移住者プロフィール
小島 雅彦さん・絵奈子さん
所在地:新潟県胎内市、業種:自営業(米粉パン屋)、家の築年数:50年くらい
目次
INDEX
- どのような経緯で空き家に住むことを決意しましたか?
- 空き家を見つけるために利用した手段やサービスについて教えてください。
- 入居前の空き家の状態や実施した修繕、リフォームの内容について教えてください。
- 支援制度を活用した場合は詳細を教えてください。
- 空き家暮らしを始めてからの日常生活の変化や感じたことを教えてください。
- 空き家暮らしで困ったこと、苦労したことについて教えてください。
- 地域の人々との交流や関係性の構築について大切だと感じることを教えてください。
- 今後も空き家での生活を続けたいか、その理由について教えてください。
- 地域の魅力について教えてください。
- 空き家暮らしを検討中の方に向けてアドバイスやメッセージをお願いします。
どのような経緯で空き家に住むことを決意しましたか?
「米粉発祥の地」である新潟県胎内市で米粉パン屋を開業したいと考え、市の空き家バンクに登録して手頃な物件を探していました。その際に紹介していただいたのが、現在住んでいる平屋です。この空き家を選んだ決め手は、家そのものの雰囲気、周囲の環境、そして近隣住民の温かさでした。
私たち夫婦はもともと古民家が好きで、土間や縁側がある昔ながらの日本家屋に魅力を感じていました。この家は庭の広さも程よく、古き良き日本の趣を残しており、すぐに気に入りました。また、近くには温泉や海があり、裏には広い駐車場(かつてのコンビニ跡地)もあるほか、窓からは風力発電の風車が見えるという素晴らしい環境も大きな魅力でした。
さらに、地域の方々の優しさも決め手となりました。通りすがりに声をかけていただいたり、野菜や魚のお裾分けをいただいたりと、移住者の私たちを心から歓迎してくださる温かい地域性に感動しました。
空き家を見つけるために利用した手段やサービスについて教えてください。
空き家バンクへの登録と並行して、自分たちでも市内のオープンハウスやモデルルームを訪れ、この地域の特色やリフォーム費用の相場について情報収集を行いました。
また、空き家の利用目的が米粉パン屋の営業という特殊なものであったため、保健所や消防署、水道局に加え、地元の電気・ガス業者の方々から専門的なアドバイスをいただきながら、住居兼店舗づくりの計画を進めました。
当時は仕事を続けながら情報を収集していたため、非常に大変だったことを覚えています。その経験から、情報が一元化された公的な支援サービスがあれば、もっとスムーズに進められたのではないかと感じました。
入居前の空き家の状態や実施した修繕、リフォームの内容について教えてください。
入居前は、空き家の一部をリフォームして米粉パン工房を作る予定でした。しかし、実際に住んでみると、この家の素敵な雰囲気を壊したくないという考えで一致し、家のリフォームは行わず、庭にユニットハウスを設置して工房を作ることにしました。
また、前の住居者が残してくださった家具や備品がこの家の雰囲気に非常に馴染んでいたため、今でもそのまま大切に使わせていただいています。
庭の工房で作った米粉パンは、家の玄関で販売しています。来店された地域の方々からは、「懐かしい」「雰囲気が変わらず嬉しい」といった温かいお声をいただいており、地域の方々との交流のきっかけにもなっています。
支援制度を活用した場合は詳細を教えてください。
市内を回りながら住居兼店舗に適した物件を探している際、飲食店のオーナーさんやモデルハウスのスタッフさんなど、多くの方々とお話しする機会がありました。その中で、あるカフェのオーナーさんから空き家バンクの存在を教えていただきました。
そのオーナーさんも、空き家バンクを通じて現在の店舗を見つけたそうで、手続きの流れや空き家バンクを活用する際のメリット・デメリットについて、実体験を交えながら詳しく教えてくださいました。
空き家バンクのメリットとして、地域の安価な空き家情報が一元化されている点が挙げられます。一方で、デメリットとしては、そのまま住める物件が少なく、多くの場合リフォームが必要になるという点もありました。
空き家暮らしを始めてからの日常生活の変化や感じたことを教えてください。
