移住者プロフィール
武部直輝さん
所在地:三重県南牟婁郡御浜町、業種:便利屋・芸術家
目次
INDEX
どのような経緯で空き家に住むことを決意しましたか?
自転車で日本各地を旅している中で、人の縁に導かれ、御浜町にたどり着きました。出会った方々の温かさに惹かれ、一年ほどゲストハウスでお手伝いをしながら暮らしていました。
この地の人々や豊かな自然、そして心地よい空気感に触れるうちに、ここで暮らす決意が固まりました。特に、周囲の人々の温かなサポートがあったことが、決断の大きな要因です。
この場所は、私にとってただの居住地ではなく、「第二の故郷」となりました。移住後の生活は、期待以上に充実しています。
空き家を見つけるために利用した手段やサービスについて教えてください。
空き家を見つけた経緯は、「御浜町移住・交流サポートデスク」に相談したことがきっかけです。サポートデスクは、地域の特性や生活環境の情報から補助制度の案内まで行う、移住者向けの総合相談窓口です。
サポートデスクに住居などの移住相談をした際に、御浜町空き家バンク制度を紹介していただきました。この制度で理想の空き家に巡り合い、移住をスムーズに進めることができました。
御浜町への移住を考えている方は、まずはサポートデスクに相談してみることをお勧めします。
入居前の空き家の状態や実施した修繕、リフォームの内容について教えてください。
空き家は10年以上も人が住んでおらず、少し荒れた状態でした。室内には残置物が残され、庭には雑草が生い茂り、まずは手入れが必要でした。最初の2ヶ月間は、これらの片付けや掃除、草刈りを中心に作業を進めました。
その後、修繕やリフォームを少しずつ進めていきました。例えば、台所の裏にあった壊れたトタン屋根は雨漏りを防ぐために新しく張り替え、カビの除去を行いました。床も磨き直して蜜蝋(※ミツロウ)を塗り、洗面所には新しい鏡やライトを設置し、心地よい空間を作り上げました。
さらに、元々庭にあった鉄筋や廃材を利用して、小さな小屋や柵を作りました。庭も整備し、今ではヤギを飼うなど、暮らしに新しい楽しみが増えました。
※蜜蝋(ミツロウ)ミツバチが六角形の巣を作る材料として、働き蜂の腹部にある分泌腺から分泌するロウのこと
空き家暮らしを始めてからの日常生活の変化や感じたことを教えてください。
空き家をキレイにする過程で、近隣の方々から「よくやっているね」と褒めていただけることが増えました。少しずつ自分の手で家を修繕しお洒落に仕立てていく作業は、まるで大きな作品を作り上げているような充実感があります。
その過程で、DIYに使える道具も徐々に増え、自然と技術も向上しました。今では、時々ご近所の方から仕事を依頼を受けることもあります。
特に印象的だったのは、元々大工や建築に携わっていた方が、蔵に眠っていた道具や木材を提供してくださったことです。こうした地域の方々の温かいサポートには、心から感謝しています。
空き家暮らしを通じて、人とのつながりや新しいスキルを得られる喜びを実感しています。
空き家暮らしで困ったこと、苦労したことについて教えてください。
空き家暮らしでは、庭の草刈りや木の剪定が思った以上に大変です。特に、忙しい時期になると、手入れをする時間が取れず、雑草や木々がどんどん成長してしまいます。
また、床下の換気が悪いため梅雨の時期にはカビが発生しやすく、これも大きな悩みの一つです。特に湿気の多い日は、カビが家の中にまで上がってきてしまい、掃除に時間を取られてしまいます。
こうした点では、空き家のメンテナンスがいかに大切かを痛感しています。
地域の人々との交流や関係性の構築について大切だと感じることを教えてください。
まず大切なのは、挨拶だと思います。毎日の挨拶を通じて顔を覚えてもらい、自然に会話が増えていきます。
また、家やその周りをキレイに保つことも大切です。これにより、地域の方々に好印象を持ってもらえるだけでなく、自分自身も心地よく暮らせます。
さらに、地域の草刈りや行事に積極的に参加することも重要です。そうした場で顔を合わせ、交流を深めることで、地域の一員として受け入れられやすくなります。
特に、一人でも地域で信頼されている方と良好な関係を築くことができれば、他の人々ともスムーズに関係を築けます。あとは、自然を大切にする心も忘れてはならない要素です。
今後も空き家での生活を続けたいか、その理由について教えてください。
はい、これからも空き家での生活を続けたいと考えています。少しずつ家が素敵に変わっていく過程が楽しいからです。
自分の手で手入れをし工夫を重ねることで、家が生まれ変わっていくのを見るのは大きな喜びです。また、最近では地域にも目を向けるようになり、この街をさらに素敵な場所にするために、自分にできることを積極的に取り組んでいきたいと考えています。
地域のイベントや活動に参加し、地元の方々と交流を深めることで、この街にもっと貢献できるのではないかと感じています。
地域の魅力について教えてください。
豊かな自然です。水は綺麗で、風は心地よく、四季折々の美しさを楽しむことができます。山里の静かな環境にいながら、海も遠くないため、新鮮な海の幸や山の幸を安く手に入れることができます。
さらに、少し足を伸ばせばそれなりの町にもすぐに出られます。必要な施設やお店が揃っているので、生活に不便を感じることはありません。また、この地域は「聖地熊野」としても知られ、神聖で美しい場所が数多く点在しています。
歴史や文化に触れる機会が多く、地域独自の魅力を味わえるのもこの場所ならではです。加えて、魅力的な人物が多いことも特徴の一つで、まるで人間国宝のような面白い方々との交流も楽しみの一つです。
空き家暮らしを検討中の方に向けてアドバイスやメッセージをお願いします。
田舎暮らしを望む方が増えていますが、理想的な空き家を見つけるのは簡単ではありません。多くの空き家は、家主が高齢であったり遠方に住んでいたりするため、残置物があり修繕が必要な場合がほとんどです。
都会では、賃貸物件や売物件が整った状態で引き渡されるのが一般的ですが、田舎ではそうはいかないのが現実です。
このため、空き家を活用するには、補助金などのサポート制度を利用するだけでなく、家主、行政、入居者が協力し合い、居住可能な空き家を作り上げていく姿勢が求められます。三者が連携することで、空き家活用の幅が広がり、より良い暮らしが実現できると思います。
また、田舎での生活は、「仕事をしてお金を稼がないと生きていけない」という感覚を少し手放し、ゆとりのある時間や日々の生活、そして自分のやりたいことを大切にすることが重要だと感じています。身近な人や自然との調和を意識して生きていくことで、豊かな暮らしが実現するはずです。
空き家暮らしを検討している方には、そうした価値観を大切にしながら、ぜひ一歩を踏み出してほしいと思います。