移住者プロフィール
森田貴志さん
利用した支援制度
地域おこし協力隊
石川県珠洲市の地域おこし協力隊、趣味・特技:銭湯・旅行・漫画・コーヒー・象使い
目次
INDEX
はじめに
私が住む珠洲市では、令和6年1月1日に最大震度7の大地震が発生し、復旧復興活動が続いております。ライフライン(水道)は一部地域を除いて未だ復旧しておらず、家屋は住宅を含む建物全体で3割超が全壊という被害を受けています。
(3/15現在)
現状、移住をおすすめすることは難しいですが、少しでも多くの人に珠洲や奥能登に興味を持っていただき、関わる人を増やしていきたいです。
「きっと、いいまちになる。だって、いいまちだから」と希望をもち続けて。
地域おこし協力隊の応募動機について教えて下さい。
行政や地域のことを深く知ることができると考え応募しました。当時、将来は自然豊かな土地に住み、友人と会社を作り、家族と人間らしい暮らしがしたいと考えていました。
いわゆる地方にはどのような課題があり、何が求められているのかを知る必要があると考え、地域おこし協力隊での働き方を検討しはじめたのがきっかけです。珠洲に移住することを先に決め、地域おこし協力隊の募集があったので迷うことなく応募しました。
市民の方とよく交流ができており、地域を知るにはとても良い選択だったと感じています。
石川県珠洲市を選んだ理由について教えて下さい。
移住の決め手って複合的なので、はっきりとこれが理由ですとは言えないのですが、しいて言うなら「雰囲気」です。
移住先を決めるため、家族三人で関東、甲信越、四国、関西を回りました。そして妻と「移住先どこがいいかな。」と話したときに、「珠洲!」と意気投合したので、もうこれは珠洲しか無いんじゃないかと思い、もう一度訪れることにしました。
自然があり、町がきれい。
総合病院やスーパー、コンビニ、ホームセンターまで一通り整っていて安心感がある。
会話を交わす人々からは暖かさが伝わってくるし、芸術祭やSDGsへの取組みなど、感度の高い施策をしている。若い世代の移住者も増えていて、他の市町村と比較して、自分たちが「ここに来てもいい感」があり、雰囲気の良さを感じました。
地域おこし協力隊の仕事内容について教えて下さい。
「子育て・教育の魅力向上を通じた移住・定住の推進」が業務内容です。
U・Iターン相談窓口
移住相談をワンストップで受付し「住まい」「仕事」「子育て」等のテーマに応じた対応をしています。相談者が移住後のイメージを持てるよう、まちなかをご案内し、住まいや学校を見てもらうなど、その人に合った対応をすることで、信頼できる相談者になれるよう努めています。
住みやすい居住環境の充実
空き家所有者の相談窓口となり、空き家バンクの登録受付業務を行っています。近年、移住者は増加し住まいが不足する一方で、空き家は増加しており、ミスマッチが起こっています。
そんな最中に、地震が発生したため、まずは空き家バンクに登録のある物件の状況確認を行っております。
今後、利用可能な物件があれば、市民の方(例えば所有者の親族、知人など)が利用されるのか、移住される方にご利用いただくのか先は見えないですが、今後の住まいの在り方(建てる場所や構造を含め)を考えるフェーズに直面しています。
子育て・教育の魅力向上
里山里海を活かした自然体験や、子どもたちの主体性を活かした探究学習など、学び合いの機会づくりを促進しています。現在は年に数回実施する程度ですが、今後は自然体験や探究学習企画の実践に興味のある方や、市内の保育園・小中学校・高校と連携して機会づくりに取り組んでいきます。
その他
復旧復興対応を続けております。
2023年5月 最大震度6強となる令和5年奥能登地震が発生
2024年1月 最大震度7となる令和6年能登半島地震が発生
地域おこし協力隊のやり甲斐はなんですか?