日常的にDIYをするようになりました。これまでのようにすぐ業者さんに依頼したり、新しい商品を購入したりするのではなく、修繕や補強をどうすれば良いか、庭の手入れには何が必要かを、人に聞いたりインターネットで調べたりしながら、自分たちで作ったり直したりすることが増えました。
最初は慣れないことも多く、不便に感じることもありましたが、一度挑戦すると次からはスムーズにできるようになり、さらに費用も抑えられるため、今ではDIYを楽しんでいます。むしろ、「次はどこを直そうか」「何を作ろうか」と、DIYができそうな場所を探しながら生活するのが日常になりました。
空き家暮らしで困ったこと、苦労したことについて教えてください。
最も苦労したのは、電気ブレーカーの容量が小さいことでした。エアコンやドライヤーなど電力消費の大きい家電を使うと頻繁にブレーカーが落ちてしまい、50年前と現代の使用電力量の違いを痛感しました。
さらに、各部屋のコンセントの数も非常に少なかったため、容量の大きいポータブル電源を購入し、必要な部屋へ移動させながら電力を供給する方法を取りました。ただ、これは将来的にキッチンカーを購入して移動販売を始める計画があるため、車内電力の供給方法を考える良いきっかけになったとも思っています。
また、消費電力量が大きい古いエアコンは廃棄し、ポータブルタイプのエアコンに買い替えました。どの部屋でも、さらには車内でも冷暖房を利用できるようになり、快適性が大きく向上しました。
地域の人々との交流や関係性の構築について大切だと感じることを教えてください。
笑顔で挨拶すること、そして地域性を理解することが、とても大切だと感じています。笑顔での挨拶は、関係性を築く基本であり、地域の方々が何を大切にし、どのように生活しているのかを理解することで、より深い交流が生まれると思います。
私たちは米粉パン屋を開業する前から、この地域のイベントやお店を訪れ、積極的に声をかけるようにしていました。そのときに出会った方々とのつながりは、今でも私たちにとって貴重な財産です。
今後も空き家での生活を続けたいか、その理由について教えてください。
はい、今後も空き家での生活を続けたいと考えています。私たちは、小さな米粉パン屋や米粉パン教室をこれからも続けていきたいと思っていますが、アパートやマンションの一室では運営が難しく、工房付きの家を建てるには高額な費用がかかります。
現在のスタイル、つまり空き家を安価に賃貸または購入し、その家の魅力を活かしながら、最小限のリフォームやユニットハウスの増設で営業する方法が私たちに合っていると感じています。
私たちのこの生活スタイルが、空き家に新たな価値を生み出し、地域に活力を与える一助になると信じています。
地域の魅力について教えてください。
胎内市の最も大きな魅力は、食材が豊富で美味しいことです。「日本一小さい山脈」である櫛形山脈と日本海に挟まれた越後平野に胎内川が肥沃な大地をもたらし、寒暖差の激しい気候が食材を美味しく育て上げるのだと思います。
また、市内には、米粉、糀、水、ワイン、ビールなど天然資源を活かした食品会社や食料と農業に関する高等教育機関があり、その貴重な食材や食文化を今に伝えています。それらを地域おこしに繋げる活動も活発で、食に関するイベントが各地で毎月のように行われていたり、地元の食材や米粉が学校給食に積極的に取り入れられていたりしています。
空き家暮らしを検討中の方に向けてアドバイスやメッセージをお願いします。
空き家には、自分たちが住みやすいようにカスタマイズする楽しさがあります。また、築年数がかなり経過していることも多いため、安価で、多少の傷や汚れも気にならず、気楽に住むことができます。
不便なこともあるかもしれませんが、現代に生きる私たちはインターネット上に溢れる様々な情報や、最先端の家電や100円で買える便利グッズの数々を手にすることができるので、不便さを楽しむことができると思います。
コロナ禍を経て飛躍的に発達したリモート通信環境によって住みたい地域でやりたい生き方がしやすくなった今、より多くの方が空き家暮らしという生き方を選び、放棄される家やシャッター街を減少させ、地方を元気にしてもらえたら嬉しいです。