移住者プロフィール
佐藤 麻奈美さん
利用した支援制度
地域おこし協力隊
北海道安平町の地域おこし協力隊、趣味・特技:美味しいお酒を飲むこと・旅行・温泉・対話・韓国語
目次
INDEX
地域おこし協力隊の応募動機について教えて下さい。
子育てに求める環境と働く環境が同時に叶う機会だったからです。広い土地でのびのびと子育てしたいと考えていましたが、移住先で希望する仕事を見つけられるかが大きな課題でした。
この地域おこし協力隊「コミュニティ×共創実践者」は少しユニークで、課題解決型でありながら、隊員の持ち味を活かせる余白がありました。安平町の中で最も少子高齢化の進む安平地区で住民主体のコミュニティ運営をサポートする任務に加えて、自分の経験や技術を生かしたアクションを起こすことも求めるものです。
私自身はこれまで大学院で子どもの遊び研究に携わったり、保育士として保育園で働いてきましたが、子どもの主体性を尊重する保育の価値が保育園の中だけに閉じられることに、もどかしさを感じていました。もっと多様な大人を巻き込んだ地域に開かれた形での保育・子育て環境を実現できないかと模索していました。
この地域おこし協力隊は、町全体として子育てや教育に力を入れている環境で、地域住民の方々とコミュニケーションを図りながら、そうしたチャレンジができる絶好の機会だと思い応募しました。
北海道安平町を選んだ理由について教えて下さい。
移住前は札幌の都心部に住んでいました。息子が小規模保育園(3歳未満)を卒園するにあたり転園先を探していましたが、3歳児は待機児童も深刻で、通わせたい保育園を見つけられませんでした。
都心部には広い園庭を持つ園がなく、毎日整列して近隣の公園に遊びに行く必要があり、その環境は好奇心の強い息子の性格を考えると適していないと感じました。思い切って移住も視野に入れ様々な保育園を探していたところ、「はやきた子ども園」を知り、広い園庭や畑、田んぼ、森、馬のいる環境や、子どもの主体性を尊重する保育理念に魅了されました。
また向かいに町立の早来学園があり、中学生まで連続性のある教育が受けられることも安心感につながりました。町全体として子育て・教育に力を入れていることがとても心強いと感じました。
新千歳空港から近い立地であることも移住の決め手となりました。本州に住む親戚や友人も訪ねやすく、旅行にも出かけやすいです。
地域おこし協力隊の仕事内容について教えて下さい。
安平町内で最も少子高齢化が顕著な安平地区の活性化を目的として設立された「安平地区まちづくり協議会」の事務局として仕事しています。活動は、生活支援事業、交流活性化事業、閉校活用プロジェクト事業など多岐にわたりますが、協議会自体ができたばかりなので、一つ一つ手探りで進めているところです。
親子の居場所づくりのきっかけとして親子遠足や流しそうめんを企画したり、夏には「あびら地区夏フェス」を開催しました。地元の食堂や地域の方が営むキッチンカーがビールや食べ物の出店をしてくださったり、事務局メンバーの集落支援員が子ども縁日を開いてくださったり、地元の和太鼓の先生に太鼓をたたいてもらいながら子ども盆踊りを踊ったり楽しいイベントになりました。
チラシやポスター、ビール前売り券などもすべて手作りで、子ども縁日のチケットは中学生が作ってくれました。すべてを一から作り上げていく過程は、まるで学生の頃の文化祭を思い出させるようなワクワク感がありました。
地域おこし協力隊のやり甲斐はなんですか?
