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プロフィール
多田 朋孔さん
利用した支援制度:地域おこし協力隊
出身地:大阪府大阪市
現住所:新潟県十日町市
職業:農業
趣味・特技:トランペット・ギター
生産物:米
生産者への道を志した経緯やきっかけについて教えて下さい。
2008年の秋に起きたリーマンショックを見て、この先お金を稼ぐだけだと不安定だと思うようになりました。将来的に自分で食べるものくらい、自分で作れるようにならなければマズイのではないかと思ったのがきっかけです。
そんなことをおぼろげに考えていたところ、2009年の5月に現在住んでいる池谷集落で田植え体験があったので参加しました。池谷集落では集落の存続のために後継者を受け入れようとしていて、地域おこし協力隊を募集していました。
それを見て「これだ!」と思い、地域おこし協力隊に応募しました。その後、仕事の引き継ぎなどをしてから2010年2月に池谷集落に移り住みました。
生産物の魅力について教えて下さい。
池谷・入山集落は、全国的に有名な「魚沼産コシヒカリ」の産地です。
直販でご購入いただいているお客様からは、とても好評を頂いております。その理由として大きくは以下の3点があります。
- 豊かな自然に育まれる
冬になると、3メートル以上雪がつもる池谷・入山集落。春になると解けた水が大地にゆっくり浸透し、ミネラルをたっぷり含んで田んぼに注がれます。
田んぼにはカエルやどじょう、水生昆虫など生き物が沢山棲んでいます。中には絶滅危惧種の生き物もいて、それだけ水のきれいな環境です。初夏にはホタルも飛び交い、そして山地だからこそ、昼夜の寒暖差によりお米の甘味がぎゅっと増します。 - 安心・安全を食卓へ
私達はできるだけ安心安全な米作りにこだわっています。
全く農薬も化学肥料も使用しないで天日干しした「はざかけ米」と、減農薬で新潟県の認証を得た「特別栽培米」を作っています。
特別栽培米では、農薬は2回だけ使用しています。
1回目は田植え直前に病害虫の予防のため苗箱に施用する薬で、2回目は田んぼの中の雑草を抑えるための除草剤を使用しています。
通常だと穂が出る時期にカメムシ予防としてヘリやドローンによる防除を行うケースが多いのですが、私達は一切防除は行っていません。
田んぼの畦や農道は草が伸びるとカメムシが発生して稲に被害を与えたり、軽トラや農機具を運転する際に草が邪魔になり、道路と斜面の境目がわかりにくくなって危険になったりするため、除草剤を使って処理している農家も多いですが、私達は農道や畦には除草剤を使用せず、全て草刈りをしています。 - 精米後直ぐに発送
お米は生き物なので精米後徐々に劣化していきます。私達は玄米のまま保冷庫で低温保存し、独自の精米プラントで精米後すぐに発送しています。
十日町市の魅力について教えて下さい。(自然やグルメ、オススメスポットなど)
完全な山の中に住んでいるので、自宅の周りは大自然に囲まれています。四季折々の景色や生き物の声などが癒しを与えてくれます。
やろうと思えば庭先でBBQやテントを張ってキャンプもすぐにできます。このような自然の中に暮らしながら、インターネットはしっかりとつながっていますので、買い物にも困りません。注文して早ければ翌日には届きますので、都会に住むのとほぼ変わりません。
街中のスーパーやホームセンター、十日町駅には車で20分程度で到着しますし、新幹線の駅である浦佐駅にも車で30分程度で行けますので、交通アクセスとしても比較的便利だと思います。
つまり、自然の山奥に住みながら、現代的な生活も送れるといういいとこ取りができるのが良い点だと思います。
また、十日町市ではよそ者の受け入れに慣れている人が多くなってきているので、地域に馴染みやすく、周りの人たちとも日々楽しくお付き合いさせてもらっています。
お仕事のやり甲斐はなんですか?
自分で食べるものを作れるというのがとてもやり甲斐を感じる点です。
また、自分が生産したお米や野菜を人に食べてもらった時に「美味しい」と言ってもらえる事も嬉しいですしやり甲斐を感じる点です。
稲作農業は1年に1回で、天候は毎年違います。正直とても難しく、部分的に失敗することも多いですが、毎年毎年改善を繰り返して徐々に良くしていくという事ができるのも自分の成長を感じられます。
成長という点では、作物も日々成長していきますので、その様子を見るのも喜びを感じられる点です。
そして、生産したお米をふるさと納税やインターネット通販で直販をしているのですが、そのPRのために日々の生産現場での様子をYouTubeで発信をしたところ、それなりの反響もあり、YouTubeで私のことを知ってくれてお米を買ってくださるという方が出てきた事もやり甲斐になっています。
ちなみに私のYoutubeチャンネルのリンクはこちらです。
https://www.youtube.com/user/chiikiokoshi
仕事していて大変なことや困難だと感じることを教えて下さい。
上記にも書きましたが、米作りは1年に1回しかチャレンジできないのに、毎年天候が違うため、なかなか思ったようにいかない事も少なくありません。ひどい年には収穫量が少なすぎて大赤字になってしまった事もあります。
また、最近は雪が少ないからか、地域でイノシシの被害も出るようになり、その対策も必要になってきました。地域の高齢農家が亡くなっていき、田んぼを引き継いでいるうちにかなり面積が増えてしまったので、田んぼの管理がとても大変になってきたという問題もあります。
特に大変なのが、草刈りです。私が耕作しているエリアは中山間地の棚田で、農業の生産性を考えるととても効率が悪い上に、斜面が多く草刈りをする面積も多いです。
あまりにも大変なので、今年からは棚田オーナーの方々にも「ガチ勢による草刈り」という形できちんと日当を支払って草刈りを一緒に手伝ってもらうようにするなど、工夫していこうと思っています。
今後の展望や、挑戦してみたいことについて教えてください。
今は食べる物は作れていますが、農業機械などはガソリンや軽油や電気といったエネルギーがないと使えません。なので、将来的にはエネルギーも地域で賄えるような仕組みづくりをしたいと思っています。
ひとつ具体的な事としては、私の住む地域には昔「水力発電所」があったので、これを復活させて自分たちの地域の電力を自分たちで賄えるようにしたいと結構本気で考えています。
地域の人たちにも少しずつ水力発電の話をしたら良い反応が返ってきています。もちろん河川の水の使用や地主の許可など数多くのハードルがあるので、すぐにというわけにはいきませんが、長期的には実現できるように目指したいと思います。
現段階ではとても採算が合わないと思いますが、ガソリンや軽油に代わる燃料として、耕作放棄地でバイオエタノールを作りたいと思っています。将来の世界の人口爆発に対して日本の人口が減っていたり、円安でどんどん日本が安い国になればどこかで採算が合う時代が来るかもしれません。その時期が来たら、実現に向けて具体的に動き出したいと思います。
移住して一次産業を目指す方へメッセージをお願いします。
農業はとても難しい業種だと思います。経済的に不自由しなくなるまでには何年もかかります。
なので、安易な気持ちやお金目当てだけだと長続きしないと思います。
ですが、長く続けて経験を積むと経済的にも安定してきますし、農業を長く頑張っていると、地域の人たちからの信頼が相当高くなります。そうなると、暮らしてても居心地が良いですし、何よりも自分が食べるものを自分で作る事ができるというのは、今の時代ものすごい安心感につながると思います。
ですので、しっかりと腰を据えて挑戦する事ができればうまくいくと思います。
まさに「継続は力なり」という言葉が本当に実感できますので、長い目で頑張って下さい。