移住者プロフィール
新井田美菜子さん
利用した支援制度
地域おこし協力隊
福島県田村市の地域おこし協力隊、趣味・特技:写真・そば打ち・和菓子作り
目次
INDEX
地域おこし協力隊の応募動機について教えて下さい。
2年前に夫が木工の仕事を始めた際、日本には豊富な森林資源があるにもかかわらず、その多くが活用されず、森が衰退している現状を知りました。
当時私たちは森から離れた場所に住んでいましたが、森の近くで活用されていない木を使い、森に還元できるような作品を作りたいと思ようになりました。その後、移住について調べていく中で、より地域に深く関わりながら活動できる「地域おこし協力隊」という制度を知りました。
その後1年くらいかけて、木工や地域資源を活用した地域おこし協力隊を募集していた茨城や群馬、栃木、千葉、青森、福島などの地域を家族で見てまわりました。その中でも福島県田村市の移住体験では、他の地域にはない人の温かさ、繋がり、地域愛をとても感じました。
加えて、森林資源の豊富さと、「森林をどんどん活用して!」と言ってくださる方との出会い、里山の風景の美しさ、綺麗な空気で夫婦ですっかり田村市に魅了されました。ここでなら、私たちのやってみたいことが形になるかもしれない!と感じたのです。
当初は夫が地域おこし協力隊へ応募する予定でしたが、職人気質の夫は制作に集中したほうがいいので、私が地域おこし協力隊になることになりました。
私が長く夢に描いていた「自給自足型のシェアハウスをつくる」という地域おこしの活動をしながら、夫の木工とコラボしていきたいと思い応募しました。
福島県田村市を選んだ理由について教えて下さい。
上記にも書きましたが、色々な土地を見に行き様々な人にお話を伺いました。どの場所にもそれぞれの歴史があり、美しい自然が広がり、唯一無二の特徴がありました。
その中でも、田村市は人々が生き生きと暮らしているという印象を強く受けました。 地方の移住体験に行くと、街全体にどこか元気がなかったり、諦めムードが漂っていたり、移住者に対して他人事のような対応を感じることがありました。
一方で、田村市に訪れた際には、出会う人々皆さんが自分の仕事や生き方に誇りを持って暮らしている様子が印象的でした。震災を経験して、思い通りにいかない壁もたくさんあったと思うのですが、「前向きに、今よりもっと良くなろう!みんなで良くなろう!」という温かくポジティブな気持ちが、初めて会った私たちにも伝わってきました。
このように前向きに行動している人たちがいる場所であれば、私たちも思い描く暮らしができるのではないかと感じました。また、希望だった森林資源が豊富なこと、工房付きの住まいも運よく見つかったことも大きかな理由のひとつです。
地域おこし協力隊の仕事内容について教えて下さい。
私が着任したのは「起業型地域おこし協力隊」で、自らのアイデアで地方創生・地域活性化につながる事業を立ち上げ、その地域に新たなビジネスを創出することを目指しています。自分でやりたい事業に向かって計画を立てて進めていくという少し変わった働き方です。
地域おこしの活動を通して、地域に精通している一般社団法人Switchと、創業支援のプロであるMAKOTO WILLがサポートしてくれています。見知らぬ地域で創業というとハードルが高いですが、サポートもある中でやりたいことに時間を使わせていただけるのは、本当に有り難いです。
今はシェアハウス物件の情報を集める段階で、色々なコミュニティに参加しながら、地域の方と交流をして自分の活動を知っていただいています。また、シェアハウスに併設したいと考えているカフェ運営の学びのため、地域で活躍されている「よりあい処 華」で研修を受けながら、飲食ビジネスについて学ばせていただいています。
「華」は、「震災後にみなさんのよりあい処になれば」との思いで始めた古民家レストランです。オーナーの今泉さんご夫婦の地域への思いに共感されて、地域を担う方々のよりあい処になっています。ここで働いているだけで、色々な方との繋がりができたり、応援していただける方と出会えたりするので、大変ありがたく思っています。
地域おこし協力隊のやり甲斐はなんですか?
地域のために自分一人で何かを始めようとしても、情報収集や人との繋がりを築くのは難しいと思います。しかし、協力隊として活動することで、地域の現状や課題をより早く、深く知ることができます。また、必要な人々との繋がりを得ることもできると感じています。
地域おこし協力隊の活動を通じて、地域の課題やニーズについて多くの方々から熱心にお話を伺うことで、自分がどのように地域に貢献できるかが、少しずつ明確になってきます。そのプロセスで、自分のビジネスや取り組みが次第にブラッシュアップされ、成長していく感覚を得ています。そして、協力隊として活動していると、快く応援してくださる方にもたくさん出会います。
地域の活性化が、自分自身の幸せと繋がり、同時に地域の発展にも貢献できるという点が、とても素晴らしいと感じています。
地域おこし協力隊になって想定外だったことを教えて下さい。
1つ目は、住む場所を見つけるのがとても大変だったことです。空き家バンクに登録されていた物件は、見学まで至らないものが多く、賃貸でも探しましたが、子供が3人いる我が家には手狭なものばかりでした。
田村市に魅力を感じて住みたいと思っても、なかなか住まいを見つけることが難しく、1ヶ月ほどネットと睨めっこしていたと思います。
2つ目は、地域のみなさんが子供たちをとても歓迎してくれたことです。一番心配だった子供たちがとても楽しく過ごせており、転校して2週間でお友達に誘われてスポ少(スポーツ少年団)に加入しました。
親の私たちの方が、子供たちのスピードについていくのが必死でした(笑)。もう少しゆっくり家を整えたり、田村市を散策したりしたかったのですが、引っ越してすぐに土日はスポ少の練習や試合で忙しくなったのは想定外でした!
