移住者プロフィール
松岡 茉莉花さん
移住時期
2019年
前住所:大阪府、現住所:兵庫県丹波篠山市、「けせら工房」を独立開業。
目次
INDEX
本当にやりたいことを考えるようになったきっかけを教えてください
松岡 茉莉花さん(以下、松岡):大阪の音大卒業後、“自分のやりたいことは一体何か”をぼんやり考えていました。その時に働いていた飲食店での素敵な人たちとの出会いが、今の活動の原点かもしれません。
そのお店では、ミュージシャン、イラストレーター、革細工作家などのバイト社員、絵を描き個展を開いたりするオーナー、お茶博士と呼ばれる社員さんなど、とにかく個性の塊みたいな人たちが、自分を自由に表現しながら働いていました。
そんな場所で働くうち、私は将来のことを自問自答するようになり、幼い頃からの「自給自足」という夢を思い出し、環境問題や自然農法を学び始めました。
自然農法での生活に不安はありませんでしたか?
松岡:「農」に興味を持った頃に夫と出会い、一緒に奈良県の「赤目自然農塾」で自然農を学びました。その後、大阪の田舎で「けせら畑・工房」を開業し新しい生活を始め、農業を軸に抱っこ紐などを作って販売し、子育てをしていました。ですが草を刈らずに育てる農法は理解されず、収入も安定せず生活はとても苦しかったです。
そこで自身の活動を知ってもらい、新たな収入源に繋げたいと考えました。綿の種まきから収穫、糸を紡いで染め付け、布を織るところまでのワークショップを始めました。
子どもさんに一枚の布ができあがるまでを見せたいと、多くの方が参加してくれるようになりました。野菜の端境期の収入源としても始めた活動でしたが、ある時、参加者さんの「安すぎる」という声からきちんと計算すると、利益率は20%ほどでした。ただただ楽しく思いを伝えるだけでは続けることができないと悩んだ時期でした。
その後、丹波篠山(たんばささやま)への移住となったきっかけは?
松岡:子どもの通うスクールが丹波篠山にあったことが大きく影響して、知人の紹介で丹波篠山での生活をスタートさせました。この地域には「移住に対する理解」があり、移住者のコミュニティーもしっかりあります。一風変わった子育てや活動も温かく見守ってくださいました。
私たちの活動で得た利益を、自然環境も含め、人や地域などに繋がるすべてのことにプラスになるように経営を考えることが、継続可能で心地よい生き方だと思うようになりました。
移住後の仕事についてはどうですか?
松岡:移住をきっかけに夫は農業から造園業へ、私は「けせら工房」を開業することができて経済基盤も少しずつ安定してきました。これからは丹波篠山という土地にしっかりと根を下ろして、この地域の良さをたくさんの人に知っていただきたいなと思っています。
仕事の幅はその後広がりましたか?
松岡:マルシェで知り合った作家さんから、『市販の布や糸を買っていたけど、草木染めのもので作りたい』とリクエストをいただきました。
そこから草木染めの糸や布の販売を始めました。私の染めたものが作家さんに渡ることで、特色のある作品になり、そこから色々な人に広まるのを感じ、すごく嬉しかったです。
本当にやりたいことを見つけたのですね
松岡:私は作家になりたいのではなく、「自分の納得のいく草木染めをする」ことが好きなんです。縁の下の力持ちとして、作家さんたちに納得して使ってもらえるものを作ることが性に合っているのだと感じました。環境の変化も相まって、自然の大切さなど私の草木染めを通じて伝えたいことが徐々に広まっていることを感じています。
これからは丹波篠山に「染色の森」を作るプロジェクトも始まります。クラウドファンディングを利用したり、また、ネットでも私たちの暮らしや活動を発信して広めていきたいと思います。
今後の展望についてはいかがですか?
松岡:うちで作る竹かごの材料は、近くの竹やぶの整備をして集めています。最近では山林の資源はあまり活用されなくなり、山に入る人も少なく人手がいる作業ですが、都市部で生活されている方のほうが環境問題への関心が高いので、参加してくださいます。
また夫も尼崎市で畑をする人たちの講師に出向いていますが、都市部での耕作面積には限りがあるので、丹波篠山でも活動を広げようとしています。
今後は様々な活動を通して“都会の方が考えることや求めるもの”と“地方の方が求めるものや想い”が通じ合えて、「両方によい関係」が続いていけるようになればと思います。
出典: 好きな場所で新しい暮らし1