移住者プロフィール
谷田川 佐和さん
出身地::東京都、前住所:東京都、現住所:福島県大熊町、職業:「株式会社Oriai」勤務
目次
INDEX
移住前はどのような暮らしをしていましたか?
谷田川佐和さん(以下、谷田川):以前は東京で「人生を1からデザインする楽しさで溢れる社会」の実現を目指す一般社団法人ことばの理事をしており、関東圏の学生が子どもを笑顔にする活動を行っていました。震災以降、岩手県で活動を行ってきましたが、近年はコロナ禍で現地での活動が出来ず、オンラインでの活動にシフトする、都内での活動を始めるなどの工夫をしていました。
移住しようと思ったきっかけは何ですか?
谷田川:学生時代からの知り合いであった株式会社Oriaiの代表である松井に声をかけてもらい、2020年に行われた「おおくまハチドリプロジェクト」の運営を受託したことがきっかけで大熊町に関わるようになりました。一般社団法人ことばで活動していた頃から青少年のキャリア育成に興味があったため、大学生たちが町の未来に対して一生懸命にアクションを起こすサポートができたことは移住の大きなきっかけとなりました。
移住の決め手は何ですか?
谷田川:初めて担当してくださった役場の方が丁寧かつスピード感のある対応をしてくださり、一緒になって前向きに取り組んでくれる姿勢にまず驚きました。これまでもいくつかの自治体で仕事をさせていただきましたが、魅力を感じつつも本格的に移住を検討した市町村は多くありませんでした。
しかし、おおくまハチドリプロジェクトの期間中、担当してくださった皆さんからは私のような町に詳しくない立場の意見も積極的に取り入れ、町を良くしていこうとする強い気持ちを感じました。その想いに感化されて私自身も「この機会を最大限に活かしたい」と前のめりの姿勢を最後まで失わずに取り組むことができました。
ちょうど次のキャリアとして、取り組んだことのない領域に挑戦したいと考えていたタイミングでもあったんです。大熊町のような環境に飛び込むことは自分の人生がより意義深いものになるのではと感じました。
東京の家に戻ると同時に、夫に伝えたところ「絶対に行ったほうがいいよ」と言ってくれたことが決め手となり、移住を決断しました。
どのように情報を集め、どのような支援や補助金を利用しましたか?
谷田川:私の場合は移住を決めたのが先で、仕事や家は後から準備した、という変わった順番です。「身一つで来るわけにいかない!」ということで、まずは業務委託で契約していた株式会社Oriaiに正規雇用してもらうことになり、そこから住居や車の手配を会社にサポートしてもらいながら進めました。
また、OkumaLeadやHAMADOORI13といった団体の皆さんや町役場生活支援課の皆さんが、移住前に情報を提供してくださり、「12市町村移住支援金」を教えていただいたため現在準備中ですが、その他の公的な補助などは活用していません。
どのようなプロセスで移住しましたか?
谷田川:会社にサポートしてもらいながら、住居や車の手配を進めたことはお話ししましたが、特徴的な事情として、今回賃貸契約させていただいた家がある地域は2022年6月に避難解除された特定復興再生拠点であることが挙げられます。そのため家を借りただけでは住むことができませんでした。
解除前の5月から家に住むためには契約を進めるだけでなく、準備宿泊の申請やそれに伴う事業所登録、大熊インキュベーションセンターへの入居など、様々な手段を経て移住が叶いました。この点においては、町役場や不動産会社、大家さんなど多くの方に助けていただきました。
現在はどのような仕事、活動をされていますか?
谷田川:私が所属する株式会社Oriaiは「地方×若者」がコンセプトの会社で、学生を中心とした全国の若者に大熊町に来てもらい、アイデアコンテストや農業インターンシップなどを通して町の関係人口を増やす取り組みを行っています。
また、現在は大熊インキュベーションセンターのコミュニティマネージャーとして、町民の皆さんと大熊町への進出企業を繋ぐ役割を担っています。
移住して良かったところと悪かったところを教えてください
谷田川:まだ移住して5ヶ月ほどですが移住して正解だったと思っています。仕事面ではやりたかった仕事が出来ているし、関わる人たちがとても魅力的です。
また、町の発展に関われる機会はとても貴重な経験だと思います。生活面ではベランダで植物を育てたり、泊まりに来た学生たちと星を眺めたり、町で長く続いてきた生涯学習団体「ふるさと塾」に入れていただいて、人生の先輩方と一緒に文化財保護に携わらせていただいたりと、時にリフレッシュしながら楽しく過ごせています。
ただ、仕事終わりや休日にのんびりと過ごす場所が町内には少ないため、もう少し町内に住んでいる多様な人々と交流をしたいなと思うことがあります。
大熊町の好きなところはどこですか?
谷田川:まちづくりは一筋縄ではいかないことも多いと思いますが、大熊町には子どもの頃におもちゃで町を作った時のようなワクワク感を感じています。もちろん震災で失ったものもあると思いますが、同時に、今自分たちが思い描く「住みたい町の姿」を創れる無限の可能性を秘めていると信じて活動しています。
そして、大熊町は昔から移民が行き交う地域であったと聞きました。世代や違いを超えた「共生」を自然と身につけている人が多いことで、人間関係における快適な距離感を維持しているところも魅力だと思います。
移住を考えている人に一言お願いします!
谷田川:移住を前にして、私も「こうあらねば」と気負ってしまう瞬間がありますが、その度に「考え方を変えればただの引越しだ」と思い出すようにしています(笑)。自分がより幸せになれる選択をすることが大事で、その一つに住む場所の選択がある。
大熊町で幸せを感じられそうなら住んでみればいいし、違ったらまた違う場所に引っ越せばいいと思うことで、大胆な選択肢も身軽にしやすくなるのではないでしょうか。
自分の「今だ!」という決断を真正面から受け止めて、「ありがとう」という言葉と共に多くの方が力を貸してくださったように、私も次に大熊町に来る方から学ぶ姿勢を忘れず、全力でサポートをしたいと思います!