移住者プロフィール
徳万 隆良さん ・絢香さん
出身地:神奈川県横浜市、前住所:神奈川県横浜市、現住所:山口県山口市、職業:農家・「Yorozu Faem」運営
目次
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山口へ移住した経緯と、移住前について教えてください。
徳万隆良さん(以下、隆良):夫婦ともに神奈川県横浜市出身です。農業が目的でしたが、移住してすぐに農業を始めたのではなくて、約5年間市内の木工会社に勤めました。
その後、農業大学校に行ってから、南部の農業法人に就職して農業に関する様々なことを勉強しました。新しいことをすることが好きなので、農家さんが直接野菜を持ち込んで販売するお店の立ち上げを任されたり、野菜以外の商品を扱う交渉をしたり、面白いことを結構やりました。
その間、奥さんは市の臨時職員や農業法人で仕事をしていました。
2016年7月に念願の農家として独立、今のお店をオープンしたのは2017年7月29日です。お店に出すサラダやカレーに使う野菜は、すべて自分たちの畑で育てた野菜たち。採れたてのおいしい野菜をたくさん食べていただいています。
私は横浜の会社に勤めていました。休みは比較的取りやすかったので、カポエイラを勉強しに毎年ニューヨークに行っていました。
カポエイラは格闘技とダンスが組み合わさったブラジルの伝統的なスポーツで、日本よりも先にアメリカで当時流行っていたんです。その時に、カポエイラの世界ではレジェンドと呼ばれるブラジル人の師匠に出会って、ブラジルに来るように言われまして(笑)、25歳の時に今度は長期休暇を取ってブラジルに6ヶ月間行きました。
日本に帰って、前の会社に復職したんですけど、ブラジルでかなり濃い経験…人間という生き物の本質というか、生きることに必死な人たちが世界にはたくさんいるんだという事実を目の当たりにし、その頃から『人間らしい生活』ってなんだろうと思うようになりました。
徳万絢香さん(以下、絢香):私は東京の宝飾会社に勤めてOLをしていました。会社の事務所があった御徒町には宝飾会社が沢山あって、当時海外の強盗グループが日本に来ているというウワサの中、本当に強盗グループが事務所に来たことが一度あって、怖い思いをしたことを覚えています。
刑事ドラマで見るような、ガラス越しに取調室にいる犯人を見て、「この人に間違いありません!」みたいなことをやったんですよ。
ストリートダンスが好きで、当時は横浜駅東口の広場でグループで踊ったり、練習したりしていて、そこで一緒にダンスをやっていた友達からカポエイラに誘われて、行ってみたダンススタジオで旦那さんと知り合いました。
なぜ山口でこの仕事を始めたのですか?
隆良:今住んでいる山口市宮野におじいちゃんおばあちゃんの家があって、そこに小学生の頃は毎年夏休みと冬休みに来ていました。
当時の小郡駅、今の新山口駅に着いた時に感じた空気の匂いは今でも覚えています。木の匂いというか、澄んだ自然の匂いです。おじいちゃんの代までは農家をしていたので、農業は身近でした。
ブラジルから帰って会社員に戻り、安定した生活ではあったけれども、ブラジルでの暮らしの中で触れた『人間らしい生活』と、自分のその時の生活とは、何かが違う、と感じるようになって、自分にとってそういう生活はどうしたら実現できるのかを考えていました。農業に興味を持ったきっかけは、そういう経験があったからですね。わりと自然に農業という選択肢がありました。
現在の状況と移住後の感想を教えてください。
隆良:2017年の7月にお店をオープンしましたが、ちょっと奥まった場所だし、最初はどのくらいのお客さまが来てくれるか分かりませんでした。でも始めてみると、たくさんの方が来てくださって売り切れてしまうことも多いくらい。
マルシェなどのイベントに積極的に参加して、自分たちを知ってもらうようにしてきたのと、来てくださるお客さまを大切にしてきたからかな、と思っています。
あとは、2人共ものづくりをするアーティストでもあるので、お店の内装やロゴ、マルシェに出店するときの見せ方にも気を使っているところが、お客さまにも共感していただいているのかもしれません。
都会にいる時との違いは、時間の流れや人との距離感です。農家とお店の両方で、今は毎日ものすごく忙しいけれども、自分にとってのゆとりがある。
都会で暮らしていた時は、『人』と『物』と『時間』に支配されて生きていたのが、山口に来て時間の使い方が変わりました。通勤の満員電車で毎日大勢の人にもみくちゃにされるのが当たり前で、仕方ないと思っていましたが、こちらでは自分の空間を保つことが出来る。
都会は通勤だけでなく、どこへ行くにも電車や地下鉄はいつも混雑しているし、町や駅にも人がたくさん。仕事に、移動に、買い物に、多くの時間とエネルギーを費やしていたけれど、今は家族を一番にできています。
時間の価値観が違う生活になったと思います。家と畑は同じ敷地にあるので、自分たちが仕事をしているところを子どもたちが家の中から見ていることもありますし、近くにいられる安心感は大きいです。
地方への移住にあたり不安だったことは?実際はいかがでしたか?
隆良:横浜から山口へと西へ移動する途中、少しの間途中の大阪で生活した期間があります。そこから山口に来て、子供の時に小郡駅で感じた空気の匂いと同じ匂いを嗅いで、安心というかほっとした感じがありました。
絢香:おじいちゃんの兄弟が下関にいるので、結婚する前にもお正月などで山口には来たことがありました。なんとなくいいところだな、という印象はあったし、もともと自然が好きなので、引っ越して来ることに抵抗はなかったです。
山口の魅力を教えてください。
隆良:山口には国の重要文化財やパワースポットがたくさんあります。市内だと瑠璃光寺の五重塔や山口大神宮、県内だと秋吉台や万倉の大岩郷などなど。
他にも雪舟庭も綺麗ですし、近所にある竜王社もすごいパワーを感じます。竜王社には大きなムクノキが何本もあって、山口市の指定天然記念物にもなっているんですが、家のすぐ近くにそういうところがあります。
山口に住んで戸惑ったことはありましたか?
隆良:山口線のドアが手動なこと(笑)。開けるときだけじゃなくて、閉めるのも手動なので、冬は閉め忘れるとほかのお客さんがダーッと走って閉めに来る。寒いのに申し訳ないことをしました。
今後の展望を教えてください。
隆良:地域に密着して、もっと根を張って幅広く活動していきたいと思います。これまで以上に、もっと野菜と向き合って、自分たちが知っている野菜の魅力を、より多くの人にも知ってもらいたいですし、自分たちももっとパワーアップしていきたいと思っています。
ひょうたんを使ったアーティストでもあるので、そちらの方でのワークショップや、ドライフラワーを作るワークショップなんかもやっていく予定です。今までも山口市内をはじめ、県内の様々なイベントに声を掛けていただいて参加してきましたが、今後も引き続き面白いことをやっていって、山口を盛り上げたいです。
移住を考えている人・移住してきた人にアドバイスをお願いします。
隆良:新しい土地で仕事も人間関係も変わるのだから、とりあえず来てっていうのはキビシイものがあります。自分のやりたいことが明確に見えていないと。自分でしっかりイメージすることと、あとは『やる気』ですね。