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プロフィール
太地農園 石川太地(たいち)
出身地:茨城県
居住地:長野県木島平村
職業:農家
生産物:ズッキーニ、白ネギなど
趣味・特技:ラジオ鑑賞
Instagram:https://www.instagram.com/taichi_farm/
生産者への道を志した経緯やきっかけについて教えて下さい。
もともとは会社員をしていました。当時の労働時間は朝早くから夜遅くまでと非常に長く、働く環境としてとても過酷でした。勤めて10年以上が過ぎそろそろ退職をしようかと考えた頃、ちょうどタイミングが重なるように「木島平村に祖父の土地が余っている」という話がありました。
農業を選択した一番の理由は、個人事業主として働けるという点でした。とはいえ、大学時代は全く別の分野を専攻していて、農業はまったくの未経験でした。
私は村の農業研修生の第一号で、地元の農家さんたちのもとで学ばせてもらいました。農業全般を学ぶというより、特に「ズッキーニを作れるように教えてもらった」という感じです。
生産物の魅力について教えて下さい。
魅力というと、自分自身ではなかなか分かりづらいですが、県外から個人でお取り寄せくださったり、マルシェで直接購入してくださったりするお客様から、「味がいい」と評価していただけることは、ひとつの指標になると思っています。
まず、「木島平村でつくる野菜はとにかくおいしい」です。私たちの畑は日当たり良好な斜面にあり、西向きなので寒暖差もあります。その恵まれた環境のおかげもあり、ズッキーニはとてもみずみずしい仕上がりになっています。
何か特別な手法で育てている訳ではありませんが、強いて言えば「正しく作っている」といったところでしょうか。見た目も味もどちらもよいズッキーニをつくることを理想として育てています。
ズッキーニはクセがない野菜なので、料理のジャンルを問いません。煮る、焼く、揚げる、生で食べるなど、幅広い調理法にも対応し、さまざまな料理に合わせられます。
私たち自身もその時々でハマる料理が変わりますが、最近のお気に入りは、ズッキーニを大根や人参とともに細切りにして和える「塩ナムル」です。簡単に作れるので、ぜひ試してみてください。
木島平村の魅力について教えて下さい。(自然やグルメ、オススメスポットなど)
自然の魅力といえば、眺望の素晴らしさがまず挙げられます。特に、自分の畑からの眺望が抜群です。朝4時前のまだ暗いうちから作業を始めると、徐々に空が明るくなっていく様子を楽しめます。4時半頃には、遠くの山々が真っ白に染まり、雲海が広がる光景を見ることができるので、この時間帯が特におすすめです。夏でも朝は涼しく心地よいため、作業がはかどります。
おすすめのグルメはやはり「ズッキーニ料理」で、お好み焼き粉でつくるピカタはとても美味しい一品です。夕方までみっちり仕事をしていると、買い物に行く時間がなくなることも多いので、「冷蔵庫にあるもので作る」という限定されたルールで料理を楽しんでいます。また、 学生のときに村から野菜や米を送ってもらった思い出がありますが、米は木島平村産が断然おいしいですね。
もう一つ、木島平村の魅力といえば、「人のあたたかさ」も挙げられます。
田舎に行くと受け入れてもらうのが大変という話を耳にしますが、木島平村ではそういうことはなく、私自身移住してすぐに馴染むことができました。農業研修の際も、複数の農家さんのもとで研修を受けましたが、人付き合いで苦労することも困ることもありませんでした。お世話になった先が良かったのもあるかもしれません(笑)。
お仕事のやり甲斐はなんですか?
リアルな話をすると、仕事をすればその分だけ収入になるという点が大きな魅力です。ただし、収穫量が多く、深夜まで箱詰め作業を続け疲弊することは避けたいので、遅くとも夕方6時までには作業を終えるようにしています。
もう一つはやはり、お客様に喜んでいただけることですね。畑の近くに無人販売所を設置しているのですが、野菜の補充に行った際にたまたま出会ったお客様から「ここを目的地に含めた観光ルートを組んで来た」と言われたり、噂を聞いて遠方からここを目指して来てくれる方がいたりして、驚いています。
また、隣町で毎月開催されているマルシェに出店すると、初めてのお客様との出会いもありますし、日頃無人販売所で購入してくださっているお客様が来てくださることもあります。中には「宣伝しておくよ!」と言ってくださる方もいて、直接お客様の反応を聞けるのは本当に嬉しいことです。さらに、生産者同士の交流の機会にもなり息抜きにもなるので、マルシェへの出店を楽しんでいます。
そして、「美味しいものが食べられる」というのも、やり甲斐の一つになっています。私たち自身も新鮮で美味しい食材を楽しむことができ、さらに他の方からいただくものもあって、豊かな食生活を送っていると実感しています。
仕事していて大変なことや困難だと感じることを教えて下さい。
自然を相手にする仕事なので、大変なのはやはり天気です。
ズッキーニ農家の「あるある」ですが、朝イチに雨が降ると受粉作業ができなくなるので、その日に咲いた花がすべてダメになることもあります。受粉ができないと、ズッキーニの形や色が悪くなり、2~3日で腐り始めてしまうので出荷できなくなります。そのため、雨が少ない年は「儲けもの」と感じます。ズッキーニは乾燥に強い作物なので、雨が降らない方がありがたいんです。
とはいえ、天気の問題は農家全般に共通する悩みですし、それ以外で特別に大変なことはあまりありません。デスクワークも腰が痛くなるし、疲れがたまるのはどんな仕事にもいえることなので、「農家だから特別に辛い」ということは特に感じていません。
私の妻は朝起きるのが苦手ですが、私は朝からテンション高くいられるので、横から無理やり起こすこともあります。なにしろ朝が早いので、夜は8時、遅くとも9時には寝るようにしています。人間の体は「夜には寝て、朝には起きるように」できていますから!
私は農作業中にラジオを聴くのが好きで、ずっと聴きながら作業しています。周りには「ラジオを聴くために農作業しているんだ」と冗談で言うこともあるほどです(笑)。
今後の展望や、挑戦してみたいことについて教えてください。
現在、自宅を建設中です。完成したら、畑と自宅の距離が近くなるので、作業効率がぐっと上がると思います。そうなればもう少し規模を拡大し、ゆくゆくは小規模ながらも人を雇うことも視野に入れています。
今後挑戦してみたいことは、「加工品の生産」です。特に作ってみたいのはカレーで、レトルトカレーや万能調味料の製造に興味があります。
保存が効くものは、「作りやすくて売りやすい」という利点があります。木島平村は冬になると降雪で農作業が休みになるので、そういった加工品の生産を冬の仕事にできたらいいなと考えています。
移住して一次産業を目指す方へメッセージをお願いします。
農業には「稼げない」「厳しい」「辛い」といったマイナスのイメージがつきまといますが、どの仕事でも辛い部分はあるものだと思っています。
私たちはまず、生産力を高めることに注力しました。農業で自立するためには、農作業だけでなく、箱詰めや事務作業も必要です。その点においては、前職での経験が大いに役立っていると感じます。
現時点では農業にあまり人気がないので、新規参入の余地は大いにあります。しっかりと勉強して、農業に真剣に向き合う気持ちがあれば、栽培方法や作業効率を改善することも十分可能です。もし、その分野が難しいと感じた場合でも、売り方を工夫したり、少量でも高品質・高単価の商品を作るなど、さまざまな方法があります。
まずは一度木島平村に来て、現場を見に来てみると良いと思います。