移住者プロフィール
坂本 祐樹さん ・木本 紗綾香さん
利用した支援制度
下関市にぎわいのまちづくり促進事業補助金
出身地:下関市(祐樹さん)、島根県松江市(紗綾香さん)、現住所:山口県下関市、職業:「木と土Calm」木工・家具作家(祐樹さん)、陶芸作家(紗綾香さん)
目次
INDEX
移住される前のことをお聞かせください
坂本祐樹さん(以下、祐樹):下関市の高校を卒業後、福岡工業専門学校のインテリア工学科に進学しました。その頃から漠然と家具を作ってみたいという思いがあり、卒業後は友達の実家の造園会社で働きながら、テーブルや椅子などを作り始めました。
でも、すぐに独学での家具づくりに限界を感じてしまって…。当時、ちょくちょく通っていた福岡県糸島市の「工房はーべすと」さんから長野県上松技術専門校のことを教えてもらい、そこで木工の基礎を身につけるために1年間ほど学びました。
卒業後は、「工房はーべすと」さんに半ば押し掛けるような形で弟子入りを志願し、2年間修行しました。そして、2012年に独立し下関市に「工房calm」を構えました。
木本紗綾香さん(以下、紗綾香):島根県松江市の高校を卒業後、京都にある陶芸の専門学校に通い、窯元に就職しました。その後、松江に戻り、2011年に陶芸家として独立。クラフト・アート系のイベントへの出展や百貨店での販売展示会などを中心に活動していました。夫とは百貨店での展示会を通じて知り合いました。
移住のきっかけは何ですか?
祐樹:きっかけは、当時、工房として借りていた建物が相当古くて雨漏りがしていた上、陶芸作家として活動する妻との結婚が決まっていたため、2人分の作業場や作品を展示するための広いスペースが必要になったことです。
最初は、下関市豊浦町の空き家を買おうとローン申請まで進んでいたのですが、道路に接していなかったため、住宅ローンが組めないことが判明して...。困っていたときに、豊田町に住む知り合いが紹介してくれたのが、この古民家でした。
ここを改修し、「木と土calm」として新たなスタートを切ることにしました。
紗綾香:ここに決めた一番の理由は敷地の広さです。店舗兼住居として十分使える広い母屋や、工房として使える納屋もあったことから、即決しました。私の実家がある松江市も頭の中にはあったのですが、商圏を考えると、北九州や福岡に近い方がいいだろうと。
結局、主人の実家に近い下関市に移住することになりました。築150年の古民家ですが、移住する直前まで前の方が住まれていたこともあり、思っていたよりも状態は良かったですね。納屋にきれいなトイレがついていたのも魅力的でした。
移住に関して何か公的な支援を受けられましたか?
祐樹:知り合いが教えてくれた「下関市にぎわいのまちづくり促進事業補助金」を活用しました。市役所の方の対応もよくて、移住者へのサポート体制がしっかりしているなと感じました。
紗綾香:空き家を紹介してくださった方が「ぜひ若い人に町を盛り上げてほしい」と豊田町への移住を勧めてくださり、家の見学にも付き合ってくださったので、安心感もありました。身近に相談できる人がいたのは大きかったですね。
移住に関して大変だったことはありましたか?
祐樹:床や壁の基礎は大工さんにお願いして、残りは自分たちで2カ月かけて改修しました。工務店さんにお願いしたわけではなかったので、きちんとした図面もなく、自分たちで考えながら改修していったので、思っていた以上にやることが増えて...。
気づいたら部屋に電気のスイッチがないという失敗も(笑)。後から不具合に気づくことが多く、いまだにちょこちょこ手を加えています。
紗綾香:家の前のスペースに真砂土を入れて駐車場にしようと考えたのですが、もともと農地として使われていた土地なのでぬかるんでしまって...。やはり砂利を敷こうという話になったのですが、それには農地を転用する必要があり、手続きに半年くらいかかってしまいました。
お店をオープンされて半年が過ぎましたがいかがですか?
祐樹:お店をオープンしたことで、少しずつですが新しいお客さんが増えてきました。コロナの影響で、展示会やイベントへの出展が減っているので、オープンしたタイミングが本当に良かったなと思います。もし、ここがなければ作品を売る場所がなかったかも。そう考えるとゾッとしますね。
紗綾香:お店の宣伝といえば、百貨店などの展示会でDMを配ったくらいで、ひっそりとオープンしたのですが、遠方からもお客さんがいらっしゃるのがいつも不思議で...。お越しくださった方全員に、お店を知った経緯についてお聞きしています。
移住先での暮らしぶりを教えてください
祐樹:目の前に広がるのどかな田園風景に毎日癒されています。草刈りや畑仕事、家の改修など、仕事以外の作業が増えて、以前に比べてじっとしている時間は少なくなりました(笑)。近くの豊田湖でワカサギ釣りを楽しんだり、池でメダカを飼ったりと、新たな趣味もできました。
やりたいことがどんどん増えている感じです。引っ越してまだ日が浅いので、これから徐々に地域の方々と交流をもつ機会を増やしていきたいと思っています。
紗綾香:とても居心地がいいですね! 田舎暮らしを満喫しています。春は八重桜の花やタラの芽、ヨモギを天ぷらにして味わえるし、ワラビもたくさん採れます。寒くなるまでは、庭で毎日バーベキューを楽しんでいました。病院やスーパー、ホームセンター、道の駅も近いので、生活に不自由することもありません。
強いて困ったことを挙げるなら、想像していたよりも寒かったことでしょうか。特に今年は、寒波の影響で異例の寒さでした。マイナス5℃になった日は、作業場から家の中に作品を避難させておいたのですが、すべて凍ってしまいダメになってしまいました。
移住を考えている方へ、アドバイスをお願いします
祐樹:古民家は格安で手に入ると思われるかもしれませんが、住めるように改修するためにかなりお金が必要なこともあるので、購入前に必ず専門家に相談されることをおすすめします。
紗綾香:移住先の自治体に補助金が整備されているかどうかなど、移住者に有益な情報についてもしっかりと調べておいた方がいいと思います。着工した後では申請できないものもあるので、条件面はきちんと確認しておくことをおすすめします。
最後に、これからの目標をお聞かせください
祐樹:コロナ禍でイベントへの出展が厳しい状況なので、SNSなどを通じてお店の宣伝に力を入れていこうと考えています。現在、インターネットでも作品を購入していただけるようにホームページのリニューアルをしています。
紗綾香:今、使っているのは電気窯なのですが、ゆくゆくは薪窯を作ってみたいですね。そして、夫の作品制作で余った木材を燃やして灰をとり、そこから釉薬を作って...。将来的には、この土地に合った新たな作品づくりにチャレンジしてみたいですね。