移住者プロフィール
堀 さん
出身地:静岡県、前住所:東京都、奈良県、現住所:静岡県静岡市、職業:老舗雑貨店「三保原屋」10代目
目次
INDEX
- 故郷である静岡市にUターンした経緯を教えてください
- 公認会計士、中川政七商店での経験と、家業を継ぐための準備を着々とされてきたと思うのですが、静岡に戻られたのは、その準備が整ったタイミングだったからなのでしょうか?
- 当初継ぐことを考えていなかった家業を、「継ごう」と思った理由はなんだったのでしょう?
- 家業を継ぐということは、大きな決断ですよね。事業承継をする上で、意識していることはありますか?
- 東京、奈良での生活を経て、静岡に戻ってきたわけですが、戻ってくる“前”と“今”では、違いはありますか?
- 静岡を「知る」ことで好きになったとは、具体的にどういうことでしょうか?
- その他に、静岡で暮らす上で、良いところはありますか?
故郷である静岡市にUターンした経緯を教えてください
堀さん(以下、堀):公認会計士として東京で働いた後、より説得力を持った仕事ができるようにと、奈良の中川政七商店にて経験を積みました。現在は、家業で創業333年の老舗雑貨店「三保原屋(みほはらや)」の事業承継のため、静岡へ帰ってきました。「より知ること」で、静岡が好きになりましたね。
公認会計士、中川政七商店での経験と、家業を継ぐための準備を着々とされてきたと思うのですが、静岡に戻られたのは、その準備が整ったタイミングだったからなのでしょうか?
堀:実は、元々実家を継ぐ気はありませんでした。父も自分の代で店を終わらせても良いと考えていたようですし、家業があることで、それを継ぐのが“当たり前”と見られるのも嫌でした。
公認会計士の取得は、特に明確な理由があったわけではないです。ただ、公認会計士としてのコンサルの仕事は、失敗してもあくまで他人のビジネスなので、自分には痛みがないと感じていました。
転職したのは、経営の意思決定に“数字を正しく活かす”には、コンサルではなく、「実業」をする必要があると感じたからです。一方で、コンサルにも一定の興味はあったので、実業もコンサルも兼ね備えている「中川政七商店」へ転職しました。
静岡へ戻るきっかけとなったのは、奈良にいるときに子供が生まれたことです。ライフステージが進むにつれて、子育ての環境、妻の生活、両親のこと、家業などを改めて考えた時に、どこかにちゃんと「軸」を置いて生活するべきだ、と思い、静岡へ戻ることを決意しました。
当初継ぐことを考えていなかった家業を、「継ごう」と思った理由はなんだったのでしょう?
堀:これまでの経験により、実家の経営に役立つ知識を有していたことが、家業を継ぐ上での後押しになりました。それ以上に、今まで「三保原屋」が培ってきたお客様や従業員との関係性を終わらせてしまうのは、あまりにも勿体無いと思ったんです。
終わらせてしまったら、二度と継ぐことはできなくなってしまうので、それなら「一度やってみよう」と。
家業を継ぐということは、大きな決断ですよね。事業承継をする上で、意識していることはありますか?
堀:確かにそうですね。事業承継は、人生の一大イベントになるほど、大きく魅力のある取組になると思います。「三保原屋」に限ったことではなく、全国的にも、同世代で取り組んでいる人が多いですね。
その中でよく聞くのは、“人(顧客)を見る目”を養うために、現場から始まり、全てのレイヤーの仕事を経験することが大切という話です。また、会社によって、正しい方法・順番・スピードがあると思うので、急ぎすぎず時間をかけて行おうと思っています。
「三保原屋」各店舗の良さを活かしつつ、時代に適合できるよう、道を踏み外さないようにしたいと思います。
東京、奈良での生活を経て、静岡に戻ってきたわけですが、戻ってくる“前”と“今”では、違いはありますか?
堀:東京で会計士をしていた頃は、静岡のことを自信持って「好き」とは言えなかったですね。丸の内でスーツを着て仕事をするって格好良いなと思っていましたし、正直、帰りたいと思ってもいませんでした。でも実際は、そんな生活をしていても、虚しさと疲弊感が強かったんです。
見栄を張っているような感じ、といいますか。今は、様々な機会を通して静岡のことを「より知る」ことが出来て、好きになりました。
静岡を「知る」ことで好きになったとは、具体的にどういうことでしょうか?
堀:単純に、静岡のことを知らなかったんです。静岡の産業や文化のこともよく知らなかった。でも今は、お客さんや生産者さんとの対話など、様々なことを通して、静岡の良さを知る機会が増えています。人の雰囲気に関してもそうですね。
他県から店舗にお越しになったメーカーさんと話していた際、お客さん同士が自然と順番を譲り合ってくださっているのを見て、『三保原屋さんは良いお客さんをお持ちですね』と言われることがよくあります。
また、静岡は、小規模ながら資源や産業も豊富で、知り合いを介せば、「どこまでも人脈が広がる」ことも、地方ならではの面白さだと思います。文化の面でも、静岡はもっと胸を張って良いと思いますね。
徳川家康が育ち、晩年を過ごしたということもあり、浅間神社や久能山東照宮など文化的価値が高い場所も多いですから。
その他に、静岡で暮らす上で、良いところはありますか?
堀:働くこと、暮らすことは、社会的な“つながり”や“自己実現”だと思っています。1人で生きていけるほど、人間は強くありません。インターネットであれ、リアルであれ、どこかで人と“つながって”います。そういった意味でも、人との“つながり”を持ちながら暮らすには、「適度に狭く、適度に広い」静岡は良いですね。
妻は東京出身で、移住に際して当初は不安も持っていましたが、静岡は東京や名古屋などの影響を程よく受けているためか、馴染みやすかったようです。
街中から車で15分~30分も走れば、山・川・海がある一方で、東京まで新幹線で1時間で行く利便性も兼ね備えていますしね。市街地が集合していて、平地が多いため、自転車で移動しやすいことも生活のしやすさにつながっているようです。