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プロフィール
一心農園
所在地:和歌山県伊都郡九度山町
業種:専業農家
商品:柿・ブドウ・その他果樹・農産物の加工品
会社URL:https://issin-nouen.jp/
会社の事業内容を教えて下さい。
当農園は2000年に創業し、2011年からは専業農家として約150aの畑で、富有柿を中心に葡萄や栗などの果実を生産・販売しています。
「家族全員が協力し、心を一つにして日本一美味しい柿を作ろう!」という思いを込めて、一心農園と名付けました。また、2013年からは九度山町商工会の協力を得て、本格的に6次産業化に取り組み、2021年には加工所を増設しました。
現在は、柿の一次加工を中心とした加工品の販売にも力を入れ始めています。
商品(サービス)の魅力について教えて下さい。
『美味しいものを届けたい!その一心で!』をモットーに、私たちは果実本来の自然な味わいを引き出すことにこだわりを持っています。
土壌改良に努め、味に影響を与えるとされる除草剤は一切使用せず、うまみ成分がたっぷりと含まれた有機肥料を施して果実を栽培しています。私たちは食べた人が笑顔になる様子を思い浮かべながら、日々農作業に励んでいます。この思いは加工品にも通じており、味への強いこだわりを持って取り組んでいます。
その中でも、代表作である「柿アイス」は、顧客からの「年中美味しい柿が食べたい!」という要望に応えるために生まれました。初代農園主の『季節を問わず美味しい柿を届けたい!』という熱い想いと、製造業者である株式会社カワの情熱が結集し、3年の歳月をかけて完成した最高傑作品です。
お客様が食べた瞬間に「あっ!柿!」「一心農園の柿の味を思い出す」と言ってくださるほど、柿の風味をしっかり感じられるアイスです。リピーターも多く、皆様に愛される商品となっています。
お仕事のやり甲斐はなんですか?
当園では、直売や各種イベントでの個人販売が主な形態であるため、お客様のご意見やご感想を直接お聞きする機会が多くあります。良い点はそのままに、改善が必要な点については、工夫を凝らしながら日々の作業に取り組んでいます。
おかげさまで、顧客の80%以上がリピーターです。「一心さんのものを食べたいから、見た目や値段は気にしない」「一心さんのものしか食べられない」「こんなに美味しい柿(ブドウ)を食べたことがない」「来年もよろしくね」といったお言葉をいただくことが、暑い日や寒い日の作業の励みになっています。
また、当園の果物や加工品を気に入ってくださったお客様が、新たにお客様や販売場所を紹介してくださることもあります。人との縁やつながりを大切にしながら、時には農作物に話しかけたりと、基本的に手をかけた分だけ良いものができるという実感が、私たちにとって何よりのやりがいです。
仕事していて大変なことや困難だと感じることを教えて下さい。
家族経営のため、常に作業に追われており、時間に余裕がないのが現状です。また、鳥獣害も大きな課題となっています。空からはカラスやヒヨドリ、地上からはイノシシやアライグマなどの小動物が果物を狙い、動物たちとの知恵比べが日常茶飯事です。
さらに、最近の異常気象によって予測が難しいこともあります。例えば、ブドウは暑すぎると樹上で干しぶどうのようになったり、色がこなかったりします。(*「色がこない」とは色付きが悪いという意味です)昨年は、8月末にペットボトルの蓋ほどの大きさの雹が降り、柿の実に穴があいてしまい、そこから9月の大雨で病気が広がりました。その結果、収穫前に実が落ちてしまい、収穫量が激減しました。
また、カメムシによる被害も馬鹿にできません。味に影響はないものの、凹みが出来てしまうなど見た目が悪くなったりと毎年同じ品質のものが収穫できないことが難しさの一つです。そのため、ご注文いただいても応じられなかったり、贈答用の商品が用意できないことがあります。こうした状況では、商品のランクの変更をお願いするための連絡など想定外の事務作業が発生することもあります。
今後の展望や、挑戦してみたいことについて教えてください。
当農園で最も多い「甘すぎる」というクレームを回避するために、発送できないものや見た目が悪く販売できない柿が、未だ20kgコンテナ約50杯、およそ1tもあります。以前に比べ半減したとはいえ、これは、当農園の富有柿の収穫量の約6tのうち、1/6の量です。
こうした問題を解決するために、加工所を増設しました。冷凍保存の設備が整ったことで、廃棄がほとんどなくなり、余った柿を瞬間凍結して長期間冷凍保存することができるようになりました。その一部を新たな加工品の製造に回すことで冷凍したものを廃棄するというようなロスをなくしていくことが、今後の課題です。また、ブドウなど他の果実についても、廃棄レスを目指していきます。
さらに、問い合わせがあるにも関わらず、人手不足のため断り続けてきた自宅販売にも力を入れ、今まで以上にお客様のご要望にお応えできるように対応していく予定です。将来的には、自家生産したさまざまな果実を使ったパフェなど新商品の販売も行いたいと考えています。
地域の魅力について教えて下さい。
九度山町は、戦国武将・真田幸村ゆかりの地として知られており、和歌山県内でも「ひと味違う」と評されるほどの富有柿の名産地です。
この地域は自然豊かで、空気が澄み、星空が美しい場所です。山や川もあり、蛍が舞う光景やヤマビコの響きを楽しむことができます。今もなお、近所との繋がりが強く、助け合いやお裾分けの精神が根付いており、心が和む地域です。
買い物には車が必須で、不便なこともありますが、役場や商工会・振興局など、どこに行ってもみんなフレンドリーで親切です。特に当農園がある地区は、都会と田舎の中間のようなエリアで、利便性と自然の魅力が調和しています。
当農園の事務所兼加工所である一心庵には釜戸や囲炉裏もあり、静かな環境の中で、時間を忘れて過ごすことができます。この地域は、災害があっても助け合いの精神で乗り越えられるような温かさが感じられます。
交通の便も良く、南海高野線が通っており、電車でのアクセスも便利です。車を使えば、大阪までも1時間ほどで行くことができます。
移住して地方の仕事を志す方へメッセージをお願いします。
九度山は、主人の母の故郷です。私自身も、九度山の柿の大きさと美味しさに魅了されて柿作りを始めたという経緯があり、私自身が移住者のようなものです。
最初は何も分からず、農業大学校の社会人教室に参加したり、近所の方々にいろいろと教えていただいたりしながら、手探りで農業を始めました。実際、手を抜こうと思えばそれなりのものは作れますが、手をかければかけるほど良いものができることを実感しています。
時間の使い方も自分で工夫して作り出します。夏は暑く冬は寒いので大変なことも多いですが、その分やり甲斐も感じています。
息子は地元の農芸高校に通い、その後1年間ブドウの栽培について研究所で勉強してから就農してくれましたが、私は縁あって農家となりました。多くの方々の助けを受けながら現在に至っております。農業に携わり、多くの方々と関わることが出来、本当に良かったと思っています。
これから先、農家の高齢化が進む中で、農地がたくさん余ってくると思います。新規就農者や移住者への支援事業も整っていますので、自然を愛し、本気で農業に取り組みたい方の移住をお待ちしています。