移住者プロフィール
甲 斐さん
前住所:宮崎県高千穂町、現住所:熊本県上天草市、職業:ゲストハウス「ふわふわ」代表
移住のきっかけを教えてください。
甲斐さん(以下、甲斐):移住のきっかけは色々ありますが、宮崎県の観光地・高千穂で営んでいたカフェ業が余りにも忙しくなりすぎ、自分が本当に提供したいサービスとのギャップを感じ始めていたからです。そこで今いる場所から少し離れて、新しい気持ちで、自分らしい仕事を作りたいと思ったんです。
ところが、いざ物件探しをしても、なかなか希望の物件と出会えませんでした。
そんな時、一番の理解者である主人がもともと好きだった上天草を勧めてくれたんです。
どのように物件は見つけたのですか?
甲斐:「ふわふわ」の物件は、空き家バンクで見つけました。少し高台にあり、眼下に広がる海の青が心地いい静かな場所です。
この景色をひと目見たとき、本当にビビッときたんです。これまで思い悩んでいたことが一気に吹き飛ぶくらい、きれいで雄大だったから。
家は古かったけど自分たちでDIYすれば何とかなりそうだったし、ここに移住してゲストハウスをやりたいと家族に伝えました。私、言い出したら聞かない性格なんです(笑)。
夫も息子も、「そう決めたならしょうがないよね」って応援してくれましたね。そして息子が言ったんです。「お母さん、この場所にはロマンがあるね」って。
実際に移住してみていかがでしたか?
甲斐:2021年12月に宣言どおり、単身上天草に移住しました。最初のうちは宮崎と上天草を往復し、週末になると手伝いに来てくれる家族と協力しながら、少しずつDIYを進めていく生活がスタートしました。
古民家の壁を塗り、ふすまや床板を張り替えました。この家に元々あったものをなるべく残し、活用しながら、約1年をかけて空間を整えていきました。
コンセプトは「昭和レトロ」です。古いラジカセや黒電話、昔の少女漫画などが絶妙なアクセントになり、どこかホッとする優しい空気感をつくり出したいと思って。
泊まりに来てくれる方も、お客さまをお迎えする私も、心がふんわり“かる〜く”いられるような場所を目指しています。
ここで、1日1組だけを迎えるゲストハウスのオーナーとして、自分自身も癒やされながら、お客さんとのコミュニケーションを楽しみたいです。畑で育つ野菜を使って一緒にサラダを作ったり、獲れたての魚を捌いたり、数年後に実をつけるブルーベリーやレモンの収穫作業を一緒にしたり、ゲストとの時間はかけがえのない時間になると思います。
DIYは大変ではありませんでしたか?
甲斐:DIY期間は大変なことも多くて、めげそうになったこともありました。
でも、私はこの町だと決めて、高千穂を出てきたんです。家族の応援もあるし、簡単に諦めるわけにはいかないと思いました。
「これは本当に私がやりたかったこと?」と立ち止まり、自問自答し、選択の舵を思い切って切り直したことで、新しい人生が始まりました。
家族と離れて暮らすことで、お互いがそれぞれに対して感謝の気持ちを感じ、より優しくできるようにもなりました。夫と息子はなんやかんや言いながらも(笑)、2人で一緒に料理を作ったりしながら、新しい生活が板についてきたようです。
さらに心配だった交友関係ですが、単身移住してきた私に、集落のご近所さんや移住者交流会で出会った方々とはとてもいい関係性ができ始めました。
下にあるおばちゃんの家にお茶しに行ったり、ご近所さんが「甲斐さんこれ食べんね」と持ってきてくれる魚の代わりに、自家製の柚子胡椒をプレゼントしたり。交流会で知り合ったご夫婦とは早速一緒に食事に行って、また近々行きたいねって話してます。
※ インタビューの内容は2022年12月の取材時のものです
※ 協力:上天草市セカンドライフ支援ネットワーク
出典: 今より少しだけ あたらしい自分へ