移住者プロフィール
坂田 修作さん
利用した支援制度
岩国市創業支援補助金、やまぐち創業補助金
出身地:大阪市、前住所:神奈川県、現住所:山口県岩国市、職業:里山民宿「和樂の里」事業継承の準備中
目次
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Iターンされる前はどちらにいらしたんですか?
坂田修作さん(以下、坂田):移住する直前の2年間は、東京・大手町で内部統制の仕事をしていました。石油企業に勤め、国内外のさまざまな場所でライフサイエンス系事業の立ち上げ・経営に携わっていました。
Iターンを決めた理由は何ですか?
坂田:会社員時代から地方の活用と環境問題が日本の課題だと考えていましたので、長年携わってきたライフサイエンス系事業の経験を活かしながら農林水産業に関わることで、その両方の課題を解決し、なおかつビジネスにもつなげたいと思ったのがIターンを決めた理由です。
なので、のどかな暮らしを求めての移住というよりは「ビジネスの拠点を変える」という感覚で山口にやってきました。
では、なぜ移住先に山口を選ばれたのでしょう?
坂田:東京に近い千葉県や山梨県などの関東圏や、大阪に近い関西圏は、私にとって「真の地方」ではないという印象があったので、それ以外の場所から候補地を探していきました。その中から山口を選んだ理由は、1991年から1994年の間、下松市に赴任していたという経験が大きかったですね。
土地勘が多少あったこと、そして、自然の豊かさや人の温かさ、暮らしやすさを知っていたことが、最終的には決め手となりました。
「和楽の里」を承継することになった経緯は?
坂田:2017年の8月に、「ふるさと回帰支援センター」の紹介で長門市の移住ツアーに参加しました。せっかくなので、山口県内の農家民宿も見て回ることにしたのですが、その時に、「和樂の里」を訪れました。
一緒に宿泊をした地元の方から若者流出や過疎化など岩国の現状を聞き、そして地方創生に対する思いをいろいろと議論していたところ、元オーナーから「『和樂の里』にも跡取りがいないので、ここを継承して活動してはどうか?」と突然言われたんです。
もちろん即答はできませんのでお時間を頂戴し、そこから一年間、横浜から「和樂の里」に通いながらここで何ができるのかを考えていきました。それと同時に、移住したら農業が中心になると思ったので、東京でアグリイノベーション大学校に通い、技術や経営について学んでいきました。通っている間に気持ちが固まったので、前職を早期退職し、単身でこちらに移住してきました。
ご家族は驚かれたのではないですか?
坂田:最初は「65歳まで勤められるのに、わざわざそんなことをする必要はあるのか?」と言われました。生活のことを考えれば、当然の反応だったと思います。
地方の活用で日本を救いたい、里山の管理をすることで災害時の被害を抑えたい、それにビジネスの可能性は十分にあるんだと時間をかけて説明した結果、最終的には「仕事としてそれを選ぶなら」と承知してくれました。
単身ということですが、ご家族は現在どちらに?
坂田:妻と娘3人は横浜にいます。子どもたちは手を離れ独立していますが、これから結婚して孫もできるだろうし…、ということで、妻は横浜に残って娘たちの近くにいてあげたいと。ただ、将来的には妻に来てもらいたいと考えています。
私だけではできないこともあるでしょうから、妻の才能を発揮する場として手伝ってもらえると嬉しいです。それに何より、自然に囲まれた健康的な暮らしを妻と一緒にしていきたいですね。
「和樂の里」は、いつ頃オープンされる予定ですか?
坂田:2020年の4月にオープン予定です。岩国市創業支援補助金を利用して、施設の一部を改装する計画で進めています。今は山林を整備するために、東部森林組合で働きながら林業の勉強をしています。
当初の計画では、元オーナーがしばらくの間「和樂の里」を続け、私はそれをお手伝いしながら農家民宿の経営ノウハウを学び、同時進行で林業を学ぶつもりでいました。しかし、元オーナーが2月頃に体調を崩されて急遽山を降りられることになり、一旦閉めざるを得なくなりました。
岩国での暮らしはいかがですか?
坂田:この周東町祖生(そお)地区はみなさんとてもフレンドリーで、いろいろなことを教えてもらったり助けてもらったりと、本当によくしていただいています。また私自身も、地域に溶け込めるように、草刈りなどの地域活動にはできるだけ参加するように心がけています。
「和樂の里」は山中にあるので、アプローチは少し大変ですが、生活する上での不便は特に感じていません。下水道もインターネットも通っていますし、車があれば10分でコンビニやスーパーに行けます。また敷地内の井戸水は山の湧き水につながっています。
「こんなところに本当に人が住んでいるのか?」と言われることもありますが(笑)、それもまた都会にはない大きな魅力だと自信を持っています。
岩国の良いところを教えてください
坂田:東京に比べると物価が安いですし、食べ物も新鮮でおいしいです。それと、自然が豊富なので空気が澄んでいて景色も抜群です。中でも「和樂の里」からの眺めは特に美しいのでオススメです。
夜明け前から早朝に現れる雲海、夜に広がる満天の星空はぜひ見ていって欲しいですね。また、通勤にかかるストレスがないところも気に入っています。
移住に際し、何か不安はありましたか?
坂田:本当に自立してやっていけるのかという不安はありましたが、一年通う間に徐々に展望が見え、地元の方々との良い関係も築けてきたので、今は期待感の方が大きいです。
もちろんまだ準備段階なので経済的な不安は続いていますが、問題なく経営できるレベルに到達できるよう努力し、最悪のパターンもきちんと想定しながらオープンに向けて進んでいます。
それに、岩国市は商工会議所を中心にバックアップが強力なので、常に気にかけてもらえているのが有り難いですね。また、山口県のやまぐち創業補助金に申し込み、10人の中の一人に選んでもらえたのも自信に繋がっています。山口県は移住者に対するフォローがとても手厚いですね。
山口県へ移住を考えている方にアドバイスをお願いします
坂田:就職するにしろ、創業するにしろ、山口県には活躍できる場がたくさんあります。良くも悪くも山口県の素晴らしさはまだまだ伝わっていないので、新しいことを始めたり、何かにチャレンジしたりするにはとてもいい環境だと思います。
だからと言って、勢いで移住するのはおすすめしません。まずは足を運んで肌身で感じ、人に接してみてください。あとは相談できる機関をしっかりと活用することですね。充実した行政のフォローにきっと驚くと思いますよ。自然の豊かさと人の温かさは保証します!
最後に、将来の夢を教えていただけますか?
坂田:まずは「和樂の里」を無事オープンさせて軌道に乗せ、今まで以上に地域に溶け込んでいくことです。そして里山環境や伝統、歴史の維持に努め、国内だけでなく海外にも岩国の良さを発信していきたいです。
それからコレクティブインパクト※1を実現したいですね。具体的な例として、周防大島他の民宿・ゲストハウスとの連携ですね。例えば、旅行客に1日目は海を、2日目は里山を楽しんでもらったり、もしくは共同で名産品を開発したり…と。
まあとにかく、やりたいことはいっぱいあります(笑)。ここでしかできないことを発掘し、一つでも多く実現し、地方から日本を元気にしていきたいです。
※1 立場の異なる組織が、組織の壁を越えてお互いの強みを出し合い社会的課題の解決を目指すアプローチのこと。