移住者プロフィール
大友 翔太さん
移住時期
2010年12月
利用した支援制度
地域おこし協力隊「島おこし隊員」
出身地:東京都、現住所:山口県周南市大津島、職業:大津島巡航(株)に勤務しながら、島おこし活動を続ける
目次
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ご出身と、周南市大津島との出会いを教えてください
大友翔太さん(以下、大友):生まれも育ちも東京です。大学時代は「環境政策」をテーマに、さまざまな地方にフィールドワークに出掛け、人々との対話を通して、多くのことを学びました。卒業論文では「吉野川・川の学校」での体験を踏まえて、環境教育の重要性についてまとめました。
そういった経験から、一時は小学校教諭を目指していたのですが、幼なじみから大津島で「島おこし隊員」を募集していることを聞いて、応募してみようと思いました。もともと釣りが好きで、島暮らしに憧れを抱いていたことも影響したと思います。
でも、大津島はおろか、山口県について何も知らなかったので、まずは足を運んでみようと考えました。
大津島の第一印象はいかがでしたか?
大友:初対面にも関わらず、東京から来た得体の知れない私に、島の皆さんはとても親切にしてくださいました。そのときに偶然知り合った方が、連合自治会長を紹介してくれたんです。
過疎と高齢化により、行事を維持できなくなっていることや島内移動手段の不足など、さまざまな問題を抱えている現状を知り、「島の人たちのために働きたい」と強く思いました。都会にいれば自分の代わりはたくさんいるけれど、ここには“自分にしかできないことがある”という使命感も、私の背中を強く押してくれたんだと思います。
その後も何度か島に足を運び、2010年12月、「島おこし隊員」として大津島に着任しました。
移住するにあたり、不安はありませんでしたか?
大友:東京ではずっと実家暮らしだったので、一人暮らしへの不安はありました。でも、島暮らしへの不安は不思議と感じませんでしたね。
東京では、実家の前に自動販売機が4台あるような暮らしをしていましたが、こちらでは島全体で4台。そのくらい環境が大きく違ったので、すんなりと踏ん切りをつけることができたのだと思います。
島おこし隊員としては、どのような活動をされたのですか?
大友:行政と地域との「橋渡し」をする活動をしていました。まずは、200世帯を対象に聞き取り調査を実施し、集落ごとに、地域の現状や課題について話し合いました。
そして、地域の活性化計画「夢プラン」の作成をサポートし、最終的には、各集落それぞれのニーズに沿った7プランを作成しました。
続いて、そのプランを実践するために、民泊のコーディネートやコミュニティ紙の発行などの支援をしました。地元の人々の信頼を得るために、“とにかく話を聞いて回る”地道な活動を続けましたね。
隊員としての任期が終わった後はどうされたのですか?
大友:島で暮らしてみて、一人の住民として、「若者の存在が大きい」ことを感じました。そこで、任期が終わった後も、島内にある馬島(うましま)公民館の主事として働きながら、地域づくりの支援を続けました。
現在は、本土との航路を運航する「大津島巡航」で事務の仕事を行いながら、休みの日や仕事が終わった後に自治会活動や地域活動に携わっています。2014年には、島にUターンした同級生と結婚しました。一男にも恵まれ、充実した毎日を送っています。
大津島の魅力を教えてください
大友:何といっても「人」ですね。島の人たちはとても明るくて気さくです。行き交う人が気軽に声をかけ合ったり、野菜を差し入れてくれたり、昔ながらのコミュニティが残っているのもすごいことだと思います。
それに、離島とはいえ、高速船で18分で徳山港に着くので、買い物や病院へ行くのにも便利ですね。対岸の職場までは、自分で小型船を操船して通勤しています。渋滞に巻き込まれることもないので、天気さえ良ければ快適ですね。
静かで自然環境に恵まれているところも気に入っています。島を歩いていると、波の音や風の音、鳥の鳴き声しか聞こえません。沖へ出ると、スナメリの群れに遭遇することもあるんですよ。都会では考えられないくらい贅沢な環境だと思います。
島に来て、戸惑ったことはありましたか?
大友:方言ですね。最初は、大津島弁はもちろん、山口弁もよく分かりませんでした。そこで、地域に溶け込むために、積極的に方言を使うようにしました。今ではすっかり慣れてしまい、日本語と山口弁、大津島弁の三カ国語が話せるようになりました(笑)。
この前、東京の幼なじみが島へ遊びに来たときに、「一体何を話しているの?」と聞かれたときは、自分でも驚きましたね。
地域に溶け込むために、心掛けたことはありますか?
大友:感謝の気持ちを伝えることです。時間が経っていたとしても、「この前はありがとう」と口に出すように心掛けています。
それから、物をもらったときは、後で必ずお返しをするようにしています。そのときに重要なのは、お金で買ったものではなく、自分で作ったものや身のまわりにあるもの、草引きなどの野良仕事で返すことです。これは「島のスタンダード」だと感じています。
移住を考えている方へ、メッセージをお願いします
大友:本や資料に目を通すだけでなく、希望する移住先に「実際に行ってみる」ことをおすすめします。地元の人に、「移住を考えているので、いろいろ教えてもらえませんか」と聞いてみてください。
きっと、たくさんの情報を得ることができると思います。それから、都会風を吹かさないことも大切です。「教えてください」という謙虚な気持ちが大切だと思いますね。
今後の目標を教えてください
大友:現在は、島の魅力を発信するために、東京で毎年開催される「アイランダー」というイベントで、大津島をPRすることに力を注いでいます。その上で、若者の「定住」につなげ、地域コミュニティを維持することが最大の目標です。
そのほかにも、大津島を応援してくれる島外の支援者と一緒に、島をPRする方法を模索しているところです。この島が直面している現状を広く知ってもらい、島外からの支援を積極的に得ることで、これまでとは違った大津島の魅力を発信することができるのではないかと考えています。