移住者プロフィール
稲田 さん
移住時期
2019年2月
利用した支援制度
短期お試し移住
出身地:千葉県、前住所:兵庫県明石市、現住所:静岡県下田市外浦地区、移住定住支援サポーター
目次
INDEX
移住までの流れを教えてください
稲田さん(以下、稲田):2018年9月、移住候補地の石垣島を旅行中、台風21号で関西空港が閉鎖し、兵庫県へ帰れないというトラブルに遭いました。「飛行機に乗らなきゃいけない所はダメだ。暖かくて海綺麗だし、伊豆がいいかも!」と思ったことがきっかけです。その後、「河津&南伊豆の短期お試し移住」を通じて、5泊6日で伊豆に滞在中、下田市役所の移住担当の渥美さんと出会いました。
移住してやりたいと思っていた“漁業”、“畑”、“カフェの起業”について話をし、その日に外浦地区と物件を案内してもらい、外浦の区長さんにも紹介してもらいました。2019年2月に猫2匹を連れて、明石市から下田市へ移住しました。外浦活性化プロジェクト (※)の第一号として歓迎していただきました。
※外浦活性化プロジェクトとは…外浦(下田市) が抱える課題(人口減・少子高齢化による、祭りや海の家、浜清掃など担い手不足による地区存続危機)を外部からの移住者によって活性化を目指すこと。
移住してからの生活はいかがでしたか?
稲田:移住後の約2か月間、家の大改修で夫婦2人して毎日埃まみれになりました。改修が落ち着いてきた頃、ハローワークに通い始めました。私は、下田市役所の臨時職員に採用していただき、「移住定住支援サポーター」として空き家バンクなどの“移住関係の業務”を担当しています。
2020年には昼間の仕事も始め、2つの仕事を掛け持ちしています。夫は、夏の間は朝から夕方までは海の家、夕方からは居酒屋で働いています。仕事や田植え、飲み会など、お声のかかった所へとにかくどこにでも顔を出し、知り合いも少しずつ増えていきましたね。
外浦区の祭りに初参加し、地区の人に“移住者”として紹介してもらいました。2019年には借りた畑で小さな果樹園を作ったんですよ。畑と田んぼに加え、家の隣の別荘の管理人として草刈りに追われましたが、JAの”緑の教室”へ参加して畑の勉強を始めました。
移住定住支援サポーターの活動を具体的に教えてください
稲田:具体的な内容は、静岡県の移住ポータルサイト「ゆとりすと」の取材を受けたり、移住定住サポーターとして「下田移住LIFE通信NO.1」を発行しました。下田のローカルテレビ局の番組「やろーじゃ下田」に出演し、移住について市議と話し合いました。また、市の主催する「下田若者会議」で下田について考えたりしています。
仕事の掛け持ちは大変ではありませんか?
稲田:移住する前に「月3万円ビジネス」の本を読み、1つの決まった仕事だけじゃなく何個も組み合わせる働き方もあるんだと学びました。移住後は夫婦で短期のカフェバイトをはじめ、民宿のお皿洗い、海の家の仕事、地区のお手伝い、下田市の統計調査員など、“季節に合わせて”様々な仕事を経験させてもらっています。
住まいについて教えてください
稲田:下田市には「空き家バンク」がまだ無い時期でしたが、外浦にある空き家の持ち主の方を、市役所の渥美さんに紹介してもらいました。実際に内覧し、その場で即決しました。1
0年以上空き家だったため、雨漏りなど修繕が必要な箇所は所々ありましたが、状態はそこまで悪くなかったです。家の隣には大きな別荘があり、東京の持ち主の方から草刈りなどの管理を頼まれています。
庭が広いので、そちらで家庭菜園もしています。また、2021年1月に山で農地も取得し、4月からは、養鶏場とカフェ、キャンプ場を開くために準備を開始します。本格的なオープンは秋頃からですので、完成したら遊びに来てください。
移住して大変なこと、苦労していることはありますか?
稲田:暖かい時期になると虫(クモ・ゲジゲジ・ムカデ)がたくさん出ることです。また、移住一年目は“税金が高い“です。ガソリン代も高いですね。自然が多いのでイノシシに畑を荒らされたこともあります。家の改修が大変で湿気が多く、梅雨頃から家の中の物がカビてしまったりしました。古い家なので、夏は暑く冬は寒いですね。
移住してよかったところを教えてください
稲田:家賃がかからない上に家が広くなったので、猫がのびのびと暮らしています。夫婦共通の知り合いが増え、野菜や魚などの頂き物が多く、その上自宅の庭で野菜や卵の自家採取できるので、食費が減りました。甥っ子、 姪っ子が遊びに来ると、自然の中で遊べることも嬉しいです。
海が近くすぐに釣りに行けますし、夜に空を見上げると星も綺麗です。市役所で働いているので補助金制度や農機具レンタルなどの情報が入りやすいです。収入は減りましたが支出も減ったので、貯金にまわすことができています。
支出の変化はありましたか?
