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プロフィール
株式会社地熱染色研究所
所在地:岩手県八幡平市
業種:地熱蒸気を活用した染色品の生産・販売
商品:ハンカチ、スカーフ等、日用品からファッションアイテム、オリジナルデザインの服など
会社URL:https://geo-color.com/
会社の事業内容を教えて下さい。
弊社は、地熱資源を活用した染色品の製造と販売、地熱アートとして作家作品や体験コンテンツを提供しております。
松川温泉には、日本で最初に商用稼働した松川地熱発電所があります。ここの地熱蒸気は、不純物が少ないドライスチームで、世界的にも非常に珍しいものです。
既存の染色技法では高温蒸気を利用することは行われています。弊社では地下から噴出する天然の地熱蒸気を、そのままの状態で染色工程に利用しています。この方法は、色の変化と定着において他に類を見ない技法として注目を集めています。
これは、松川温泉の蒸気に含まれている成分とその含有量も関係しており、まさに八幡平ならではのモノを作り出しています。
商品(サービス)の魅力について教えて下さい。
地熱蒸気に含まれている成分と温度をうまく活用するため、弊社独自の絞り技法にて1点1点、手絞り手染め作業で染色が行われます。弊社の商品の特徴はなんといっても「多色グラデーション」です。
着色工程では、驚くほど多くの色の染料に漬けこみ、そこに天然の蒸気の成分が相まって、他の多色染色とは一線を画す深みのあるグラデーションが生まれます。重なり合う色彩の奥深さが、弊社商品の魅力の一つです。
この技法で生まれた製品は、地域の特産品として、ハンカチや巾着、ペンケースといった日常小物から、スカーフや大判ストールなどのファッションアイテム、さらには洋服生地の染色まで幅広く展開しています。また、八幡平ならではの体験として、旅の思い出作りや資源活用の教育をテーマにした体験教室も提供しています。
地熱資源や火山防災の一環として、自然の色彩美や多様性を学ぶ場として、子供から大人までが楽しめるこの土地ならではの貴重な体験となっています。
お仕事のやり甲斐はなんですか?
八幡平の地で、大地の恵みである地熱資源を活用して染色を行う染色作家たちは、自然の彩りを布に表現することをモットーとしています。自分の目で見た自然界の色彩美や造形美を、布に表現できたときの喜びは格別です。
特に、お客様が色のグラデーションの深みを感じてくださり、一期一会でお気に入りの「色」と出会った際に見せてくださる笑顔は、私たちにとって大きな喜びです。他にはない美しいグラデーションのオンリーワン製品を手に取るお客様の満足度は非常に高く、その感動を共有できることに感謝しています。
有名ブランドではなく、量産もできない商品ですが、「個性を纏う」ことができると、根強いファンの方々がいらっしゃいます。ご自分用はもちろん、贈り物としても選んでいただけることに、本当にありがたく感じています。
また、地熱アート体験では、オンリーワンの作品が完成したときの皆様の笑顔が、私たちの仕事のやり甲斐となっています。私たちは単に生産するだけでなく、スタッフ全員がお客様や地域の方々と近い距離で接しながら、心のこもった製品づくりとサービスを提供しています。
仕事していて大変なことや困難だと感じることを教えて下さい。
私たちの染色は、自然の地熱蒸気を活用しているため、日々の蒸気の状態を把握しながら、染色材料や染料の調合、絞りの強さを臨機応変に調整しています。しかし、これらの作業はマニュアルに落とし込むことが難しく、色を扱う感性や技術の継承が困難であるため、後継者や人材育成に大きな課題を抱えています。
さらに、美しい作品が完成しても、それを商品として流通させるのは容易ではありません。八幡平ならではの価値、ここでしか作れない独自性や色の深みを伝えるためのブランディングに、もっと力を入れる必要があると感じています。
この場所でしかできない、量産できないオンリーワンの作品だからこそ、私たちができることを限られた範囲でやっていく「忍耐」も求められるのかもしれません。また、設備のメンテナンスや維持にも多くの労力が必要です。
今後の展望や、挑戦してみたいことについて教えてください。
過去には原宿や六本木でファッションショーを開催したこともありましたが、今後はファッションだけでなく、アートとしての展開にも力を入れていきたいと考えています。
地熱発電所が世界で初めて稼働したのはイタリアですが、日本も世界有数の地熱資源保有国です。これまでにも、日本で開催された世界地熱会議などでの展示実績があります。
地熱蒸気を活用して生まれるアート、「GEOCOLOR」のグラデーションの美しさをしっかりとブランド化し、「日本・岩手・八幡平」の魅力と資源活用の観点を含め、海外での展示販売を通じて広くPRしていきたいと考えています。
地域の魅力について教えて下さい。
東京から新幹線で約2時間少々で盛岡に到着し、盛岡からは車で約40分で八幡平市にたどり着きます。市内には東北道のICが3箇所あり、車での生活なら不便を感じることはありません。
雄大な岩手山に見守られながら、のびのびと過ごせる八幡平市は、自然豊かな環境で空気も水も美しく、景色も最高です。さらに、米・雑穀・野菜はもちろん、鶏・豚・牛の肉や乳製品、清らかな水で育てられた魚といった豊かな食資源にも恵まれています。
十和田八幡平国立公園をはじめ、八幡平市は観光エリアとしても多くのお客様に親しまれています。最近では、期間限定の「八幡平ドラゴンアイ」という映えスポットも人気を集めています。
移住して地方の仕事を志す方へメッセージをお願いします。
私は大学時代や結婚後も少し東京で暮らしましたが、都会に未練はなく、この土地の魅力に惹かれて戻ってきました。確かに、田舎には都会のような便利さはありませんが、生活する上で困ることはありません。
むしろ、四季折々の自然や、それに伴う農畜産の風景を日々目にすることは、私にとって大きな癒しであり、日本や地球環境について考えるきっかけにもなっています。ネット環境さえあれば、交流や情報も十分に得られます。
それぞれの環境をうまく味方につけて、地方での生活を楽しんでもらいたいと思います。私自身も、移住してきた若者たちから多くの情報を教えてもらい、それが今でも非常に役立っています。
地域にはそれぞれ独自の歴史、文化、人々のつながりがあり、これが時に良く、時に悪く影響することもありますが、住んでいるとその影響を感じることができます。
それでも、皆が住みよい街を求めている気持ちは共通しています。地方移住を考えている方には、ぜひコミュニケーションを大切にし、その地域に根ざした思いを持ちながら、地域の人々を巻き込み、新たな風を吹き込むことに挑戦してほしいと思います。