移住者プロフィール
飯笹 雅博さん
移住時期
2016年11月
利用した支援制度
地域おこし協力隊
前住所:大阪府吹田市、現住所:山口県山口市、職業:「徳地そば茶屋 雅」オーナー
目次
INDEX
山口市へ移住したきっかけを教えてください。
飯笹雅博さん(以下、飯笹):2016年11月に、地域おこし協力隊として大阪府吹田市から移住しました。以前は医療系メーカーに勤務し、月の半分以上は出張で飛び回っており、家族と過ごせる時間がないのが悩みでした。
ある日、移動中の新幹線でふと「この先もこんな生活が続くのか…」と思い、気づけばインターネットで「田舎暮らし」と検索していました。テレビ番組で見た田舎暮らしに憧れがあったんです。
そのとき目に留まったのが、山口市徳地の地域おこし協力隊の募集でした。「そば打ち技術の伝承や地場産品を使った商品開発、販路拡大」という募集内容に惹かれましたし、新しいことに挑戦するなら年齢的にこれが最後のチャンスかもしれないと思いました。
しかも山口市は妻の出身地なので、不思議なご縁も感じたんです。
それからすぐに妻に移住の相談をしましたが、「田舎に戻るのはイヤ!」と大反対。もちろん、地域おこし協力隊は正社員ではないので、収入面での不安もあったと思います。
けれども、家族と一緒に過ごす時間を増やしたいと妻を説得し、息子も含め家族3人で山口市徳地に移住することに決めました。
移住から創業までの道のりは大変でしたか?
飯笹:3年の任期を終え、2019年11月に「徳地そば茶屋 雅」をオープンしました。実は移住当初は創業する気はなく、地元で長く愛されている「そば処 樽」のそば打ちをとにかく受け継がねばと思っていました。
けれども移住して5ヵ月目に師である大将が急逝し、急遽山口市の担当者と相談した結果、山口市での創業を目標に活動を継続することになりました。
創業まで残り2年半、そば打ちの技術は学び終えていたものの、その他は全くでした。
そこで、まずはそば自体をもっと知ろうと、自分で育ててみることから始め、そば粉にするまでの大変さを知りました。
また、出汁づくりを通じて大阪との味覚の違いも痛感しました。うちの出汁は、地域の方々の舌をお借りしてようやくたどり着いた「山口で愛される出汁」です。
今でもパートに来てくれる地域の奥さんたちに毎日味をチェックしてもらっています。
そばづくりと並行して、空き家バンクで自宅兼店舗にできる古民家を探し、私と大工さんとで改装しました。オープン当日、思った以上のお客さんが足を運んでくださり、とても嬉しかったのを覚えています。
無事オープンできたのは、地域のいろんな方々の協力のおかげです。
現在の状況と移住後の感想を教えてください。
飯笹:市内外のあちこちからお客さんにお越しいただいています。多いときは平日でも昼前に完売してしまうので心苦しい時もありますが、質を大切にしているので、大量生産するつもりはありません。
そば打ちに始まり、翌日の仕込みに終わる日々で思った以上に忙しく、憧れだったのんびりとした暮らしとは違っていますが、毎日が充実しています。
子どももすっかり地域に馴染み、まだ幼稚園ですがずっと徳地に住み続けるそうで、「勝手に家を売ったらダメ!」とよく言われています。山口弁もすっかりマスターしていますよ。
山口市徳地は、新幹線の駅も空港も高速道路のインターも近いですし、買い物するところも郵便局も病院もそろっています。移住前はもっとすごい田舎を想像していたので、拍子抜けしたような、ありがたかったような、少しだけ複雑な気持ちもありましたが、実際に住み始めると居心地がよく、今では大好きな場所になっています。
山口の魅力は何だと思いますか?
飯笹:一番は「人の良さ」だと思います。移住した当初からみなさん私たち家族のことを知っていて、いろいろとお世話してくださいました。
極端に言えば、「こちらは知らないけれど、向こうは知っている」という状態です。人と人との距離感も近く、みなさん親切に声をかけてくださいます。
この距離感が苦手という方もいらっしゃるとは思いますが、私にはとてもよかったです。田んぼをやると言えば農業のアドバイスをくれる方が、家をリノベーションすると言えば職人さんや水道の管理をされる方が現れてサポートしてくれるんです。
自然と助け合える素敵な地域だと思います。
ほかは豊かな自然とおいしい食べ物ですね。特に米と魚は本当においしいです。
ある程度の野菜は自分たちで作れますから、安心安全な食生活を送っています。
また、周りは自然だらけなので息子が遊ぶ場所もいっぱいあり、都会では難しい山遊びや川遊びがすぐにできるのもいい点です。
徳地地区で言えば、交通の便の良さと、生活に必要なものがひと通りそろう暮らしやすさです。特別な買い物も山口市中心部に行けば問題ないですし、広島にも福岡にも行ける距離なのもいいと思います。
それと、待機児童がいないのですぐに保育園に入れるのも大きな魅力です。
山口に住んで戸惑ったことはありましたか?
飯笹:プロパンガスや灯油、トイレの汲み取り代など大阪よりも生活費がかかり、物価も予想より高かったことです。都会は店が多いから価格競争が起こり、物価は安くなるんですよね。
また、前年度の所得が反映されるので、移住1年目の税金を支払うのが大変でした。会社勤めから正社員ではない地域おこし協力隊に転身しましたからどうしても所得は下がり、これが結構負担になりました。
もっとしっかり計画を立てておくべきだったと反省しています。
ひと通りそろってはいますが、大きなケガをしたり、子どもが病気をした場合にすぐに駆けつけられる設備の充実した病院はありません。山口市の中心部や防府市まで出ないといけないし、薬屋さんも日曜日は閉まっています。
今は夫婦ともども健康に暮らしていますが、老後のことを考えた準備が必要だと思っています。
移住を考えている人・移住してきた人にアドバイスをお願いします。
飯笹:移住、創業、田舎暮らしを成功させるには、いかにネットワークを築くかが重要です。私は地域おこし協力隊として移住したので、最初からみなさんに知ってもらえ、とてもラッキーでした。
もちろん移住後も、起業塾や青年部のソフトボールチームに参加したりと、交流の輪を広げていきました。
また、妻が地域の方々や農家さんの出入りが多い「南大門」というお店で働いたことや、息子が保育園に通ったことで人脈はさらに広がりました。もし単身移住だったら、ここまでのネットワークは築けず、諦めて帰っていたかもしれません。
家族がいて本当に良かったです。
それと、地域おこし協力隊として移住される方は、初年度の税金への配慮が必要です。ちなみに、正社員ではないので住宅ローンを組んだり、創業資金を借りるのはとても大変です。
ただ、山口市、特に徳地地区は創業するにはぴったりの地域だと思います。山口県は車社会なので郊外でもドライブがてらお客さんは来てくださいます。中心部分で店舗、駐車場を借りると経費の面で苦労すると思います。
私の目標は、徳地のコンテンツの一つとなり、ほかの頑張っているお店と連携して、一人でも多くの人に徳地に来てもらうことです。地域を盛り上げることで、私のような移住者をもっともっと増やしていきたいです。
もし、田舎への移住、創業をお考えであれば、自信を持って徳地をおすすめします。一緒にこの地域を発展させましょう!
出典: 先輩移住者の声 飯笹 雅博 さん