前述のように「安平地区まちづくり協議会」の事務局として働いていますが、このような地区活性化に特化した組織の設立は、町としても初めての試みで、事務局にとってはもちろん、役場の方にとっても、協議会の役員の方にとっても、住民の方々にとっても、すべてが初めての経験です。
そもそも「安平地区まちづくり協議会って何?」という状況からのスタートでした。そうした手探りの状態で、地域の方々と合意形成を図りながら、一つ一つ形にしていく仕事は、創造性があり、とてもやり甲斐があります。
安平町で活動する10名の協力隊が集まる研修や、先日は胆振管内の協力隊の交流会もあり、多様なルーツで多様な活動をしている方々とお話ができ、課題を共有したりアイディアをもらったり、広い視野で学べる機会が多いこともやり甲斐に繋がっています。
地域おこし協力隊になって想定外だったことを教えて下さい。
当然といえば当然なのですが、同じ安平町でも、地区によって文化や風土が異なるということです。移住前は、地理的にどこが利便性がいいかな、という観点で居住地区を探していましたが、住む地区によって人付き合いのあり方にも違いが出てくるというのは大きな気づきでした。
安平町は旧追分町と旧早来町が合併した町なので、大きく二つのまとまりがあります。さらにその中でも集落によって、雰囲気に違いがあると感じています。
例えば安平地区は高齢化が進んだこともあり外でお酒を飲む習慣があまりないようで、居酒屋が一軒もないことは、お酒好きの私にとってはちょっと寂しいことでした。代わりに、地域の方々と家庭菜園を通じて繋がれていることが日々の喜びです。
協力隊2名募集のところに、まだ私1人しか着任していないことも想定外です。早く仲間に来てもらいたいです!!
卒隊後のビジョンがある場合は教えて下さい。
まだまだ手探りですが、子どもの意思を聴くこと、子どもの主体性を尊重すること、そうした保育の価値を地域の方々と共有しながら、地域に開かれた保育・子育て環境を作っていきたいと考えています。
それが遊び場なのか、カフェなのか、食堂なのか、どこで、誰と、どのような形で実現できるかまだ分かりません。人口が少ない中でビジネスとして成立させることの難しさも課題です。出会う方々に学びながら模索してみたいと思います。
安平町の住民と触れ合った際の印象と、裏付けるエピソードについて教えて下さい。
安平地区の方々は、広い畑でまるでプロの農家さんのように家庭菜園されている方が多く、野菜をいただいたり、育て方を教えていただけることが、とても幸せです。
小さな集落なので、知っている方が少しずつ増えてきて、近所を歩けば「こんにちは」「今日は暑いですね」とご挨拶できたり、「お子さんのお迎え?」と声を掛けてくださる毎日は、とっても温かく、感謝しています。
また、子どもたちがとても素直でまっすぐ育っていると感じます。すれ違うと大きな声で「こんにちはー!」とあいさつしてくれたり、4歳の息子と兄弟のように遊んでくれます。
札幌に住んでいた時の方がご近所の人数自体は何倍も多かったですが、息子のことを知ってくれているご近所さんは、すでに安平の方が多いと思います。人口が少ないからこそ、お互いに顔の分かる人間関係を築けることが安心感につながっています。
安平町の魅力について教えて下さい。(自然やグルメ、オススメスポットなど)
畑や牧草地が広がり、また建物が平屋か2階建てなので、空がとても広いです。夕暮れ時の空は映画のワンシーンのようです。
虹が出ると端から端まで見えます。先日雨上がりの晴れた夜には、満点の星空が見れて本当に驚きました。田舎といえど、住宅地はLEDの街灯が明るくあまり見られない日もあるのですが、この日はそれでもこれまでの人生の中で一番多くの星を見られたと思います。
車で少し走れば、町内に遊び場として開かれた森がいくつもあり、森林浴ができます。また土壌が豊かで、野菜も花も本当に元気に育ちます。
私は廃校になった学校の畑の一角をお借りして初めて家庭菜園に挑戦していますが、トマトやナスは一つの苗から食べきれないほど成りますし、シソやエゴマの葉は1mを超えて育ちます。イタリアンパセリやパクチー、バジル、ローズマリーなどのハーブ類も毎日好きなだけ料理に使えることもとても贅沢です。
移住を検討している方にメッセージをお願いします。
移住はあれこれ頭で考えると難しく思えることもあると思いますが、実際にその土地に足を運んで、そこで出会った人や出来事を肌で感じて、ここで生きていくぞ、と具体的にイメージできることが大切だと個人的には感じています。
もちろん苦労はありますけど、それはどこで暮らしていても必ずありますよね。ぜひ実際に足を運んで、安平町との相性を肌で感じてみていただきたいです。