移住者プロフィール
永井 康統さん
移住時期
2018年
出身地:神奈川県、現住所:福島県福島市、職業:NPO法人0073(おおなみ)
目次
INDEX
風評被害を目の当たりにして、どのような活動をしましたか
永井:その第一歩として休日を利用し、地元神奈川県の友人を中心に大波米の売り込みを開始しました。当時、福島の米はスーパーで売っていなかったし、まずは「おいしいかったら買って」と試食品を提供したんです。そうしたら、「おいしかったから買うよ」と言っていただけるようになりました。
最初は勢いもあったと思いますが、今も続いているのは、本物だからだと思います。自分でも大波米を食べて衝撃を受けました。今まで俺は何を食べていたんだというくらい。口コミで評判が広がった結果、販路も拡大し、2019年度は約8トンの販売実績があります。
転勤先の福島市で、何か活動の変化はありましたか?
永井:転勤して福島市に住み始めた当初は、県立美術館近くのアパート住まいでした。その後、地域のことをもっと知りたいという思いから、大波地区への引っ越しを決意しました。大波地区にはアパートはなかったので、自治会長さんに家を借りたいと相談したのです。その際は、大変驚かれました。原発事故の影響が大きく出た地域に、東京電力の社員が住むという状況です。
いちばん心配だったのは人間関係でした。地元の人たちとうまくやれるのか不安はありました。「東電社員の私にお米を売ってくれるのか」「一緒に動いてくれる人がいるのか」と。
実際に、大波地区への引っ越しをしてみていかがでしたか?
永井:引っ越し後は大波地区復興のために一生懸命に活動する熱意が地元住民にも伝わり、信頼関係を築くことができました。その後、東京電力を退職し、NPO法人を立ち上げました。2018年には、地域おこし協力隊としても働くことになりました。
最初は「畑も田んぼもあるからやらないか」って声を掛けていただいたんですが、自分が得意な販売や加工に専念することに決めました。
ご自身の得意分野で復興活動をしたのですね
永井:大波米の販売と並行して、近年はサツマイモの加工商品の開発販売に力を注いでいます。干し芋、冷凍焼き芋、無加糖プリン。甘いサツマイモが作れるかが重要ですが、加工方法と販売場所を検討中です。また、後継者を呼び込みたいと思っていたら、嬉しい出会いもありました。
冬に体験に来てくれた加工に興味のある県外の若者が、春から新規就農を目指して移住してきてくれました。今後も新規就農を目指す若者のニーズに合わせた支援をして、移住者を獲得していきたいと思っています。
小学校が廃校になり、地域と子供たちとのつながりも希薄になる中で、新しいアイデアがあったそうですね
永井:両親が共働きという子供が多く、スクールバスで学校に通っている小学生を対象に、寺子屋として遊びや勉強の場を設け、食事を提供する活動を実施しました。
この活動は、子供連れの移住者を引っ張ってくることが狙いです。一人での活動なので今は月2回が限度ですが。地域の学校がなくなると、保護者とのつながりや地域のつながりが全くなくなってしまいます。
個人情報もあるし、お年寄りは把握されていても子供の状況までは分からないというのがあります。子供たちの面倒を見ることで、学校とのつながりも出てきたし、楽しくやらせてもらっています。流しそうめんを実施したり、子供たちにとっても貴重な経験になっていると思います。
子供のいる家庭には嬉しい活動ですね。他にも新しいアイデアが?
永井:さらに地域復興活動の一つとして、大波地区の交通手段がない高齢者を対象に、週に1回、最寄りのスーパーから自宅までの片道のみ無料で送迎する仕組みを作りました。デイサービスでのバスの使用は朝と晩のみだから、空いている時間を貸してもらえないかなと。
運転は自分がやるのを前提に施設にお願いしたら、運転も全部やってもらえることになりました。小さな村社会では「お互い助け合いましょう」という気持ちがありますね。都会でそんなこと言ったら金銭問題が出てくるかもしれませんが、田舎ならではです。
今後の目標をお伺いできますか?
永井:2021年に地域おこし協力隊の任期が終わるので、後任を引っ張ってこられると良いなと思っています。狙いは6次化が得意そうなパティシエ。サツマイモがペースト状になったもので何が作れるか。砂糖なしの自然の甘味で出来る食べ物は、女性にとって興味のあるものが出来るのではないかと思っています。
それに付随して、サツマイモを使った商品をブランド化することで、年間を通してサツマイモ商品を作りたいです。
浜通りへ行き来する際は、みんな東北中央自動車道を使うでしょうから、これからも交通量はきっと変わらないはずです。季節ごとの商品のバリエーションを増やして、「大波を通るならこれ買ってきて!」と家族に言ってもらえるように展開していきたいと思っています。
移住を考えている方へメッセージをお願いします
永井:福島市はコンパクトで生活しやすい所です。市街地も車で15分、そして米も野菜も果物も美味しいです。自然も豊かで、大波を含めた中山間地帯は、夏でもエアコンなしで安眠できる避暑地なところもおすすめです。首都圏在住者からすれば、人も温かく、果物が充実していて羨ましい地域だと思います。
そしてなにより、信夫山の烏ヶ崎からの眺めは最高です!温泉がいっぱいあるのもいいです。でもいちばんは米です。大波米は冷めた時においしさが際立つので、弁当屋さんにも褒められたんですよ。