※以下、震災前後(令和6年1月前後)の時系列に分けてお話いただいています。
震災前
まだよく分かっていません。
人との出会いだったり、まちの課題について考えることだったり、業務自体に面白さは感じています。市役所に帰属し、会計年度任用職員として勤務するタイプの地域おこし協力隊なので、行政でしかできないことを考え、実行するのが「やり甲斐」につながるのかもしれませんが、まだイマイチ実感できていません。
やっと暮らしにも慣れてきて、日々の生活の中で色々な経験をして、まわりの人から知識や知恵を学ぶこと自体が今のやり甲斐な気がします。
震災後
わたしは兵庫県西宮市出身でして、3歳のころ、最大震度7の阪神大震災によって被災し、家を失いました。仮設住宅に入るまでの間、母の実家である石川県小松市に二次避難し、数か月を過ごしました。幼いながらも鮮明に覚えており、自分の最も古い記憶が発災直後の記憶です。
そして今、最大震度7の地震が発生した珠洲市に住み、地域おこし協力隊として働いており、妻と2歳の娘が金沢に二次避難している。あぁ、これはもう、運命なんだなと。だからこそ復旧復興対応にやり甲斐を感じるし、頑張りたいです。
地域おこし協力隊になって想定外だったことを教えて下さい。
地域おこし協力隊というだけでなく、市役所職員という立場で業務できたことがいい意味で想定外でした。
5月の地震では、復旧に向けて公共施設の確認、避難所開設準備、被災した家屋の調査や罹災証明・給付金の窓口対応など、様々な活動を経験しました。市のこと、地域のこと、市民のことを知るにはとても貴重な経験でした。
また、奥能登国際芸術祭2023(9/23~11/12)が開催され、芸術作品の作品制作やメンテナンス、会場受付業務などを経験し、作品のみならず、まち全体でビックイベントを行う熱気を肌で感じました。
そして令和6年1月に発生した能登半島地震。5月の地震とは比較にならないほどの甚大な被害で、物資の荷受け・移送作業、避難所開設や片付け、二次避難の対応などを行っています。
卒隊後のビジョンがある場合は教えて下さい。
卒隊後については、まだ考え中です。この先数年は震災復旧復興が続きますので、タイミング次第で必要なことは変わると思いますが、ここに住む人が、安心安全な暮らしをおくることができるよう、お手伝いできればと考えています。
珠洲市の住民と触れ合った際の印象と、エピソードも添えて教えて下さい。
珠洲の人の印象は結構バラバラで一概に言えないというのが印象です。
市内は10地区に分かれており、さらに細分化すると約160の集落に分かれます。地区ごとに風景も文化も違うし、人の印象も違う気がするのです。
震災の復興対応をするうちに、多くの市民の方と話しました。この地区はこんな雰囲気の人が多いなと感じることもあり、少しずつ珠洲の人の雰囲気が分かってきました。
なるほど、元々多様性に溢れている土地だから、自分も「ここに来てもいい感」を感じたのだと腑に落ちました。
珠洲市の魅力について教えて下さい。(自然やグルメ、オススメスポットなど)
珠洲は、自然とともに生きる人々の営みや伝統文化が受け継がれ、奥能登国際芸術祭やSDGsへの取組みなど新しいことへも挑戦しているまちです。
個人的に思うのは、やはり、珠洲は「人が」魅力的だということです。
珠洲市は人口約12,000人で、高齢化率は50%を超えています。都会に比べてひとり一人の役割が非常に大きい。それでいて、なんだか珠洲の人からは懐の深さを感じるのです。この土地柄や文化、続いてきた営み自体が、豊かで多様性のある、生きる力の強い人を育むのかなと考えさせられました。
そんな人たちが住んでいることが一番の魅力です。
移住を検討している方にメッセージをお願いします。
今はすぐ住めるような住まいもないため、移住を促進できません。
しかしながら、例えば、ボランティア等のお手伝いで来てもらうことはできるかなと思います。今後の復旧復興フェーズごとに、色んな人に関わっていただきたいです。
こちらを読んで下さった皆様、それぞれの立場でできることがあると信じています。何か気になることがあれば、いつでもご相談ください。
珠洲について興味を持っていただけたなら、まずは、珠洲発・暮らしのウェブマガジン「すっとずっと」をご覧ください。
移住は大きな決断かと思います。
人それぞれ目的は違うと思いますが、きっと理想の暮らしを実現するために移住をするのだと思います。移住後の生活イメージをできる限り鮮明に持てると良いですよね。
いつか住む土地で地震が起こるかもしれません。
でも、そんなとき、だからこそ、自分自身が選んだ土地で、家族や仲間と楽しく暮らす人生を選んでみてはいかがでしょうか。
私は、そんな理想の暮らしを、少しでもお手伝いできるような、家族や友人以外の信頼できる相談相手になれるよう、今後も移住定住推進担当として頑張ります。
地域おこし協力隊の詳細についてはコチラ↓
https://warp.city/features/2