らしい姿で全世界の愛犬家を虜にする『柴犬りんご郎くんチャンネル』の主役・りんご郎くんだ。
ご自身のお店にも「Ringo」と名付けるように、「りんご」は貴志さんにとって人生に欠かせないキーワード。
果物のりんご、伝説のロックバンドビートルズの元メンバーリンゴ・スター、歌手の椎名林檎、Apple製品…大好きなものにはなぜか「りんご」の名前がついているのだ。
新しい家族の名前は「りんご」+男の子だから「郎」でりんご郎くんに。
2018年3月、貴志さん、そして希美さんの人生に最愛の「りんご」が加わった。
幸せを運ぶラッキーボーイ
「りんご郎は我が家のラッキーボーイなんです」と貴志さんが話すように、りんご郎くんを迎えてからの大脇家には、ハッピーなことばかり。りんご郎くんの話題でご夫婦の絆は深まり、会話にはいつも花が咲くようになった。
彼を迎えて数か月後、ご夫妻は待望の子どもを授かり、2019年3月に第一子となる長女が誕生。この年には、仕事も軌道に乗ったというのだから、まさにラッキーボーイ!
こういう光景を見ると、家族なんだなって
2023年9月には二女も誕生し、5人家族になった大脇家。
「一人目の赤ちゃんが来たときは、やきもちを妬くというよりは不思議な存在という感じでみていた」というりんご郎くんも、今回は落ち着いて赤ちゃんを迎えてくれたといい、立派に2人のお兄ちゃんを務めている。
特に記憶に残っているりんご郎くんと娘さんのエピソードを尋ねると、柔らかな表情で目を細めながら話してくれた。
「一昨年、1週間ほど長女が入院したんです。
普段はどちらかというと、長女の方から『遊ぼう遊ぼう』と誘って、りんご郎が付き合うという感じだったんですけど、長女がいない間、りんご郎がとても寂しそうにしていて。
退院して家に帰ってきた時に、家じゅう走り回って喜んでいたんですよね。
そういう光景を見ると、家族なんだなって。嬉しくなりましたね」
無理に人間関係を広げなきゃと気負わずに、自分のペースを大切にしてほしい
奥様の故郷とはいえ、貴志さんにとってはゼロベースでの移住に等しかったであろう。
移住をする上での懸念材料のひとつに、「人間関係の築き方」が挙げられる。
移住当初不安はなかったのかを貴志さんに尋ねると、「人間関係で悩むということは、移住当初も今も、全くないですね(笑)」と明るく笑い、こう続けた。
「僕自身、コミュニケーションがそんなに得意な方ではないんです。
三重に来てから仕事上での付き合いは多少増えましたが、LINEを交換するような友人はまだできていません(笑)。
でも、無理に広げなければいけないものだと思っていないので、それについて悩むことはありませんし、むしろ自然なことなのかもしれない、とも思っています。
今はもう普通のことですけど、三重に越して来た当初びっくりしたのは、初対面なのに、地域の人たちが積極的に話しかけてくれることでした。埼玉に住んでいた時には、見知らぬ人に話しかけられたことも、話しかけたこともありませんでしたから。
“地域の人たちがそうしているのだから自分もそうしなければいけない”という気持ちが強すぎると、もしかしたら疲弊してしまう人もいるかもしれません。
そんな時は、必死で溶け込もうとするよりも自分のペースを大切にして、“そういうやりとりも生活の一部としてあるんだな”くらいに受け止めるようにしたら、それほど負担にもならないんじゃないかな」
と、先輩移住者だからこそ語れる言葉で、「軸を持つ大切さ」を教えてくれた。
娘2人とりんご郎を連れてアウトドアに行きたい
貴志さんの今後の楽しみは、下の娘さんがもう少し大きくなったら、家族みんなでアウトドアに行くことなのだとか。
車でサクッと行ける距離にキャンプ場やコテージがあるほか、三重では最近、犬も楽しめる施設にアクティビティが増えているという。さすが、犬の飼育率上位常連県の三重県。犬との移住を考えている方は、候補先に三重県を考えるのもいいのではないだろうか。
出典:厚生労働省「都道府県別の犬の登録頭数と予防注射頭数等(平成26年度~令和4年度)
いざ変えてみると、意外と何とでもなる。時には飛び込んでみることも大事!
移住前後でライフスタイルが大きく変化した大脇さんご夫妻。
「三重での生活スタイルがとても心地よい」と話す貴志さんに、移住を検討している方に向けてメッセ―ジをいただいた。
「環境を変えるって、とても勇気のいることですよね。
あくまで僕自身の経験からですが、いざ変えてみると意外と何とでもなるな、と感じているので、時には飛び込んでみることも大事なのでは、と思います」
と、シンプルながらも力強い言葉でエールを送ってくれた。
夫婦で歩幅を合わせて共に歩むために決意した三重への移住。そして繋がったりんご郎くんとの縁。現在の家族の形があるのも、もたげる不安の先に広がる明るい未来を想像し、飛び込む決断をしたからこそ。
新しい家族の成長とともに、種別を越えた兄妹愛のストーリーに新たなページが加わることだろう。そんな未来に、今から想いを馳せてしまいそうだ。
大脇貴志さん
訪問美容師として活動する傍ら、美容メディアの執筆活動も行う。
おすすめの美容家電やヘアケア商品を解説する「ヘアーチルドレン」や、“あなた”にあった市販シャンプーを見つける解析サイト「シャンプー解析サイト モコーモ」にて、髪の専門家である美容師目線の情報を惜しみなく伝える。