卒隊後のビジョンがある場合は教えて下さい。
3年後の目標としてサステナブルな暮らしができるシェアハウスを実現したいです。そして、そのシェアハウスを拠点に、集まる人々のご縁が自然に繋がっていくことで、地域全体が元気になって「ここって楽しいな、ここに住みたいな」と子供たちが希望を持ってくれるような場所を作っていきたいと考えています。
私たちが移住する土地を探していたときに、地域の方が繋いでくださったように、私たちも地域と人を繋げるような役目を担っていけたらと思っています。
田村市の住民と触れ合った際の印象と、裏付けるエピソードについて教えて下さい。
子供を3人連れて移住しましたので、近所の方たちに「子供たちを連れて来てくれてありがとう、困ったことがあったら何でも言ってね」と声をかけていただけます。子供の安全のために、家の近くの道路に「飛び出し注意」の看板の設置を自治体に掛け合ってくださり、私たち家族が安心して住めるように考えてくださっていて有り難いです。
また、夫が木工の仕事をしていると知ったご近所の方が、山で採れた木を持ってきて「がんばってね」と声をかけてくださることもあります。畑で採れた野菜や、お漬物などをいただく機会も多くあり、そのお野菜やお漬物がとっても美味しいのです!
地域の方々が私たち家族を応援してくださる気持ちをとても感じています。
田村市の魅力について教えて下さい。(自然やグルメ、オススメスポットなど)
やはり一番の魅力は、ここに住む方たちの「温かさ」だと思います。
困ったことがあれば「声をかけてね」と言ってくださり、何かを相談すれば、親身になって聞いてくださり、地域のさまざまな方と繋げてくださることで、私たちの活動も広がっていきます。
地域、人を大事に暮らしている方が多いので、色々な人と繋がる度に「この場所に来てよかった」と感じます。特に私たちの住んでいる都路地区は震災の影響があり、地域住民の方がこの土地を離れた期間がありました。
大変な3年間を経験して、戻るか戻らないかの究極の選択をして戻って来ている方たちなので、外から来た私たちのことも分け隔てなく接してくださいます。
自然の魅力もたくさんあります。一番感動したのは星空が綺麗なことです。天の川が肉眼で見られるくらい、たくさんの星を見ることができます。
また、「昆虫の聖地」と呼ばれるような湿地やムシムシランドなどがある地域なので、日々の暮らしの中でカブトムシやほたるなどが網戸に止まっていたりします。生き物と触れ合う機会が多く、我が子たちはとても喜んでいます。
移住を検討している方にメッセージをお願いします。
移住というとガラッと暮らしが変わる大きなことだと思うのですが、田村市に移住された方に話を聞くと、お仕事はそのままで住まいだけ変えた方、週末だけ畑作業に来る方、別荘感覚で数年過ごし、その後定住された方など、移住の形はさまざまです。
ご自身が移住で何を一番に大切にしたいのか、「変えられること」と「変えられないこと」を決めておくことで、移住相談の時にも欲しい情報が変わってくると思います。まずは、「こんなスタイルの暮らしをしたい」というイメージを明確に持って情報を集めてみることをおすすめします。
私たちは移住場所を田村市にしたいと決めた後、家がなかなか見つかりませんでした。しかしながら地域の方に繋いでいただき、「家と工房付きの物件を探しています。」と明確にお伝えしたことで、今のお家が見つかりました。
一人で情報を集めるより自治体や地域の方に相談してみると、理想の移住スタイルがどうしたら叶うのか見えてくると思います。あとは、一気に理想の暮らしは難しいので、住みながら少しずつ理想を叶えていくくらいの方が最初はいいなと感じました。
移住までは何となくお客様のような感じで色々なサポートがありますが、移住してからは自ら選んで来た人になるので、自分でも地域と繋がって少しずつ実現したい暮らしを作るという気持ちも大切だと思います。
大変なこともあるかと思いますが、「やってみたい、チャレンジしてみたい」と思うことが少しずつ叶って形になっていく過程は、とても楽しいですし、有り難いことだなと感じます。
まずはその土地に行って、その土地の空気や人とたくさん触れ合っていく中で、きっと道が見えてくると思います!