稲田:移住前もLPガスだったためガス代の変化はありませんでした。下水道料金は浄化槽のためかかりませんが、半年ごとに点検代が発生しています。食費については、移住前と比べると1万円ほど減少しています。夫はほぼ毎日、職場でまかないが出るので、それも大きいですね。テレビは有線ではなく、地デジアンテナを自分で設置したため、加入金や月額利用料はありません。
税金は移住直前までサラリーマンだったので、移住1年目はとにかく高いですが、移住後は年収が下がったので、2年目には税金も下がりました。田んぼや畑を始めたので、軽トラやチェーンソー、草刈り機、耕運機など初期投資のための出費は増えました。
地区についてはいかがですか?
稲田:外浦地区は海の近くなので住民の方も閉鎖的なのかと思いましたが、私たちの噂を聞きつけ挨拶に来てくれたり、親切で優しい方達が多いです。漁業権も3年と他の地区に比べると“短め”で、将来船を持ちたければ船着き場もあります。
自治会費は年間24,000円と他の地区より高めですが、年に一回みんなで行く日帰り旅行の積立も含まれているようです。(※2020年の旅行はコロナの為中止。)定期的に浜清掃や消防訓練など地区の行事があり、一家につき一人は参加するよう言われています。
自治会に入ったり住民票を下田市に移す事が、「地区に受け入れてもらう第一歩」として重要だと感じています。また、祭りや消防団は強制では無いですが、参加する事で顔見知りや知り合いも増え、何かあった時に頼れる人もできました。
近所付き合いの頻度はどうですか?
稲田:晴れた休日は畑に出てくる人も多いので、会えば野菜の成長具合や猪の話で盛り上がります。貰い物をした時、最近は鶏の卵でお返ししたり、手作りケーキをおすそ分けしたりしています。
近所に住んでいる方は高齢者の一人暮らしも多く、台風の時など、「避難するときは一緒に車で行こう」と声をかけ合い、助け合うようになりました。市の職員や移住サポーターが運営する「下田マニア」というグループでのイベントも数ヶ月に一度あり、農協の方や市役所の方などの“下田人”と、移住希望者との交流もとても楽しいです。
移住を検討中の方で畑や田んぼをやりたいと思っている方にアドバイスをお願いします
稲田:自分で野菜を作りたいけど、家に家庭菜園のスペースがない場合、ご近所さんや地元の人に聞くと「耕作放置地」を教えてくれることが多々あるかと思います。よそで借りる場合は、人付き合いや地域柄、水源問題、無農薬などの栽培方法もありますので、特に慎重にならなくてはいけないと思います。
また、「農地の利用権設定」を市へ申請すれば、猪よけの電気柵の半額補助などもありますので、一度市役所へ相談してみるといいかもしれません。
休日の過ごし方を教えてください
稲田:移住1年目は、家のリフォームや畑作り、薪ストーブ作りや薪割り、移住相談会などのイベントへ参加したり、とにかくやることだらけで「毎日が仕事」のような感覚でした。移住2年目はコロナ禍ということもあり、比較的落ち着いた休日を送っていましたが、自分たちの田んぼでの稲作も始まったので、田植え、草取り、稲刈りなどバタバタと過ごしています。
“移住者の友達”も増えてきたので、みんなで旅行へ行ったり、ホームパーティーをしたり、1年目よりも充実した楽しい日々を過ごしています。
今後したいことはありますか?
稲田:「一緒に外浦を盛り上げてくれる仲間」を募集しています。仲間とイベントの企画やカフェの開業でコミュニティ作りをしたいと思っています。
また、手に入れた山を開拓し、キャンプ場を作る準備を始めましたし、外浦区の漁業権を取得し漁業継承もしていきたい。飼っている鶏を増やして養鶏農家として就農、青い卵を下田の特産品にできたらとも考えています。
最後に、移住した感想は?
稲田:移住前は不安だったことも多少ありましたが、話がトントンと進んでいったので流れに身を任す事にしました。ただ、漠然と田舎暮らしをしたらやりたいと思っていたこと(薪ストーブを置くこと、鶏を飼うこと、飲み水を買わない湧水生活、畑や田んぼをやること)が、移住1年目にクリアしているので、移住後の願望を持つことは大切だと思います。
「移住はタイミングと勢い」、そして重要人物となる「人との出会い」だと思うので、皆さんもどんどん現地に足を運んで、色んな方とお話ししてみてください。きっと良い出会いや住むべき場所が見つかると思います!何かお力になれることがあればお手伝いしますので、いつでも お声掛けください!