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生産者プロフィール
清水寛之さん
出身地:岐阜県白川町
現住所:岐阜県白川町
職業:農業
趣味・特技:登山・キャンプ・星空観測
生産物:原木しいたけ・米・お茶
生産者への道を志した経緯やきっかけについて教えて下さい。
家業が農家であったことが一番の理由ではあります。
ただ、農家と言っても普通の農家とは少し違っていました。今では「無農薬栽培、有機栽培、オーガニック」とよくその名を聞くようになりましたが、今から40年近く前、まだそういった栽培方法を行う農家がほとんどいなかった時代から、先代は行っていました。
人に優しい農産物を作ることが目的なのは当たり前ですが、環境にも優しく、なにより栽培している人にとっても優しいこと。先代がそれを志し、長年やってきたことを非常に尊敬しています。
昔は農作物を作るにも、本当に多くの農薬を使用していました。それこそ作業する人間が、浴びるように農薬を使っていたので健康が心配になるほどでした。
作物の病気を抑えるため、除虫除草のために散布を行っています。それに使用する農薬にはもちろん使用規定があり、問題無いと判断された使用方法であったと思いますが、先代はどこかに歪さを感じていたのだと思います。
そんな先代の背中を見ながら育ってきた者としては、その志に感化されないはずも無く、そんな信念をわずかではあるのかもしれませんが、少しでも引き継いでやれればと考えたのがきっかけになっています。
生産物の魅力について教えて下さい。
しいたけにも旬がありますので、ぜひオススメしたいのは秋から冬にかけて収穫されるものです。寒い時期であればあるほど成長速度が遅くなり、肉厚で味わいも濃厚になります。
生しいたけのプリプリとした食感を楽しむには、焼くよりは天ぷらなどにして揚げたり、鍋や汁物に入れるのがオススメです。キノコ類全般がそうですが、油とも良く合うのでチーズやバターなどと合わせて召し上がるのも美味しいと思います。
乾燥しいたけについては良い出汁が出ますので、戻し汁は煮物、汁物などの「お出汁」として利用できます。戻した椎茸は調理に使って頂けます。乾燥しいたけは戻す時間がかかる半面、保存が利きますので生しいたけより、長く楽しむことが出来ます。
原木栽培によるしいたけの生産量は、全国的に見ても一割を切りました。希少な原木しいたけをどうぞご賞味下さい。
白川町の魅力について教えて下さい。(自然やグルメ、オススメスポットなど)
どこかで聞いたことがあるような言葉ですが白川町は『何も無い、が有る』、そんなところがいっぱいある田舎です。だからこそ自然を満喫できる場所も多く残っており、まだまだ探せば楽しめる自然も眠っていると感じています。
やる気とアイデアがあれば、それを開拓する楽しみもできますし、自分でそれを成しとげていく楽しみも生まれます。都市部からはやや隔たった場所にあり、その分不便なことも多いですが、その恩恵も多くあります。
騒音は少なく、空気は澄んでいて、川も、星空もきれいに見える。ただ、山に囲まれているので空がやや狭いのが残念な点ではありますが、常に自然に囲まれて過ごすことができます。
季節を感じる風景を目に出来るので、毎日が新鮮に過ごせるのが魅力です。自然の中に身を置きたい、アウトドアが好き、自然とともに歩むことが好きな方にとっては、非常に過ごしやすい場所であると思います。
お仕事のやり甲斐はなんですか?
一つは、作った作物を喜んで頂けたときのお客様の反応でしょうか。農薬を使用しない農業というのは、大変な苦労が伴います。
それゆえ自信を持って世に送り出すことができた作物というのは、僕らの作品のようなものです。そしてもう一つは、計画した通りに作物を収穫できたときです。
農業とは自然と共存しながら行う仕事です。自然があって、そして私たちがあります。
しかし、自然は言うことを聞かせられるような存在ではありませんから、天気や害虫などのイレギュラーな出来事は常にあります。それにも関わらず、自分が思っていたような成果が収穫として形になったとき、それは本当に嬉しいものです。
仕事していて大変なことや困難だと感じることを教えて下さい。
先ほどの問いと重複しますが、自然が相手だから思うように行かないことも多いです。毎年、気候や状況が違うので、必ずこういう作業方法であれば絶対の間違いが無いという方法はありません。
その時その時に合わせた作業を適宜していかなければなりません。その判断がちゃんと出来ているのか、それが出来るようになるのが大変難しい仕事でもあります。
農業というのは1年サイクルの仕事です。だから、20歳から70歳まで続けたとしても、50回しかチャレンジできません。
私たちは先達から「農業は毎年一年生だ」と、そう教えられてきましたが、まさにその通りだと思っています。
しかし、毎年1年生ではあっても失敗が許されないことも多いですから、気は抜けません。
ただ、作物を作っているという意味では、間違いなく食いっぱぐれることはないな、と常々思っています。そこは農家の強みでしょうか。
今後の展望や、挑戦してみたいことについて教えてください。
仕事柄よく山に入るのですが、山には昔の人たちが里山として使っていた時の、人の歩ける道がいくつも残っているので、それらを繋げることでトレッキングコースなどが作れないかと考えています。
規模が規模なのでもちろん一人では無理ですが、昔は、集落の行き来は全て徒歩で、その中の道には旧道として使われていた道もあります。それを再整備できれば、山をや自然をもっと楽しめるようなものが作れると思ったからです。
農業には獣害という被害もありますが、集落や農地に近い山を整備をすることは、獣を遠ざける効果も多少はあるのではないかと予想しています。もっとも個人的な趣味が登山なので、近所に登れる山があっても楽しいよな、というのが根本の発想です。
出来るかは分かりません。
しかし、旧道は使わなければ藪の中に埋もれたり、崩れたりして無くなってしまいます。まだその痕跡が分かるうちにできたらいいなと思っています。
移住して一次産業を目指す方へメッセージをお願いします。
農業のイメージはなんでしょう?牧歌的な想像をされているでしょうか?スローライフ?
都会的な時間に縛られた生活から、ゆったりとした生活への脱却を目指すというのであれば、少し立ち止まって考えられた方が良いかもしれません。自立した農業を行うということを考えているのであれば、非常に努力も手間もかけることが必要になるからです。
確かに時間には縛られません。
しかし、作物の都合には縛られるので、予定は常に変化し続けます。自分の時間を持つ、ということとは縁遠くなる可能性も大いにあります。
しかし、人と人が関わっていく中で生まれるストレスはほとんどないといっていいです。雨が降ったら、それに対してストレスを感じる事がほとんど無いのと同じで、農業は自然と向き合う仕事だからです。
マイナスな印象を抱かせてしまったでしょうか?大変なことも多い仕事なので、覚悟が必要だということです。
ですが、農業は手間をかけたら手間をかけただけ作物が応えてくれる、そんな一面もあります。
努力が常に目に見えます。そういったことを楽しむことができる、そこに魅力を感じる方には天職になり得るのではないでしょうか。